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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第2845号 9月8日付
 
解説・「納税猶予」の活用法  角谷啓一税理士
 

第7回 正当な分納申し出を認めさせるため反論材料を活用しよう!

 「納税の猶予等の取扱要領」が納税者側にとって活用すべき積極面が多くあることを中心に、納税の猶予、換価の猶予の該当要件や具体的な手続きなどについて6回に分けて解説してきました。
  しかし実務では、担当官とのやり取りの中で、こちらの主張が正しくても分納要求が認められないことがよくあります。この連載を終えるにあたり、このような場合の反論材料を提供します。大いに活用し、担当官などを説得しましよう。

■正当な分納申し出が認められない場合の反論材料

(1)佐々木憲昭議員の国会での追及による政府・当局の回答
  05年1月に熱海署で起きた自殺事件に関連した国会質問で、政府当局は次のように回答しています(本紙05年3月28日号に掲載)。
  谷垣財務大臣「国税が滞納になった場合には、滞納者個々の実情に即しながら、適切な処理を図っていく。滞納者から分割の申し入れがあった場合も十分相談し、滞納者の実情に即した対応をとる」、徳井国税庁徴収部長「(納税者に親切な態度で接し不便をかけないように努め、納税者の苦情や不満は積極的に解決する、などを記載した)税務運営方針は、税務行政を遂行する上での原則論。今後とも税務運営方針の趣旨に即して税務行政をすすめていく」。

(2)当局の事務方針
  国税当局は、毎年の事務指針の中で、徴収職員に対して「誠意が認められない場合には強制処分を、納付困難な事情があると認められる場合には、納税の緩和措置として分納を認める、というように個々の事案に即応した厳正・的確な滞納整理を行う」ことを指示しています。
  したがって、いきなり差し押さえ、捜索とか、資金繰りの事情も聞かないで「3カ月以内に完納しろ」「短期完納以外は分納を認めない」とか、まして分納中の差し押さえなどは論外で、当局の方針にも反します。

(3)「納税の猶予等の取扱要領」(通達)の積極面
  「納税の猶予等の取扱要領」の総則では「強制的な徴収手続き等を緩和することが妥当とされる場合がある。納税の猶予等の制度は、このような場合に納税者の実情に即応した措置を講ずることにより、納税者との信頼関係を醸成し、税務行政の適正・円滑な運営を図ることを目的とする」と、納税の猶予などの緩和措置を適用する積極的意義を述べています。
  その上で「特に納税者から即時に納付することが困難である旨の申し出等があった場合には、その実情を十分調査し、納税者に有利な方向で納税の猶予等の活用を図るよう配意する」としています。また、第3章「換価の猶予」の項では「納付困難を理由として分納の申し出等があった場合には、そのまま放置することなく、換価の猶予に該当するかどうかを検討するよう配意する」と述べています。
  この点について、北野弘久日大名誉教授は「徴収行政側に納税の猶予等の措置を積極的に承認すべき職務上の法的義務を負わせている」と主張していますが、「取扱要領」はそのことを裏付けています。

(4)地方税は「取扱要領」に拘束されないのか
  地方税の滞納処分は「国税徴収の例による」とされています。「取扱要領」は国税庁の通達だから、しかも、納税の猶予という、主として国税通則法に関係する通達だから、地方税職員は「取扱要領」に拘束されない、という議論があります。
  地方税法の総則には、滞納問題に関係する通則的な規定が設けられていますが、国税徴収法と国税通則法双方にまたがっており、その内容も国税の規定と基本的に同じです。「取扱要領」も通則法と徴収法の双方にまたがった通達で、「徴収法の部分だけが地方税職員を拘束する」と考えるのはナンセンスです。
  したがって「納税の猶予等の取扱要領」も、地方税滞納整理に「重大な影響を与える」文書と考えてよいのです。
(終わり)

   
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