自分でできる初めての確定申告 記帳・決算も民商が応援
あっという間に年の瀬を迎え、来春の確定申告がちらちらと気になり始めていませんか。全国に566組織ある民主商工会(民商)では、自営業者が集まり、「自主計算パンフレット」(別項)をテキストに、教え合いながら「自主記帳・自主計算」を進め、「納付すべき税額」を自分で確定。「確定申告も民商だから安心。民商に入って良かった」と喜ばれています。
消費税の計算法など 身に付く申告学習会
片山 国治さん=建築
「年末の学習会で消費税の計算法なども勉強したい」と話す片山さん
「自分で初めて確定申告をしてみて、国保(国民健康保険)や住民税の高さにびっくりした」
こう話すのは、滋賀県長浜市朝日町で「リノ工房」を営む、片山国治さん。昨年5月、14年間サラリーマンとして勤めた工務店を退職し、思い切って独立しました。屋号は、建物の増・改築や用途変更など資産価値を高める大規模な改造を意味する「リノベーション」からとっています。「より質の高い住まい作りのため、施主さんと顔を合わせ、一つひとつ要望を聞きながら共に作り上げたい」との思いが込められています。
民商には、サラリーマン時代の仕事で世話になった、信頼できる大工の会員から「独立するなら民商へ」と誘われ、「自営業のことは全く分からないし、申告などもあるから」と入会しました。
昨年末、全4回開かれた民商の申告学習会にフル参加。先輩や事務局員から「イチから全部教わって」、パソコン会計に入力し、初めての申告を無事終えました。「サラリーマンのときは、所得税も住民税も全部天引き。税金の負担はほとんど意識してこなかった。しかも、健康保険や年金は半額負担。自営業だと、全額自己負担だから、こんなに払うの!? と嫌でも意識する」と片山さん。
仕事は順調。住宅だけでなく、車庫の新築など何でも引き受けています。来年の確定申告に向け、レシートや領収書をノートにこまめに貼り付け、お正月休み、一気に入力する予定です。
「来年5月で創業2周年。いよいよ消費税もかかってくる。年末の申告学習会では、消費税の計算方法なども勉強したい」と話しています。
権利守る民商に誇り 個人番号強要やめて
中本 秋夫さん=クリーニング
3・13重税反対統一行動に、胸を張って参加している中本さん
民商に入会して50年。自主申告を貫いています。
商売を始めたころ、「税金のことなら税務署に聞けばいい」と思って軽い気持ちで、確定申告の相談に行きました。すると、署員が勝手に電気代から売り上げを逆算して申告書を作成しました。何も反論できず、言われるがまま印鑑を押して申告をしてしまい、税金が跳ね上がりました。
当時の会長に相談して事務局員と一緒に計算をし直すと税金は10分の1になりました。その後、不服申し立てをして2年かかりましたが、私の主張は認めさせることができました。
以来、「自分の申告は自分で計算する」ことに徹し、3・13重税反対全国統一行動にも毎年、胸を張って参加しています。「頼りがいのある仲間がこんなに大勢いる」と心強く思っています。
今年の確定申告からマイナンバー(個人番号)を書く欄が設けられてびっくりです。事業者から「番号が漏れたらどうなるのか」「従業員の番号の扱いはどうしたらいいのか」など不安の声が上がっています。しかし、国はその声を無視して個人番号の記載を納税者に押し付けています。こんなことは許してはいけない。
マイナンバー制度に反対し、来年も仲間と一緒に自主申告を貫き、納税者の権利を守っていきたいと思っています。
パソコン会計に挑戦 経営の中身分かった
菊元 悦子さん=ペットショップ
「独立を考えている知人に『民商がいいよ』と声を掛けている」と話す悦子さん
広島県福山市引野町で「ペットショップキクモト」を営む、菊元正さんと悦子さん。この春、民商でパソコン記帳に初挑戦し、納得のいく青色申告ができました。ギリギリまで掛かったので、来年は余裕を持って対策を立てようと、11月から再びパソコン記帳教室に通い、準備を進めています。
悦子さんが、母・益子さんと民商を訪れたのは1月。今まで税理士に頼んでいましたが、自分でやってみようと地元の官制商工会に相談。「パソコンも持ってないのに、できるわけがない。もう一度、前の税理士に頭を下げて頼みなさい」と言われ、ショツクを受けました。
以前、知人から聞いていた民商に相談すると、「パソコンなら、ここのを使えばいいよ」と言われ、すぐに入会。パソコン教室に参加し、教室のない日も事務所に日参し何とか完成させました。
「以前は税理士に任せっきりで、経営の中身がよく分からなかった。自分で記帳すると、経費の使い過ぎが数字でハッキリと分かり、無駄を省けるように。経営や子育てのことも気軽に話せ、小さい子を抱えて、どうしようと悩んでいたら『事務所に連れてくればいいよ。誰かが見てあげるから』と言われ、安心した」と悦子さん。
所属する東2支部の歓迎会で役員や班の仲間と打ち解け、班長を引き受けることに。仲間が毎月、民商の会費を店に持ち寄り、「その都度、商売や子どもの話で盛り上がるのが楽しい」とも。
「独立を考えている知人に『記帳や申告だけでなく、開業融資や経営まで勉強できるから、民商がいいよ』と声を掛けています。もっと多くの人に民商を知ってもらいたい」と笑顔で話します。
積極的な活用を 自主計算パンフレット
全国商工団体連合会(全商連)が毎年11月に発行するパンフレット「日常的な自主計算活動を」(2018年版はA4判52ページ、カラー)。「自主申告から納税者の権利までしっかり分かる」と活用が進んでいます。
2部構成で、第1部は「変えよう日本の税金」。2019年10月から消費税の10%増税が狙われる中、税金の集め方と使い方を正す世論と運動を提起。憲法に基づく税制・社会保障のあり方を提案し、10%増税と同時に予定される複数税率、インボイス(適格請求書)導入を実施させない運動を呼び掛けています。
第2部の「記帳・申告を仲間と学び、経営に役立てよう」では所得計算の仕方、所得税の確定申告、消費税の仕組み、消費税対策の注意点を解説。「税務調査についての10の心得」「税金・社会保険料の滞納処分から身を守る10の対策」も掲載しています。
全国商工新聞(2017年12月4日付) |