政府が国税通則法「改正」案を提出 狙われる税務調査の強権化=浦野広明さん(税理士)に聞く
国犯法を編入 犯罪捜査の手法を拡大
政府は2月3日、2017(平成29)年度税制改正関連法(所得税法等の一部を改正する法律)案を国会に提出し、衆議院で審議されています。国税通則法(通則法)に現行の国税犯則取締法(国犯法)の危険な内容を組み込むことが盛り込まれています。なぜ、通則法に国犯法の内容が盛り込まれたのか、その狙いは何か、今後の税務調査に与える影響などについて立正大学の浦野広明・客員教授(税理士)に聞きました。
強制調査広がる恐れ
―通則法にどんな内容を盛り込もうとしているのでしょうか。
脱税など犯罪事件を取り締まる手続きや強制調査の権限を規定した現行の国犯法を廃止して、通則法の中に新たに「犯則事件の調査及び処分」の章を設けました。国犯法の内容に加え、刑事訴訟法の改定(2011年)を受けてパソコンなどの電磁的記録を差し押さえできるなど証拠収集の手続きや関税法と同様に、夜間でも強制調査ができるなど厳しい調査手続きを定めました。
―通則法になぜ、犯則調査の手続きを?
犯罪は通常、刑事訴訟法で手続きが規定されていますが、税金は特殊という理由で国犯法に規定されていました。通則法は、国税の基本的・共通的な事項を定めた法律です(1条)。国犯法の内容を通則法に編入させるということは、現行の税務調査が「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」としている規定を投げ捨てるものです。
ですから、税務調査において任意調査と強制調査の境界線が曖昧になり、納税者の権利を侵害するような強制調査が行われることも考えられます。
抜き打ち調査横行か
―通則法は事前通知などの手続きを明確にしたのでは?
納税者を抑圧する伏線は通則法の改定(2013年1月1日施行)にありました。納税者に対する調査の事前通知(第74条の9)として税務署長が職員に調査権を行使させる場合、税務署長自らが納税者や代理人に通知する事項を示しています。
しかし、所得の確認など「調査の目的」が通知されるだけで、事前通知で一番重要な調査理由の開示が欠落しています。「事前通知」(第74条の9)を「原則」とするかのようにしましたが、第74条の10では手のひらを返して「調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には」抜き打ち調査をすると「例外」を規定しました。税務署の恣意的な判断で、抜き打ち調査が当たり前にできるようにしたのです。
―国税の犯則事件とはどんな内容ですか?
租税犯に関する事件です。租税犯は、租税の賦課・徴収・納付に関連した犯罪で、脱税犯(逋脱犯)と秩序犯(租税危害犯)とに分かれます。前者は納税額を故意に免れる実質犯、後者は脱税にまでは至っていないが、放置すると脱税する危険があると考えられる形式犯です。2010年度の税制「改正」で罰則が強化されました。
犯則調査の手続きの中に酒税やたばこ税などの間接国税は通告処分ができることが規定されています(通則法157条)。通告処分とは、犯則事件の調査で脱税などの罪を犯しているのではと心証を得た時は国税局長や税務署長が罰金を犯則者に通知するものです。その危険性は30年前に消費税が導入された時から強調されていましたが、間接国税は裁判をせずに通告処分ができます。
現在消費税は間接国税に入っていませんが、省令によって決められますので、今後の動きに注意が必要です。
―今後、どういうたたかいが必要でしょうか?
政府は「テロ等対策準備罪」と名前を変えて共謀罪を今国会に提出しようとしています。「偽りその他不正行為による免税等」として、所得税法や法人税法、消費税法なども共謀罪の対象に含まれています。確定申告時期にみんなで集まって申告や税金のことについて話し合ったことを当局が脱税を共謀したと見なせば、罰せられる可能性もあるわけです。その露払いともいえるのが「国犯法の改悪と通則法化」です。すでに罰則も強化されています。
脱税の取り締まり強化は必要ですが、納税者の権利を踏みにじり、犯罪捜査のような税務調査を合法化するようなことは絶対に許せません。通則法に強権化する国犯法を盛り込ませないように民商・全商連をあげて反対の声を大きく上げる時です。
全国商工新聞(2017年2月27日付) |