厳しいときこそ自主計算・学習会が好評
パソコン会計から複式簿記まで
急激な景気後退で中小業者の営業と生活が一段と厳しい状況になる中、大阪商工団体連合会(大商連)は「しんどい時こそ自主計算」を合言葉に、不況に立ち向かう運動として自主記帳・自主計算活動を推進しています(関連3面)。北区民主商工会(民商)では10月に4回、「記帳定例学習会」を開催し、簿記の基礎知識やパソコン会計などを学習。中小業者一人ひとりの営業状況に合わせた記帳方法を提案し「これなら続けられる」と喜ばれています。
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不況に立ち向かう運動として自主記帳・自主計算活動を推進する北区民商の「記帳定例学習会」 |
「だんだん入力が速くなってる」「慣れてきたころ間違いが多くなるんやで。気ぃつけや」―パソコンのキーボード音が響く民商事務所で、10人の参加者の会話も弾みます。
北区民商が10月22日に開催した「記帳定例学習会」第3週の内容は、パソコンを使った会計方法がテーマ。表計算ソフト「エクセル」で作製された「らくちん会計」を使う単式簿記による記帳方法と、市販されている会計ソフト「弥生会計」を使う複式簿記による記帳方法を学びました。
講師は民商自主計算推進委員長のMさん=靴小売り。「業種や商売の内容によって記帳方法は千差万別。自分にあったやり方で記帳することが継続できるコツです」と呼びかけます。
らくちん会計で
2年前に、夫が飲食店を開業したOさんは、「らくちん会計」を使っています。「昨年は手書きで申告。手書きと比べて、らくちん会計は文字通り楽ちん」と笑顔。「1週目で学んだ自主計算についての基礎知識が役に立った。学習会に参加してよかった」といいます。
複式簿記も
手書きで複式簿記の記帳を約30年間してきたサービス業(法人)の民商会員は、5年前からパソコンを使っています。「はじめは慣れるのが大変だった。弥生会計にしてから、記帳に携わる時間が3分の1になった」とうれしさを隠せません。隣りの席の受講者にも積極的に教えていました。
学習会で「らくちん会計」と「弥生会計」の両方を学んだ開業予定の男性は「どっちもいいが、振替伝票形式で入力できる弥生の方が分かりやすい」と自分に合うやり方を見極めたようです。
商売発展へ
「要求ある人が自ら参加し、いい雰囲気」と目を細めるのは民商副会長のOさん=写真。自らもパソコン会計を学び、「これはいい。民商に入っているメリットにして、組織拡大にも結び付けたい」と展望を語りました。
受講者全員のパソコン画面を駆け足で周りながら指導したMさん。経営不振で廃業する多くの仲間を目の当たりにして、何とかしたかったといいます。
「税金・資金繰り・単価切り下げなど、商売には多くの困難がある。それらに負けないためには自主計算で商売の状況を正確につかむことが大切。学んだことを生かして、商売を継続・発展させてほしい」と自主計算活動推進の意義を強調しました。
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「らくちん会計」(エクセル会計)の画面。「取引日」「科目No」「金額」などを入力し、自動で「月別」「科目別」に集計します |
あなたに合った自主計算を
▼「らくちん会計」(エクセル会計)…表計算ソフト「エクセル」を使って豊中民商が作製し、北区民商が改良した会計ソフト(無料)。他の民商にも独自のものがある。「取引日」「科目」「金額」などを入力し、自動で「月別」に「科目別」で集計する。
決算時には収支内訳書も簡単に作ることができ、消費税申告の本則・簡易課税比較も自動で行われ、経営分析・税金対策に威力を発揮。
▼「弥生会計」(パソコン会計)…日本で一番売れているパソコン会計ソフト(標準タイプで3万円前後)。「伝票(入金・出金・振替)形式」「仕訳日記帳形式」などで入力。「仕訳帳」「総勘定元帳」「現金出納帳」などの転記も自動で行う。収支内訳書・法人決算書も自動ででき、確定申告書や消費税申告書もすばやく作成。資金繰りや手形などを管理する便利機能もある。(注)民商は「弥生会計」のみを推奨しているわけではありません。
▼「手書き記帳・申告」…法人事業者は文房具店などで手に入る記帳用紙・伝票用紙、個人事業者は民商などが作成する月別集計用紙などを使用する。収支内訳書や申告書類は税務署が用意するものに書き込む。
税務調査や融資の力に
大阪・西区民商・Wさん=総合建築
4年前に民商へ入会し、同時に自主記帳・自主計算を始めました。
「弥生会計」を使って記帳し、経営の状況を毎月チェック。売り上げ予測や資金繰りなど2、3カ月先の予定を立て、経費の追加・削減、設備投資など経営対策に活用しています。
今年2月に税務調査がありました。細かい質問がたくさん出されましたが、民商の仲間の支援と自主計算のおかげで自信をもって乗り切れました。
銀行に融資を申し込む際にも、自主計算で作った資料をもとに説明したところ、融資を実現することができました。
それでも経営は厳しい状況。特に消費税には頭を痛めています。単価切り下げに会い、消費税分を価格に転嫁できないからです。自主計算は分納など納税緩和措置の申請時にも大きな力になると思います。
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