伝票整理から法人決算まで 安心の自主記帳・自主計算
「数字をつかみ不況に負けない経営対策がとれる」「税務署の不当な徴税攻勢を許さない力が身につく」―。全国商工団体連合会(全商連)は3日、「自主計算活動全国交流会」を開催。民主商工会(民商)ならではの運動として取り組んできた自主記帳・自主計算の多彩な経験を交流し合いました。税務調査も自信を持って対応、次の一手が打てる経営力を高めるなど、魅力いっぱいの各地の取り組みを紹介します
パソコン会計学習会に取り組む浦和民商の南支部文蔵班
「どんとこい税務調査」班会でパソコン会計=埼玉・浦和
今月1日に浦和税務署の税務調査を受け、その日に終了。少額の売掛金処理で指摘がありましたが、結果は追徴課税なしでした。
法人になって27年。初めての税務調査を4時間で乗り切ったのは、民商で進めている自主記帳・自主計算運動の成果だと確信しています。
私は、3年前に依頼していた税理士が引退したのをきっかけに、自主記帳を始めました。月1回、民商南浦和班の班会で行う学習会に参加し、パソコン会計を覚えました。建築業は、期をまたぐ仕事が多く、手書きでは大変だった翌月処理が簡単にできるようになりました。
税務署から調査の事前通知があってから、帳簿をチェックし、準備は万全でした。
10月25日の民商主催の「どんとこい税務調査」学習会にも参加。菅隆徳税理士の講演を聞いて、納税者の権利などを学び、不安は一掃されました。
当日は、仲間の立ち会いも認めさせて朝10時から調査開始。主に「仕掛金」「売掛金」「仕入」などの期ズレを調べられました。
署員との雑談で、「民商の自主計算・自主記帳なら経営の自己分析ができる」と自慢しました。署員も「民商の記帳はキチンとしている」と評価しており、短時間の調査終了につながったと思います。
今回の調査をきっかけに、経費を見直すこともでき、人任せでは成長しないことを実感しました。(手記)
自主計算活動で納税緩和措置の活用を進める巨摩峡南民商の会員ら
「次の一手」が打てる 実践型の自主計算学習会=山梨・巨摩峡南
山梨・巨摩峡南民商は「数字に強い経営者になろう」と実践型の自主記帳・自主計算学習会を開いています。
08年以来、青年部を中心に数カ月単位でパソコン会計学習会を開催。その成果もあり、これまでに7人(17人受験)が日商簿記3級に合格しています。
学習会の最大の狙いは「次の一手」が打てる経営者になること。そのため自主記帳を「使える決算書づくり」のスタートとして位置づけています。
パソコン会計では、いかに簡単に入力できるか工夫し、「融資の担当者や税務調査で署員は帳簿のココを見る」など実践に役立つテーマも取り入れ、学習意欲を高めています。
自主記帳で特に力を入れて取り組んでいるのが「部門別管理」。例えば小売の場合、「バッグ」「雨具」と品目で売り上げを分けることで、何が「売れ筋」でなにが「死に筋」か、ひと目で分かります。
国税と地方税合わせて264万円の「滞納処分の停止」や「徴税猶予」をかちとった「消費税ノート」
客数×単価で表わされる売り上げを伸ばす場合、客数を伸ばすのか、単価を上げるのか。一歩深い経営対策を立て、お互いに分析しています。
パソコン会計の不得手な会員に勧めているのが民商オリジナルの「消費税ノート」。手書きの帳簿です。民商会員が7年前に発案し、とじ込みができるもので、総勘定方式、経費の課税・非課税にも対応する「スグレモノ」。青色申告でも法人でも、税務調査で提出する帳簿はこれだけです。
「消費税ノート」は強権的な滞納処分から身を守るうえでも威力を発揮。空欄に「雨で売れなかった」「介護で商売を休んだ」などと日記のように書き込むことで、商売と暮らしの実態を示しており「納税の猶予」などを実現させています。
自主計算・自主記帳の活動は、自ら掲げた目標から見て自分は今、どこにいるのか。経営力はどこまでアップしたのか、それを的確につかむ「カーナビ」だと説明しています。
旭川民商が開いた年末調整の説明会
融資審査に楽々対応 支部ごとの小法人記帳学校=北海道・旭川
旭川民商の小法人会員は320人。三役、常任理事、理事70人のうち法人会員の役員は22・8%で、5人に1人が小法人です。
自主記帳・自主計算は融資要求を実現するにも力になります。セーフティーネット保証や借り換え融資、返済期間を延長するため、試算表に加えて資金繰り表などが必要になります。さらに赤字決算になると、金融機関から「収支改善計画表を出してほしい」と言われます。自主記帳・自主計算をしていれば、必要な書類を作成することができ、金融機関からは「民商に話をすると、すぐ対応してくれる」と喜ばれています。
税金の申告を税理士に依頼している業者が、融資を受けたいので試算表を作ってほしいと言うと、忙しいからダメだと断られ、困って民商に相談に来たということもありました。法人としてやっていく以上、経営の実態や資産状況は日常的に把握するということが、大切です。
この間、力を入れたのは支部ごとの記帳学校です。多い年には200人が参加し、この20年間で延べ1200人が記帳学校や記帳講座に参加。消費税導入時には50件ほど記帳代行がありましたが、一気に克服して自主計算・自主記帳に取り組むようになりました。パソコンで自主入力し、4年間で記帳代行を3分の1にしました。
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