税務署員が不当につり上げた消費税 更正の請求で減額=大阪・豊中民商会員
264万円が60万円に
消費税の仕入れ税額控除を否認され、「期日までに消費税を納付できなければ、差し押さえをする」と言われていた高田雄二さん(仮名)=電気通信=は、大阪・豊中民主商工会(民商)の仲間と一緒に豊能税務署に抗議し、このほど仕入税額控除と「更正の請求」を認めさせました。264万円にもつり上げられた消費税などの納付額は60万円に。総務課長は「今後このようなことがないように指導する」と謝罪しました。
消費税の仕入れ税額控除を否認し、税額をつり上げた豊能税務署
高田さんは8年前に開業し、毎年、自分で確定申告書を税務署に提出していましたが、消費税が一括では納付できず、分納していました。
2013(平成25)年と2014年の2年間、出張が多かったため申告ができず、昨年8月、2年分の申告について税務署に相談しました。
署員聞き取り 申告書を作成
署員が聞き取りながら申告書を作成し、所得税と消費税を合わせて264万円にもなりました。どういう計算で出された税額なのか分からないまま、高田さんは印鑑を押し、毎月10万円ずつを分納していました。
無理して払っていたため今年6月になって納められなくなり、税務署に出向いて相談。しかし、「期限内に納められなければ差し押さえをする」と言われ、途方に暮れました。そんな時、知り合いから豊中民商を紹介され、高田さんは事務所を訪ねて入会しました。
民商の仲間が、署員が作成した申告書を調べると、所得税の収支内訳書には経費が記載されているにもかかわらず、消費税では経費分が全く控除されておらず、本来の税額に比べ4倍以上になっていることが判明しました。
申告書の税額が間違っていた時に「更正の請求」ができることを知った高田さんは、税務署に出向いて「『更正の請求』をして正しい税額で納付する」と伝えました。ところが、署員は「更正の請求をしようがしまいが、決められた額を期日内に払えなければ差し押さえる」の一点張りでした。
税務署に抗議 誤り認め謝罪
6月20日に出口保幸会長と橋本晃尚事務局長が高田さんと一緒に税務署に行って「申告納税制度は自主申告が基本。申告相談の段階で、税務署員が勝手に仕入税額控除を否認すべきではない」と抗議しました。総務課長は「申告相談時に仕入れ税額控除を否認すると、納税者は相談時に全ての領収書等を持っていかなければならないことになり、納税者の負担を考えても適切ではない。領収書があるかないかを確認をしていない以上、否認するべきではない」と署員の対応の誤りを認めました。
その結果、「更正の決定通知」が届き、消費税の納付額は60万円になりました。
高田さんは「いかに税金のことを分かっていなかったか痛感した。税務署を信用していたのにひどい仕打ちをされるとは思わなかった」と怒りをあらわにしています。
出口会長は「無理をして払い続け、払えなくなって税務署に連絡をしたのに『差し押さえをする』と脅される。こんな理不尽なことはない。民商の仲間の団結で強権的な税務行政を改善させよう」と話しています。
否認は許されない 浦野広明さん=立正大学客員教授・税理士
税制改革法が1988年12月30日に施行されている。この法は翌1989年に実施されることになった消費税の基本的な考えを命じたものだ。税制改革法は、「消費税は課税の累積を排除する方式による」(10条2項)としている。
消費税法は、課税標準を「課税売上」(28条)とし、仕入にかかる消費税額を税額控除する(30条)と規定している。仕入税額控除制度を設けたのは、法運用上の技術的要請にすぎない。消費税の本質は、「税制改革法」が断言するように、「課税売上額から課税仕入額を控除した金額」(付加価値額)である。
したがって、仕入税額控除の否認は、(1)仕入税額を証明する帳簿や請求書がないか、あっても全く信用できず、その上、(2)課税仕入額が推計できない場合に限ってしか、行ってはいけないのである。
消費税法30条7項は、仕入税額控除の要件として、「帳簿及び請求書等」の保存を掲げているが、帳簿及び請求書等の保存方法は事業規模によって異なってよい。なぜなら、それは個人・個性の尊重である(憲法13条)。
仕入税額控除の否認は、憲法13条に反するだけではなく、経済的関係(例えば租税の賦課)の分野において国民は差別されないとする憲法14条の平等原則違反となる。仕入税額控除否認は許されない。
全国商工新聞(2016年9月26日付) |