税務署員の「申告納税制度を無視」する発言を追求し撤回させる=滋賀・湖東民商
収支内訳書で調査
収支内訳書に関わって滋賀県近江八幡税務署の署員が申告納税制度を無視する失言を行ったことについて、県内の民主商工会(民商)が連携して問題を追及し、署員は「今回の回答は撤回します。なかったことにしてください」と申し出ました。
収支内訳書を机上調査などに使っていることを示唆した署員の発言を撤回させた湖東民商の役員ら
事の始まりは湖東民商が6月8日に行った近江八幡税務署との交渉。「収支内訳書の督促状に適正申告の確保の観点から添付等が義務付けられているという文言があるが、収支内訳書の添付のない納税者は適正申告をしていないと税務署は疑っているのか?」と質問すると、署員は「所得税法に収支内訳書添付の義務がうたわれているので提出を依頼している」と答えました。
問題なのは「収支内訳書の添付と適正申告の関連性は何か? 収支内訳書は税務署にとって何のために必要なのか」との質問に対し、「収支内訳書と申告書を突合させて、過ち等を確認するため」と答えたことです。「であるならば、それは税務調査か? 調査の対象者を選定するための作業か?」との質問に何も答えず、署員は「収支内訳書と申告書を突合させるのは普通の作業」と言いのけ、収支内訳書を机上調査などに使っていることを示唆しました。
間宮守雄副会長は「収支内訳書の提出にあたっては、零細業者に過大な負担を押し付けてはならない≠ニ付帯決議もついているし、課税強化につながる≠ニ危惧されていたのを知ってますか? あなたの発言は申告納税制度を無視している」とずばり指摘。
近江八幡税務署の署員の回答を、彦根民商が6月14日に行った彦根税務署への申し入れ時に「収支内訳書の提出を求めるのは、近江八幡税務署が収支内訳書と申告書を突合させて、過ち等を確認するためと答えているが、どうなのか」と追及。「他署のことのコメントは差し控える」と答えましたが、後日、近江八幡署の署員は湖東民商に電話で税務署交渉での回答の撤回を伝えました。
【解説】不提出に罰則はない収支内訳書
収支内訳書とは、不動産所得、事業所得または山林所得を有する青色申告者以外の白色申告者が確定申告する場合に確定申告書に添付する書類です。
所得金額の計算の元となった総収入金額と必要経費を記載することが所得税法120条に規定されていますが、収支内訳書の提出に応えるかどうかは納税者本人が決めることで、提出しなくても罰則はありません。
これは1984年に所得税法、国税通則法が改悪されて設けられた制度です。
しかし、全国商工団体連合会(全商連)などの中小商工業者の反対運動により罰則のない「訓示規定」となりました。当時に衆参大蔵委員会では「記帳・記録保存及び確定申告書に添付する書面制度等に関しては、その内容方式等について納税者に過大な負担となることがないよう十分留意するとともに、適正な運用に努めること」と「付帯決議」を行いました(84年101国会)。
しかし、税務署は収支内訳書の提出を督促。白色申告者の売り上げを把握することによって消費税の納税義務者も把握し、調査にも流用しようとしているためです。制度の発案当時から課税強化につながることが懸念されていました。これに対して当時の竹下登蔵相は「大型間接税とはまったく関係のない問題」(84年101国会参院本会議3月9日)と答弁しています。
全国商工新聞(2016年7月18日付) |