マイナンバーや税務調査で11金融機関と懇談「憲法の立場で対応」=広島県連
「権利脅かす税務行政認めない」
広島県商工団体連合会(県連)と県内の民主商工会(民商)は9月14日、融資相談、税務調査への対応など8項目について11の金融機関本店に申し入れ、懇談を行いました。この中で広島銀行は、税務調査における反面調査について「私たちは憲法の立場で対応している。納税者の権利を脅かす税務行政を認めるわけにはいかない」と明言しました。
小企業憲章など事前に送付して
懇談には加賀茂・全商連副会長(広島県連会長)はじめ、県内民商から41人が参加。本店への申し入れ・懇談は20年以上続いているものです。
今回は「小規模企業振興基本法」と「小企業憲章」を事前に送付。地域振興についても意見を交換しました。
コンサル機能を発揮しサポート
応対した本店ではいずれも例外なく「地域振興の役に立ちたい」「地元の中小業者あっての私たち金融機関」と回答。その上で、「創業・金融支援・経営改善・事業継承など積極的にコンサル機能を発揮してサポートしています」「中小企業が元気でなければ、地域が元気にならない」と、地域の業者を支える姿勢を強調しました。
また、仕事おこしや地域内循環経済をめざして行政への働きかけを行っている民商に対し、「頑張っていますね」などと激励する言葉も返ってきました。
また、共通番号の扱いについては、ほとんどの金融機関が「マイナンバーはお預かりしません。これ以上リスクが増えるのは避けたいので、今後扱う予定はありません」と回答しました。
税務署の反面調査に対しては、すべての金融機関が「納税者への連絡・承諾は当然です」と回答しました。広島銀行本店では応対した本店事務統括部が「私たちは憲法の立場で対応しています。納税者の権利や生存権を脅かす税務行政を認めるわけにはいきません」と明言。その上で、最近の事例としてある税務署員が給与の振り込み日の日付を教えてほしいと、尋ねてきたのに対し「『個人情報を勝手に漏らすわけにはいかないし、この人の給料を税務署が差し押さえたら生活できなくなるではありませんか』と言って帰ってもらった」と教えてくれました。
また、税務調査での反面調査も同様に「本人の承諾なしに税務署に資料を見せることなどありえません。まず、ご本人の了解はとってあるのかを確認し、本人に連絡して確認した上でないと対応できないというのが当行の基本的な考え方」と言い切りました。
広島銀行の対応は全県の金融機関にも影響を与えており、今年の本店申し入れ行動では、県内11の金融機関すべてが、「民商の申し入れの通り対応します」「その立場で対応しています」との回答を得ることができました。
広島県連が行った金融機関本店への申し入れ内容
【融資相談についての要望】
(1)深刻な経済環境の下、融資要求を抱える中小業者の相談・申し込みにあたっては、中小業者の再生・振興の立場で対応を
(2)引き続き中小業者を生かし再生する方向でのコンサルティング機能を発揮する審査を積極的にすすめること
(3)「借換え」や「一本化」などで経営改善が見通せる事業計画には協会保証の有無にかかわらず積極的に支援を
(4)新規の借り入れ、借り換えや公的融資制度など、中小業者に有利な融資制度を積極的に紹介・活用を
(5)事業資金等の返済条件の緩和(条件変更)の申し出に積極的に応じること
(6)条件変更中であっても追加融資などには、営業実態や見通し、事業所の経営努力などに耳を傾けて、積極的に応じること
(7)金利の引き下げ要求に積極的に応じること
(8)信用保証制度を擁護発展させるために、「責任共有制度」の見直しに尽力すること
【税務調査への対応について】
(1)税務署の調査に係る金融機関への反面調査(任意調査)等の際には、納税者である預金者本人に必ず連絡すること
(2)預金者の財産と秘密を守り、納税者の権利を守る立場を堅持すること。また、預金者本人の意向を尊重し、預金者の承諾のない「調査依頼」には応じないこと
全国商工新聞(2016年10月17日付) |