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  トップページ > 民商・全商連の60年 > 全国商工新聞 第2955号 12月13日付

民商・全商連の60年
 

第3回・働き分を認めよ!「分離申告」闘争


 中小業者に重税となる税制を改め働き分を経費として認めよ―。民商・全商連は1961(昭和36)年春、自家労賃()を認めさせる運動として事業所得と店主の労賃を給与所得として分離する「分離申告」闘争に取り組みました。そのたたかいより1年早く、実際に分離申告をした愛知民主商工会東北支部(現在の名古屋東部民商と名北民商)は、130人(会員数の3割)が集団で、事業主と家族専従者の分離申告を決行。一業者の"つぶやき"が出発点でした。

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分離申告闘争について語る新谷さん

 「畳の裏返しと洋服の裏返しのどこが違うのか…」―。
 分離申告を目前に控えた60年2月22日、愛知民商東北支部は業種別研究会を開催。全商連第14回総会第1回常任理事会(同年1月)の「自家労賃要求を庁、局、各署に反映させる」という確定申告方針について話し合いました。鉄工、木工、洋服仕立て、自転車などの業種の会員19人が参加。分離申告は特定の業種別に行うべきか、全業種の店主分だけ分離するのか、家族専従者だけやるのかなど、その方法について検討しました。
 当時、事務局長だった新谷俊夫さん=損保代理店・一宮民商会員=は、証言します。「会議に参加した洋服仕立て業者が、畳の裏返しで自家労賃が認められて、洋服の裏返しが認められないのはおかしいとつぶやいた。どちらも新しい材料を使わず手間賃だけ。とても分かりやすい理屈だと参加者全員が納得した」
 国税庁は「大工・左官・とび等(畳屋も含む)に対する所得税の扱いについて」を通達(55年)。それらの業種に限り、一定の率で「自家労賃」を認めていました。
 このつぶやきから、この運動の本質が明らかになったのです。25日の東税務署との団体交渉には150人が参加し、「畳の裏返しと洋服の裏返しのどこが違うのか」と追及。税務署は回答できませんでした。

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自家労賃や分離申告について解説する当時の全商連発行パンフレット

 確定申告期限までの短期間に、専従者家族研究会、白色総会、青色総会を開催。「税務署の出方が心配」といった意見もありましたが、「われわれの要求は正当。全員が分離申告することで腹を決めよう」と方針が決まり、民商の申告相談で意義と方法について議論や学習を深めました。
 3月に130人(会員数の3割)が分離申告しましたが、24日には税務署が修正申告を要請。「あなた方の主張は十分わかる。署としても、今後自家労賃分離課税について民商とも協力し、誠意をもって研究してゆくから、今年は全員修正申告してほしい」というものでした。
 民商はすぐに150人の参加で支部臨時総会を開催し、税務署長の約束を大きな成果と評価して、全員一致で修正申告に応じました。「一人ひとりの要求を大事に考え、みんなが団結してたたかったからできた。これが民主主義の成果なんだと実感した」と新谷さんは振り返ります。
 この年は、大阪、広島、東京の一部の民商で実際に分離申告が行われました。
 全商連は61年の確定申告で、全国いっせい分離申告を実施することを決定。業界団体や農民連など他団体も実施決定するなど、全国民的に分離申告への関心が集まる中、国税庁は2月17日、「分離申告は違法であるから中止を」と全商連に通告。全国で国税局・税務署交渉が繰り広げられ、国会でも問題になりました。
 ギリギリの攻防が続いた3月14日、全商連は「要求は正しいが、貫くには一定の力が必要。今のわれわれの力では難しい」と判断。15日に分離申告中止の声明を発表しました。
 このたたかいは、「進むも退くも全国足並みをそろえて」という教訓とともに、白色専従者控除の創設(62年)、青色専従者控除の拡大(68年)、青色申告の事業主報酬制度の創設と数々の成果を挙げることもできました。
 新谷さんは言います。「分離申告闘争の最大の成果は、民商が大きくなったこと。要求は正しくても力がなければ実現できない。自家労賃を認めさせるために、"強大な民商が必要だ"と拡大がみんなの要求になった」
 全商連は、箱根総会(61年10月)で会員倍加に挑戦することを決定。20カ月で、3万人の会員を6万人にすることができたのです。


※自家労賃 …現行の税制では、個人事業主と家族専従者の働き分(自家労賃)を必要経費として認めていません。しかし、家族専従者が他店で働くか、青色申告にすれば、働き分を給料として経費にすることができるなど矛盾に満ちた税制です。ドイツ、フランス、アメリカなど主要国では、自家労賃を必要経費として認め、事業主・家族専従者の人格・人権、労働を正当に評価しています。



歴史に学び未来へ=民商・全商連の60年

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