全商連「マイナンバー制度」緊急シンポジウム
全国商工団体連合会(全商連)は7月16日、衆議院第1議員会館内で来年1月から運用が開始される「マイナンバー制度」に関する緊急シンポジウムを開き、税理士や自治体職員、中小業者など220人が参加しました。
マイナンバーシンポを力に延期、廃止を求める運動を進めようとあいさつする全商連の菊池副会長
全商連の菊池大輔副会長が開会あいさつ。「マイナンバー制度の導入により、事業主とマイナンバーを管理する従業員にかかる責任は非常に大きくなる」と実態告発し、「番号通知まであと2カ月に迫っている。問題点をつかみどう行動するかを学んで運動の力にしよう」と呼び掛けました。
「ナンバー制の基本的な捉え方」と題し、立正大学客員教授の浦野広明税理士が講演。マイナンバーの目的を「複数に存在する個人の情報を“ひとまとめ”にすること」と指摘し、「国家が国民を“番号”で認識することで確実に個人の尊重が損なわれ、憲法13条に違反する」と強調しました。さらに、マイナンバーで資産など個人情報を管理し、「一方的な課税・徴収強化」をすることは「“法律の定めるところにより”納税の義務を負う(マイナンバー法は課税手続きについて定めたものではない)とする憲法30条や、何人も、法律に定められた手続きによらなければ生命、自由を奪われないと定めた憲法31条にも違反する」と述べました。
日本弁護士連合会(日弁連)情報問題対策委員会委員長の坂本団弁護士は「マイナンバー制の法的問題点」と題し報告。マイナンバー制度は(1)規制内容の周知が遅れており、今後の徹底も非現実的(2)警察と税務署は規制の例外(3)日本年金機構が125万件の情報漏えいを起こしたように事故は防げない(4)番号に相違ない旨の申立書で本人確認は可能としており、なりすましが防げない―の4点から「プライバシー侵害」につながると警告しました。
また、政府が導入のメリットに行政効率化を掲げていることに対し、「国税職員が調査・徴収業務に集中すれば2400億円の税収増(職員1人あたり1・3億円)が見込めるというお粗末なもの。メリットなどない」と批判。「利用範囲を拡大すればプライバシー侵害と不正利用の危険性はさらに高まり、安全な制度実施は不可能」と語りました。
税経新人会の奥津年弘税理士は、個人事業者の対応について「お金をかけないで、できることをやる」と解説。政府が求める「安全管理措置」の対応について、自身が策定した取扱規定などの例文を示しながら「従業員の個人情報の流出があったときに事業所の責任を問われないためにも、番号取り扱い記録をしっかりと付けておくことが必要」と語りました。
全商連の遠藤強常任理事は「マイナンバーに悩む中小業者の相談に乗りながら、制度実施を延期させ、中止に追い込む運動を強めよう」と閉会あいさつしました。
全国商工新聞(2015年8月3日付) |