申請型「換価の猶予」施行 猶予適用件数が8倍に職権型の適用も迫って=角谷啓一さん(税理士)
消費税滞納が急増
実績重ねる運動を
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平成26年4月、消費税率8%への大増税で新規滞納の発生が急増したことが、「平成27年度租税滞納状況」で明らかになった(28年3月末時点)。それによると、27年度中の「新規滞納発生額」は4396億円で、25年度に比べて1・6倍に増え、「全税目の新規滞納発生額」6871億円の64%を占める(図)。それ以前と比べて、一気に10%くらい増えたことになる。
行政側もこれを予測し、「猶予制度の見直し」を27年4月から実施し、消費税大増税に備えた。
具体的には、「納期限から6カ月以内」の滞納を対象に「申請型換価の猶予」を創設し、従来の職権型換価の猶予についても「制度見直し」の中に位置付けるなど、猶予制度の改善を図った。「猶予制度見直し前」(25年7月1日〜26年6月30日)と、「見直し後」(27年7月1日〜28年6月30日)について、換価の猶予の全国処理件数を情報開示した(表)。25年度の5743件に対し、27年度は4万6258件で8.05倍も増えたことが明らかになった。
「納期限から6カ月以内」の申請型であれば、ほぼ許可されている。しかし、「納期限から6カ月以内だけ」という滞納事例はまれで、何年越しといった累積滞納を抱えている例が多い。したがって、「申請型」が使えず、職権型の換価の猶予を申し出ることになる。
ところが、前出の情報開示で、職権型だけの全国の処理状況を見ると、25年度は5743件、27年度は2万1412件で、伸び率は3.73倍と鈍る。中でも大阪局の伸び率は1.09倍と横ばいである。福岡局1.06倍、関信局1.38倍も、ほぼ同様である。これらの国税局は、「職権型」に関しては「猶予制度の見直し」を無視しているに等しい。これは、行うべき行政手続きに対する職務懈怠であり、国税庁は是正させるべきである。これを放置すると、「猶予制度見直し前」に逆戻りすることは明らかである。一方、徴収現場に対しては職権型、申請型を問わず、次々と換価の猶予の適用を申し出て、実績を重ねることが大切である。
全国商工新聞(2017年2月20日付) |