確定申告のワンポイントアドバイス (5)事業経費について(上)
減価償却は原則「定額法」
今回と次回の2回にわたり、事業所得や不動産所得でいう「経費」について説明します。今回は「経費」とは何かと、「減価償却」について触れたいと思います。
まず、経費ですが、売上原価、販売費および一般管理費のことをいいます。簡単に言えば、収入を得るために必要な支出とすると分かりやすいと思います。ですから、自分の生活に必要な支払いは経費になりません。家事関連分と事業用との両者に関わりのある支出がある場合には、両者を区分しておく必要があります。
また、事業用として明確に区分し、経費として支出をしたとしても、いったん資産に計上して、時間の経過に応じて経費としていくものもあります。例えば機械や事業車両の購入、修繕費であっても価値を増加されるような支出がそれに当たります。前者を設備投資、後者を資本的支出と呼びます。
設備投資と資本的支出は両方とも、減価償却を通じて経費を計算します。減価償却とは「固定資産の耐用期間あるいは有効期間にわたり費用配分をする」ことをいいます。所得税ではこの償却費の必要経費算入は任意ではなく、必ず必要経費に算入することと定められています。
なお、減価償却方法は原則「定額法」と定められています。定額法とは、毎年同じ金額を減価償却費として経費に算入する方法で、例えば、取得価額100万円で耐用年数10年の減価償却資産を購入した場合は、1年目から9年目までの減価償却費は各年10万円となり、10年目は9万9999円となります(1円は資産が手元にある限りは備忘価格として残します)。また、取得した年は月割計算を行う必要がありますので、例えば7月に減価償却資産を取得したときの減価償却費は5万円となります。
減価償却計算は少額のものについて、いくつか別計算ができるものがあります。例えば、少額の減価償却資産(使用可能期間が1年未満あるいは取得価額が10万円以下の資産)があります。このような支出については、事業に供した年の経費としてよいとされています(表の(1)、(2))。取得価額が20万円未満の資産は、一括償却資産として、3年で均等に償却することができます(表の(3))。
青色申告者しか使えませんが、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、全額をその経費とすることができる制度があります(表の(4))。例えば、19万円の減価償却資産を取得した場合には、(3)、(4)、(5)を選択適用できます。
次に資本的支出についてですが、税務調査においても着眼点になる項目ですので、注意してください。
先ほど書きましたが、価値を増加させる支出や資産の使用可能期間を延長させる支出は「新たに資産を取得」したと考え、資産計上します。これ以外の通常の維持管理や原状回復のための支出は「修繕費」ということになります。
例えば、機械が古くなってオーバーホールをしたり、単純に部品を新しく取り換えたりしたときは修繕費として、支払った金額全てを支払った年の費用とします。一方で、オーバーホールに伴い機械の機能を強化したり、あるいは機能を追加したりした場合には、その部分について資本的支出となりますから、減価償却費の計算をすることになります。
具体的に修繕費か資本的支出か不明の場合には、60万円未満の支出、おおむね3年周期で行われている修理などについては、修繕費としてよいとされています。
次回は、減価償却関連以外の経費について解説します。
全国商工新聞(2018年1月22日付) |