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これで解決!税金が払えなくなったときの対処法
納税者の権利を守る制度として ●納税猶予 ●徴収猶予 ●換価猶予 ●滞納処分停止 ●延滞税免除など 早めに手続きするほど有利です
「売り上げも所得も下がっているのに消費税の納付が大変!」‐今年の確定申告で多くの中小業者から悲鳴が上がり、全国の民主商工会(民商)にも税金の納付や滞納の相談が多く寄せられています。税務署や自治体が滞納者への取り立てを強めるなか、滞納を放置せず、税法で認められている「納税緩和措置」を納税者の権利として活用し、営業と生活を守りましょう。
▼差押物件は預金、保険、自宅、車… 一家心中した例も
今、税務署は消費税滞納と小額滞納や累積・長期滞納をターゲットに滞納処分を強化。自治体も、市民税や固定資産税の滞納者に「まず差し押さえる」方針で、預金口座や生命保険、自宅の不動産の差し押さえを乱発しています。
営業用車両をタイヤロック(差し押さえ)された中小業者が一家心中するなどの悲惨な事件が全国各地で起きています。
背景には、売上1000万円前後の中小業者の約6割が消費税を転嫁できず(02年経済産業省調べ)、最低生活費にまで課税するなど苛酷な日本の税制度があります。滞納者の圧倒的多数は「食えば払えず、払えば食えず」なのが実態です。
憲法25条は国民の「生存権」を認めており、税金が「生存権」を脅かすことがあってはなりません。「納税緩和措置」を納税者の権利として活用し、中小業者の営業と生活を守りましょう。
▼国会答弁で納税者の実情に応じた対応を約束
民商・全商連は、税務署や自治体の一方的な滞納処分に対して、納税者の権利として「納税緩和措置」の活用を呼びかけ、「解決事例」に見られるように多くの成果をかちとってきました。
また、国税庁交渉や国会質問のなかで、差し押さえをする前に「納税者と十分相談し分割納付など実情に応じた対応をする」との回答を繰り返し得てきました。
民商の仲間と本紙を使って権利を学び、励まし合って税務署や自治体の強引な滞納処分をはね返しましょう。
▼督促状が届いたら「滞納」−10日過ぎたら財産差押えに
納税者が税金を納期限までに納税しない場合、税務署や自治体から約1カ月以内に「督促状」が届き、この時点で「滞納」になります(フローチャート参照)。放置しておくと「差押予告書」などの書類が届きます。法律では「督促状」を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、滞納者の財産を差し押さえ、その差押財産を換価できることになっています。
▼納税緩和措置の活用法
こうした処分に対して、一定の事実が発生した場合に分納を許可し、納税の誠意が認められる納税者に強制処分を緩和して分割を承認する「納税の緩和措置」があります。
(1)「納税の猶予」(国税通則法46条2項、地方税は徴収猶予)
不渡り・貸し倒れ・災害・病気・事業の著しい損失(利益の減少で納付困難になった場合)など、猶予要件に該当する事実を「納税の猶予申請書」(全商連ホームページ参照)に詳しく書いて申請します。
猶予事実が認められた場合、「現在納付能力調査」が行われ、納付困難な部分について猶予が認められます。
許可されると、督促や滞納処分を受けることがなく、猶予期間中の延滞税(延滞金)年14・6%がゼロないし、4・5%に免除されます。原則1年以内の分納(最長2年)が条件ですが、以下に述べる「換価の猶予」に移行することで最長4年の分納も可能です。
また、50万円以上の猶予総額の場合、担保が必要とされていますが、「取扱要領」は「適当な担保がない場合」等は提供しなくてよいとしています。
(2)「換価の猶予」(国税徴収法151、地方税も換価の猶予)
「納税の猶予」と並んで活用できる分納制度です。「換価の猶予」の対象は「納税の猶予」に比べ広範です。税務職員の裁量で適用できるとされており、「納税の誠意」があるかどうかが最も大事なポイントになります。
また、所有財産の換価が「事業や生活の継続・維持」を困難にするかどうか、換価処分より猶予する方が徴収上の「有利性」があるのかどうかがチェックされます。
「換価の猶予にしてください」と税務署(自治体)に請願書などで意思表示します。
認められれば、延滞税(延滞金)は4・5%となり、1年の分納(最長2年)となり、担保要件は納税の猶予と同じです。
(3)「滞納処分の停止」(国税徴収法153条)
「倒産などで休廃業に陥った」「倒産に至らないまでも細々経営で完納までに何十年もかかる」などの場合に認められます。この間、事業を継続しつつ、過去分の税金の滞納処分の停止が認められた画期的な「事例」も生まれています。
処分の停止時から3年後に、あるいは一定の要件にあてはまれば即時に納税義務を消滅させることができます。請願書などで詳しく事情を書き、税務署(自治体)に申し入れます。
(4)地方税にも「国税徴収法」「国税通則法」が適用
地方税法が「国税徴収法による」とされていることから、一部の地方自治体で「地方税は国税通則法の定めや、国税の通達にしばられない」としているところがあります。
しかし、徴収手続きなどに関わる地方税法総則の規定は国税徴収法と国税通則法の両方にまたがっており、国税で認められた納税者の権利規定は地方税でも当然認られるべきものです。
(5)交渉のポイント‐納税緩和措置の「通達」趣旨を税務署に守らせよう
「納税の猶予」「換価の猶予」の取り扱いを定めた「納税の猶予等の取扱要領」(=通達 全商連ホームページ参照)は、「特に納税者から即時に納税することが困難である旨の申し出等があった場合には、その実情を十分調査し、納税者に有利な方向で納税の猶予等の活用を図るよう配意する」(総則)、「納付困難を理由として分納の申し出等があった場合には、そのまま放置することなく、換価の猶予に該当するかどうかを検討するよう配意する」(第3章)と、課税当局に義務を課しています。
納税の猶予を積極活用することを述べた国会答弁と合わせ、税務署に申し入れましょう。
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