[マイナンバー]法人番号への対応は
マイナンバー(共通番号)制度は個人番号と併せて法人にも法人番号が付番され、インターネットを通じて公開されます。どんな仕組みなのか、番号が通知されてからの対応は、休眠している会社はどうすればいいのか。司法書士の中村圭吾さんが解説します。
[Q]どんな仕組みですか
国税庁のサイトで公開
―法人番号はどんな仕組みでしょうか。
共通番号制度の実施に伴い、平成27(2015)年10月5日より、登記されているすべての法人(会社や社団・財団、政党、生活協同組合等)に、13桁の番号(法人番号)が付けられることになりました。この番号は、法人の名前や所在場所、変更履歴情報と一緒に、インターネット上の「国税庁法人番号公表サイト」(http://www.houjin-bangou.nta.go.jp/)に公開される予定です(11月25日までに全国の法人を公開の予定)。
このサイトに掲載されている情報は、誰でも無料で検索・閲覧できます。
[Q]法人番号の通知が届いた
会社情報と登記点検を
―法人番号の通知が届いた後の対応は?
世帯ごとに通知される「個人番号」と異なり、「法人番号」はもともと公開を前提にしているので、番号の管理に特段の注意をする必要はありません。政府は税務申告時に法人番号を記載するよう広報していますが、記載がなかったとしても受理されないことはありません(全国商工新聞11月9日号既報)。
ただ、国税庁のサイトで、会社の情報が容易に調べられる点に注意が必要です。例えば、会社を設立すると新しく「法人番号」が指定されますが、これを利用して、「最近1カ月以内に都内で設立され、番号が指定された法人」という情報を一瞬で探し出すことができます。これまでも会社の登記事項証明書を取得して営業をかけてくるケースがありましたが、その手間や費用が減ることから、新設会社に対するセールス攻勢がひどくなることが予想されます。自宅を本店所在地にしている場合は、そのことを念頭に対応する必要があります。
―本店所在地を移した後、登記をしてこなかったのですが…。
会社法では、本店についての登記内容に変更が生じた場合、2週間以内に変更登記をするように定められています。チラシ等の宣伝物に記載された住所が、登記された本店所在地かどうかは、国税庁のサイトを見れば、すぐに分かってしまいます。会社の名前や所在地の変更の登記をすると、法務省から国税庁に通知が行き、サイトの情報が更新されますので、今後は、速やかに登記の手続きをした上で、国税庁のサイトが正しい情報に更新されたかを確認すべきでしょう。なお、登記手続きを怠っていた期間によっては、裁判所から、数万円から最大100万円の過料を支払うよう通知がくる場合があります。
[Q]休眠会社に通知が来た
再開なら気にせず
―休眠している会社に通知が来た場合は?
制度が始まった10月5日の時点で登記されている法人はすべて「法人番号」が付されたことから、税務署等に休業届を出している「休眠会社」にも通知が届きます。仮に清算が完了し、法人が正式に消滅しても、国税庁の記録には、清算されたとの情報が付け加わるだけで、会社の情報は削除されません。現在、事業を行っておらず、今後も特に再開の予定がなければ、特に気にする必要はないでしょう。
なお、株式会社の場合は12年間、登記を行わないと、職権で解散され、それから3年たつと会社を継続することができなくなります。その後、10年経過すると、登記簿も閉鎖されますが、会社に不動産等の財産が残っていた場合、権利関係が複雑になる恐れがあります。長期に休眠する場合や登記に関するさまざまな相談は、民商会員の司法書士にお寄せください。
マイナンバー制度は、行政機関が、国民の個人情報を容易に把握できるようにするための制度で、行政コストの削減のために中小事業者にその負担を負わせる制度になっております。特に、さまざまな法人と取引のある個人事業主にとっては、自らの「個人番号」の漏えいを防ぐのは非常に難しく、来年1月からの運用開始を延期し、制度を見直すべきと考えます。
全国商工新聞(2015年12月7日付) |