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あなどれない!消費税増税附則法案のねらい
予算関連法案「付則」明記は重大問題
湖東京至税理士に聞く
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「毎日」「日経」の世論調査(1月26日付)で、政府・与党の消費税増税方針に「反対」が67%に。 |
麻生政権は09年度予算に関連する税制「改正」法案の「付則」に消費税増税を盛り込みました。湖東京至さん(前関東学院大学法科大学院教授・税理士)に、この問題をどう見たらいいのか、改めて消費税の問題点を聞きました。
付則で2011年度消費税増税を明記
税制「改正」という国の予算案に、国会で十分議論もせず、国民が納得していない消費税増税を盛り込むというのは前代未聞、非常に姑息なやり方です。
予算をつくる前段階の自民党税調「大綱」に載せるなら分かります。しかし、予算関連法案の「付則」に明記したということは、消費税率を上げることを法律で決めたことになります。「来年2010年は税率引き上げはしないが、次の年度に税率をいくらにするかなど具体的な法案をつくる」ということです。ですから今の与党政権が続くかぎり税率引き上げは確定です。
「付則」なのだし、景気が回復することが前提だから「訓示規定」みたいなものと考えている人がいたら大間違いです。
これを防ぐには今度の衆院選挙で今の与党と増税論者に厳しい審判を下すしかありません。この「付則」を来年の予算案で削ればいいのです。それは十分可能だし、それだけ今年の総選挙には重みがあるということなのです。
増税強行路線に中小業者から不安が広がる
麻生政権が増税を強行するのは大企業と財界の要求によるものです。彼らはこれまで法人税を下げろと盛んに主張してきましたが、最近では社会保険料の企業負担もきついから、それも消費税でまかなえというのです。
消費税という税金は大企業にとっては完全に価格に転嫁できる「間接税」です。大企業は消費税導入以来1円も消費税を負担していません。彼らにとってこんなにいい税金はないのです。
そしてもっと問題なのは下請けへの逆転嫁です。つまり「消費税分をまけろ」と言って、下請けの単価をたたく。価格と下請けの両方に消費税を転嫁することができるので、まったく自分の懐が痛まない。加えてトヨタなど輸出大企業は、「輸出戻し税」までもらっている(表参照)。
消費税という税金は導入時は低い税率でも、その後どんどん上げていくという、悪い習性をもっています。政府や財界はヨーロッパのように高い税率(15〜25%)にするのだということをずっと主張してきたのです。
その考え方がまさに、麻生政権になってよりはっきりしました。本当ならすぐ税率を上げたいのですが、あまりにも景気が冷え込んでいるので、さすがに今はできない。
しかし、景気がよくなったら税率を上げるという点では一致している。それが怖いのです。景気の判断は誰がするのですか。政府と大企業が判断するのです。
仮に今より少し景気が上向きになったとしても、消費税の税率を上げたら内需がすぐ冷え込んで、また景気の落ち込みがくるのです。その結果、法人税と所得税の税収が下がり、また消費税の税率を上げなくてはいけないという悪循環になるのです。
一方、中小企業者にとっては、消費税は完全に転嫁できず、一種の「直接税」になっています。
中小事業者は消費税の納税に大変な苦労をしています。消費税はいわば赤字でもかかる「第二事業税」ですから、消費税預金ができない事業者は納税ができず滞納せざるを得ません。消費税の滞納額は国税の45%を占め、第1位です。
滞納があると銀行が金を貸してくれませんから、たちまち倒産に向かってまっしぐらという状況になる。中小事業者にとって消費税はまさに「殺人税」なのです。経営者もそこで働く従業員も路頭に迷わせます。
「社会保障のためなら仕方ない」という声が…
これは大きな間違いです。
なぜならまず第一に、消費税という税金の性質が社会保障財源にふさわしくないことです。消費税というのは何から何まで課税して、広くすべての消費者・国民に負担を求める税金ですから、これは憲法が保障する「応能負担原則」に反する税金なのです。
そもそも目的税という税金はある特定の目的のために税金を取るということです。例えば自動車取得税の目的は自動車が走ると道路が傷む、だから車を買った人に負担をしてもらい、道路の補修費に使う。つまり「受益」と「負担」の関係がはっきりしていなければなりません。
では消費税を目的税にした場合、「受益」と「負担」の関係はどうなるのでしょうか。社会保障の恩恵にあずかるために買い物をするのでしょうか。どう考えても無関係です。だからヨーロッパ諸国で、消費税を目的税化にしている国は1カ国も無いんです。
大企業は実質的に消費税を全く負担していません。社会保障財源に使うといいながら、実際には「大きな企業は負担しない」と言っていることと同じなんです。その上、「輸出戻し税」がありますから、社会保障のための財源を逆にもらうということになります。こんな虫のいい話はありません。
そして最も危険なのは、消費税を社会保障目的税にすることです。目的税にしてしまうと「社会保障を充実するため」として増税に道を開くことになります。
民主党も消費税の社会保障目的税化を主張しています(民主党税制抜本改革アクションプログラム)。
お金に色はありませんから、消費税の目的税化で浮いたお金を法人税率の引き下げや、高額所得者の減税、大企業の社会保険料負担の軽減、軍事予算や公共事業、財政赤字の解消など自由に使えるのです。消費税の目的税化にごまかされてはいけません。
消費税以外の財源はどんなのがあるの
消費税が景気を後退させる税金だということは与党も分かっているはずなのに、それに代わる財源を真剣に探す努力を全くしていません。
「不公平な税制をただす会」が毎年試算しているように、不公平税制を是正し、大企業や高額所得者の負担を消費税導入前に戻すだけでかなりの財源が出てきます。それでも足りない場合は、昔の物品税、個別消費税など、ぜいたく品に個別の消費税をかけるのも十分検討の余地があるのです。
ほかにも消費税に代わる財源はいくらでもあります。要は大企業に応分に負担をしてもらうことです。
消費税を実際に税務署に納めるのは事業者です。消費税のつらさ、大変さを一番よく知っているのは中小業者です。消費税率の引き上げを阻止し、廃止するために今度の総選挙で増税勢力に痛打を与えようではありませんか。
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