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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3252号2月20日付
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税金 徴税攻勢
 

払いきれない税金・国保料・社会保険料 猶予制度で経営守ろう

仲間と一緒に活用を「Q&A解説」
 「消費税を一度で納められない」「督促状が届いた」「売掛金を差し押さえられた」など、税金や国民健康保険料(税)、社会保険料の納付に関する相談が相次いでいます。各地の民主商工会(民商)では仲間と一緒に税務署などと交渉して「納税の猶予」や「換価の猶予」を実現しています。猶予制度の内容や分納相談をする時の注意点、差し押さえを受けたときの対策などをQ&Aで解説します。

Q:売り上げが減って税金や社会保険料が一度に納められない
A:新設された申請型「換価の猶予」の積極活用を

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 一時的に税金が納められなくなったとき、「納税の猶予」(地方税は「徴収猶予」)や「換価の猶予」を活用することができます(表1)。国民健康保険料(税)や社会保険料にも適用されます。
 「納税の猶予」は(1)災害を受けた(2)生計を一にする親族が病気になった(3)事業を廃止または休止した(4)著しい事業の損失を受けた―などの理由よって税金を納められなくなった場合、本人の申請によって1年間(最長2年)、納税を猶予するものです。その期間中は新たな督促や滞納処分をすることができず、申請によって差し押さえが解除されることもあります。原則として担保が必要とされますが、猶予額が100万円以下などは必要ありません。
 「換価の猶予」は、納税の意思がある納税者が(1)財産を換価(売却)することで事業継続や生活維持が困難になる恐れがある(2)換価するよりも猶予する方が徴収上有利であると認められたとき―のいずれかに該当する場合、1年間(最長2年)、財産の換価を猶予できる分納制度です。
 税務署長などの職権による職権型「換価の猶予」に加えて、納税者が申請できる申請型「換価の猶予」が創設されました(2015年4月以降の納期限から適用)。
 申請型「換価の猶予」(図1、2)は納期限から6カ月以内の申請が必要で、6カ月を超える滞納がある場合は適用されません。その時は職権型「換価の猶予」の適用を求めましょう。
 「換価の猶予」が認められると、その期間に差し押さえた財産の換価ができなくなり、差し押さえによって事業継続や生活維持を困難にする場合は差し押さえを猶予、解除することができます。
 「納税の猶予」や「換価の猶予」が適用されれば、延滞税が免除されるか、1.7%(17年1月から)に減額されます。単なる「分納」では延滞税は9.0%(17年の納期限から2カ月以上)ですので、本税に加えて延滞税の負担が重くなってしまいます。

    【参考ページ】換価の猶予 申請書記入のポイント

Q:「催告書」や「差押予告書」が届いた
A:放置せず、納税の誠意を示し、分納相談を
 納税が滞ると「催告書」や「差押予告書」などの文書が送られてきます。文書をそのまま放置しておくと、売掛金などを差し押さえされかねません。文書には必ず目を通して民商の仲間と一緒に必要な対策を立てることです。
 大事なことは「納税の誠意」を示すことです。「納税の猶予」や「換価の猶予」が適用されるのは納税する意思があることが大前提になります。税金が納期限内に納められない場合は、納付計画を立て民商の仲間と一緒に税務署や自治体に分納相談をしましょう。
 税務署などとの分納相談では、「納税の誠意」があることをしっかり伝えた上で(1)なぜ、税金が納められなくなったのかの理由を説明できるようにする(2)毎月いくら納められるのか、分納計画を示す(3)その裏付けとなる収支状況表などを示して分納額が「精いっぱいの金額」であることを訴え、「納税の猶予」や「換価の猶予」の適用を求める―ことが大切です。
 窓口では「分納額が少ない」「増やさなければ滞納額が減らない」など徴収を強化しようとします。しかし、国税庁は「納税の猶予等の取扱要領」で「納税者の視点に立って、その申出の内容を十分に聴取し、納税の誠実な意思を有していると認められる場合などについては、換価の猶予等の活用を図るよう配意する」(国税庁長官通達・2015年3月)と明記していますので、通達に添った対応を求めましょう。

Q:預金口座が差し押さえられた
A:児童手当や年金などは差し押さえ禁止・制限が

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 国税徴収法(75条)では、最低生活や生活の維持に必要な13項目について差し押さえることができない差し押さえ禁止財産としています。また、給与や年金、退職金(同76条)は一定額を超えて差し押さえはできないと差し押さえを制限しています。
 また、生活保護法や児童手当法などの特別法によって差し押さえが禁止されている財産(表2)もあります。滞納額を超える差し押さえや無益な差し押さえも禁止しています(同48条)ので、差し押さえがそれらに該当しないかどうか確認することが大切です。
 差し押さえ禁止財産であっても、銀行に振り込まれた直後に差し押さえられるという事例が起きています。
 鳥取県では児童手当が振り込まれた直後に民商会員の預金が差し押さえられました。県は「児童手当が差押禁止財産であっても口座に入金されれば差し押さえは可能」と主張しましたが、裁判所は「預金に入金された後も児童手当の属性は失っていない」として差し押さえ処分は違法と断罪し、県に児童手当の返還を求めました(2013年11月27日判決確定)。各地の民商ではこの判決を示して不当な差し押さえをやめさせています。

Q:差し押さえで従業員に給与を払えない
A:国会答弁生かし民法上の「先取特権」主張を
 給与債権は民法(303条※)上、先取特権として位置付けられていますが、法的な保護は与えられていません。しかし、給与を含む売掛金の差し押さえは十分な配慮がされるべきです。国税庁は財産を差し押さえる選択にあたって「第三者の権利を害することが少ない財産であること」などを定めています(国税徴収法基本通達47条17)。「この第三者は民法上の先取特権を有する給与債権が含まれるべきで従業員の死活にかかわる差し押さえは慎重に行うべきです」(角谷啓一税理士)。
 また、国会では衆議院財務金融委員会(09年2月24日)で佐々木憲昭議員(共産)が「税金は賃金を払った上で国が徴収するのが筋ではないか」と追及。与謝野馨財務相(当時)は「私が弁護士であれば労働債権は租税債権より先取特権があると主張する」「法の運用とは規範通りに適用するほかに、社会的妥当性が法概念として必要」と答弁し、労働債権の保護を事実上、認めました。
 あきらめずに差し押さえの解除を求めましょう。
 ※民法303条「先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」

全国商工新聞(2017年2月20日付)
 

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