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  トップページ > 地域のページ > まちづくり > 全国商工新聞 第3054号 1月14日付
 
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再生可能エネルギーで地域を豊かに=全中連・欧州視察1

 全国商工団体連合会(全商連)も加盟する全国中小業者団体連絡会(全中連)は、昨年10月27日から11月5日にかけて「自然エネルギーで仕事をおこす」をテーマに「創立40周年記念欧州視察」を行いました。国分稔全商連会長をはじめ全国から31人が参加。オーストリアとドイツの各地を訪問し、再生可能エネルギー(自然エネルギー)開発と活用を学びました。そこではフクシマ原発事故が重く受け止められ、脱原発への道が選択されていました。

必要電力を完全自給 ドイツ・フライアムト村

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フライアムト村で説明するシュルツさん

 陽光に恵まれたドイツの南部地域。なだらかにうねる広大な牧草地のなかに立つ農家の屋根すべてがソーラーパネルで青く輝いていました。
 ドイツでは電気の買い取り制度によって各家庭での発電と売電が常識的に行われています。また、牧草を資源にしたバイオマス発電への転換も盛んで、スイスに近いフライアムト村の典型的な発電農家を見学しました。
 ラインボルトさんは、以前は豚300頭、肉牛数十頭を育てていた酪農でしたが、BSE(牛海綿状脳症)問題の影響で肉の価格が暴落。11年前にバイオマス発電に挑戦しました。80ヘクタールの農地から牧草を年間5回収穫し、それをタンクで発酵させガスを抽出、エンジンで燃焼させタービンで発電。さらにそこで発生した熱を周辺14軒と小学校に供給することで収入を得ています。屋根にもソーラーパネルが並んでいました。
 フライアムト村は村ぐるみで自然エネルギー活用に取り組んでいます。背景には40年前から原発立地に反対してきた運動がありました。
 その運動のリーダーであるエアハルト・シュルツさんは、「ソーラーやバイオマスによる発電だけでなく各戸に太陽温水器も普及し、山の上には市民共同出資による5基の風力発電施設があり、必要な電気の140%をつくり、完全に自給できています」と説明。高さ138メートル、3600万キロワット級の最新の風車が山の上にそびえ立ち、今後さらに増設される予定です。この他四つの水力発電所もあり、シュルツさんは「この州は2030年までにすべての電力を再生エネルギーでまかなえる」と力強く説明しました。

注目を集めつ先進例 オーストラリア・ギュッシング市

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ギュッシング市にある木質バイオマスプラント

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ギュッシング近郊のシュトレームむらを訪れた視察団ら。屋根は太陽光温水設備

 オーストリア南部、ハンガリーとの国境近くにある人口約4000人のギュッシング市は、豊かな森林地帯から生まれる木材の端材による木質バイオマス発電が最先端の事業になっています。
 特徴は木質チップからガスをつくりエンジンをまわすプラント。そこで電気とともに発生する熱も温水として供給し、さらに水素を発生させ燃料電池としても活用することで95%の効率でエネルギーを利用しています。
 また、太陽光発電や太陽熱温水供給施設、400万平方メートルもの豊かな草地の牧草からバイオガスを発生させる設備などが市内に点在しています。こうした電力供給力を見込んで50社が工場進出し、新たに1100人の雇用が増えました。
 かつては産業もなく人口流出が続いた地域でしたが、冷戦終結後(1990年)、当時の市長が、新たな開発計画を策定する際、「ここには森があり太陽が輝いている。それなのにガス会社や石油会社からエネルギーを買っている。地域の資源をエネルギーに変えよう」と提案。20年かけて消費電力の3倍もの発電を自力で起こす自然エネルギー地帯に変貌しました。
 その結果、年間3500万ユーロ相当の域外への資金流出がなくなり、2500万ユーロが地域内に循環し地域を豊かにしています。自治体の税収は20年間で5倍になりました。この成功は「ギュッシングモデル」として注目され、世界中から視察団が訪れています。
 全中連視察団を案内してくれたベルンハルト・ドイチュさんは「貧しかった私たちにはこの道しかなかった。地域にこだわり、市民と共に歩み、自分たちで進めていくことが教訓」と述べていました。

6都市12施設を訪問 ウィーンからチューリヒまで

全中連欧州視察の日程

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 視察団は、ウィーンから始まって、スイスのチューリヒまで6都市12の施設などを訪問、バスの移動は2300キロメートルになりましたが、車内でもレクチャーや交流をしながら、再生可能エネルギーへの転換の道を学びました。
 視察団長の橋沢政實さん(全商連常任理事)は「私たちはたくさんのことを学んだ。かけがえのない日本の自然環境、文化と平和の大切さ、中小業者の確かな技術とものづくりを脱原発に役立て、発展させる使命を大いに認識した視察だった」と語っています。
 連載第2回はドイツの脱原発、バイエルン州の環境政策。第3回はスマートグリッド、再生可能エネルギーと中小業者の仕事おこし。

全国商工新聞(2013年1月14日付)
 
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