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  トップページ > 業種のページ > IT・サービス > 全国商工新聞 第2861号 1月5日付
 
環境にやさしい商売に挑戦
 

環境にやさしい商売に挑戦

地域に根ざし頑張る中小業者

 地球環境を守る取り組みは待ったなしの課題。持続可能な社会の実現には、地域に根ざしたものづくりやまちづくりに創意工夫できる中小商工業者の役割発揮が求められています。環境にやさしい製品開発や家づくりに挑戦する会員の取り組みを紹介します。




若者3人が夢を実現

エコいっぱいの店オープン

 新年を迎え、純白の雪化粧を身にまとった中央アルプスと南アルプス。その山々に抱かれた長野県伊那市で、3人の業者青年が「環境」「健康」「コミュニティー」をめざした複合施設カフェを今年1月にオープンします。「こんなお店を待っていた」と地域からも大きな期待が寄せられています。

長野・上伊那民商会員 馬場毅さん、有坂ちひろさん、武藤恭子さん

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「カフェ&カイロ有報堂」を立ち上げた3人の青年と支援者の皆さん
 「カフェ&カイロ有報堂」をオープンしたのは馬場毅さん=カイロプラクティック、有坂ちひろさん=カフェ・図書管理、武藤恭子さん=カフェ=の3人。カフェ、カイロプラクティック施術院、図書室の複合施設は設計から建築まで文字通り3人の手作りです。
 「工賃分は節約できた」と話す有坂さん。建材は主に県内産のスギやマツを使い、壁は珪藻土、塗料は柿渋、外壁には柑橘系オイルを塗るなど化学物質を徹底的に排除しました。
 エコをめざした施設の目玉はペチカ。ペチカ作りを専門にしている地元の左官屋さんに頼んで作ってもらいました。建物と一体になっているペチカは薪や廃材で火をおこし、レンガの蓄熱が放射して熱効率が良いのが特徴です。
 上伊那民主商工会(民商)青年部の部長も務める馬場さんは「屋根裏には民商の支部役員会ができる会議室もあります」と胸を張ります。入口にはレンガ張りのスロープがあり、バリアフリーも実現しました。

環境に優しい店
 カフェでは地元産の野菜や食材を優先して使い、「地産地消」に貢献。武藤さんは「民商青年部員が作っているお米を買います。自分たちの畑もあるんですよ」と笑顔で話します。
 図書室には3000冊の本を並べる予定で、そのほとんどが「1日中、本を読んで生活したい」と話す有坂さんの所有物です。
 「カフェ&カイロ有報堂」は環境に優しい究極の店になりました。

人間らしく働く
 「夢を実現したかった」と声をそろえる3人。
 建築職人として地元の工務店に勤めていた馬場さんは「景気が悪化するとともに、納得できない仕事が増えた」と声を落とします。単価を抑えるために、質の悪い建材を使ったり、質を落とした作業工程を強要され、ものづくり職人としての誇りが感じられなくなりました。
 有坂さんと武藤さんは、地元の同じ病院で医療事務として働いていました。激務が続き、残業だけで月に100時間を超えました。「こんな生活をあと30年も続けることは不可能」と有坂さん。「体力が追いつかない。過労死するかもしれない」と危機感をもった武藤さん。
 そんな3人が出会ったのは地元の青年サークル。冗談話から夢が膨らみ、いつしか実現に向けて具体的な計画話ができるところまできました。
 「このままではいけない」「人間らしい生活がしたい」「食べるために働こう」と3人の気持ちは高ぶり、各々退職。一昨年の12月にそろって民商に入会し、開業の準備を進めました。

バックアップが
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全面的にバックアップした上伊那民商。
 工事を始めたのは昨年の5月。民商役員で建築デザイン事務所の前澤啓子さんが3人を全面的にバックアップし、設計や環境に優しい施設づくりのアイデアやアドバイスを提供しました。「3人から相談を受けた時、資金がなくても、民商にはネットワークがあるから大丈夫と背中を押しました」と、満面の笑みです。
 また、民商会員で若宮建築の林博文さんが工事作業を親切丁寧に指導しました。
 作業の手伝いをしてくれたボランティアは延べ20人以上に上り、「ここの壁のボードは私が張りました」など完成した有報堂を見て、わが事のように喜びます。
 資材高騰の影響を乗り越えようと、資金集めのために宣伝グッズを販売。民商会員をはじめ地域の多くの人が宣伝をしてくれ、オープン前の見学者は200人を超えました。
 「何か変わった施設がオープンするらしい」と地域でうわさが広まり、「いつオープンするの」と連日のように問い合わせが相次ぎました。
 工事の進行状況はブログ(ネット上の日記)で公開。「はじめは夏オープン予定でしたが、夏から秋へ。秋から冬へとどんどん遅くなりました」と照れる有坂さん。
 オープンを心待ちにしていた民商会長の滝沢孝夫さん=印刷=は「開業するには決していい時ではないので、少し心配。でも、夢を追うのは大事なこと。民商としても応援したい」と話します。

3人の夢を乗せ
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 「体のゆがみを矯正するだけでなく、体質改善のための体操、栄養指導しながら、地域の健康増進の役割を担いたい」と馬場さん。「安全で健康によい料理とおいしいコーヒーで居心地のよさを提供したい」と武藤さん。「図書室に本を持ち込んで読書するもよし、おしゃべりをするのもよし。地域のつながりを深められるコミュニティーの場所にしたい」と有坂さん。
 三者三様の夢を乗せて、「カフェ&カイロ有報堂」がスタートします。


   
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