市税滞納で競売の窮地 市と交渉し猶予に=岩手・一関民商
困窮実態を示す
住民税や国民健康保険(国保)税の滞納を理由に、自宅と貸店舗を競売にかけると迫られていた新井忠雄さん(仮名)=不動産賃貸=は先ごろ、岩手・一関民主商工会(民商)に入会し、市と交渉して今年度内の競売を猶予(延期)させました。「私の思いを受け止めて背中を押してくれた民商の皆さんに感謝します。再度やり直したい」と決意しています。
新井さんは、20年ほど前、息子の進学に伴って多額の教育費が必要になったことから、一関信用金庫に融資を求めましたが、融資は一部にとどまり、やむなく残額を消費者金融(サラ金)から借り入れました。
当時は年利29.2%で、新井さんは返済しても元金が減らず、多重債務に陥りました。家族が大病を患ったことも重なり、サラ金への返済はもちろん、国保税や住民税の納付も滞るようになり、市税の滞納は200万円に達しました。
今年6月、一関市から自宅と貸し店舗を差し押さえたとの通知が届き、さらに「8月23日に競売にかける」と通知されました。
そのことを知った妹さんが「民商なら相談に乗ってくれるはず」と話し、8月17日に2人で民商事務所を訪ねました。事務局員は一関市との交渉を提案し、その場で民商に入会しました。
競売日まで2日に迫った8月21日、事務局員と一関市収納課を訪ねた新井さんは、「生活が困窮し、悪意をもって滞納したのではない」と訴え。係長らは「事情は分かりました。23日の競売はいったん延期します」と約束し、月末までに滞納の原因を書面で提出することを求めました。
その後、新井さんはアドバイスを受けながら「物件の競売中止を求める嘆願書」を作成し、8月31日に提出。係長は「年度内の競売は見合わせます」と回答しました。
新井さんは徐々に元気を取り戻し、月に1回のペースで収納課を訪ねて月々の収支など生活実態を報告するとともに民商の仲間の支援を受け、過払い金請求に着手し、前向きに歩み始めています。
全国商工新聞(2017年11月20日付) |