全商連が記者会見 通則法に扇動罪を編入で税務調査が犯罪捜査に
権力の介入に危惧
全国商工団体連合会(全商連)は9日、自主申告権をはじめとした納税者の権利や任意調査の手続きを定めた国税通則法(通則法)と脱税などの犯罪を取り締まる国税犯則取締法(国犯法)を一本化しようとしている問題で記者会見を開きました。
全商連が開いた通則法と国犯法の一本化問題についての記者会見(中央が太田会長)
太田義郎・全商連会長をはじめ税理士や弁護士などが危険性と問題点を明らかにし、法案の成立を断固阻止し、納税者の権利を守るたたかいをさらに発展させると訴えました。
太田会長は「日本では長い間、税金をお上が決めて国民に従わせてきた。通則法に国犯法を紛れ込ませるのは、まさにお上の思想で、国民は脱税していると見ている表れではないかと危惧している。危険な内容を広く知らせたい」と訴えました。
浦野広明税理士は「税務行政手続きは納税者の人権を侵害しないために最大限の配慮が必要。権力を持っている国家は強い立場にあり、弱者である国民の権利を守らない法律などは『法』とはいえない」と強調。同時に「国犯法にある扇動犯の罰則を通則法『改正』案126条に潜りこませた。犯罪と関係ない納税者が警察や課税権力の監視、介入の対象とされる可能性がある」と指摘しました。
鶴見祐策弁護士は「行政手続法に異質の刑事捜査の手法を混入させる企ては違法不当な『料調方式』の税務調査を助長させ、適正手続きを骨抜きにすることにつながりかねない」と批判。扇動罪の罰則が定められた背景について「戦後の占領期の混乱に乗じて政府が行った理不尽な課税と収奪、いわゆる『トラック徴税』に対して抗議の声を上げた自営業者や労働者を弾圧するためにつくられたもの。その再現を許してはならない」と強調しました。
不公平な税制をただす会の河野先代表は「通則法に国犯法を組み入れることは、共謀罪とも通じる。危険性を知らせたい」、佐伯正隆税理士は「通則法に国犯法を『編入』しても運用は区別するというが法律に壁は作れない。国会でしっかり論議して納税者の権利が侵害されないように附帯決議をあげることが必要」、平石恭子税理士は「税務署は任意調査でも納税者の同意を得てメールなどを見ようとする。国犯法が通則法に入ったことによって、同意があればサーバも見られるなど任意調査の範囲が広がるのではないか」、不公平な税制をただす会の谷正幸事務局次長は「国会の審議で国は現状の運用上、特段に問題が生じているわけじゃないと言いながら二つの法律を一つにしようとしている。通則法が国犯法になるのではないかと懸念している。歯止めをかけることが必要」と訴えました。
全国商工新聞(2017年3月20日付) |