消費税の納付困難 申請型換価の猶予実現=神奈川・川崎
神奈川・川崎中原民主商工会(民商)の河田肇さん(仮名)=建築=は6月1日、消費税の納付について申請型「換価の猶予」が認められました。9回の分納となり、延滞税は14・6%から2・8%に下がり、1万円にも満たない金額になりました。
延滞税5分の1以下に
売り上げ減少などの理由で、国税の納付が困難なときに認められる「換価の猶予」は、これまで税務署長の裁量によるものだけでしたが、ことし4月から納税者の権利として「換価の猶予」が申請できるようになりました。河田さんは「申請に必要な書類が思ったよりも簡単に作成できて、申請書を提出するときも何か言われるのではないかと心配していたが、すぐに受理されてびっくり。延滞税も下がったし、重い消費税の負担が軽くなった」と喜んでいます。
家族4人で内装業を営む河田さん。数年前から長引く不況と低単価が経営を直撃し、消費税を一括で納付できなくなりました。毎年、民商の仲間と一緒に集団で川崎北税務署に分納を申請し、10〜12回に分けて完納していました。
消費税が8%に増税されてからさらに負担が重くなり、ことしの消費税額は44万3000円と昨年の約1・6倍に増え、とても一括で納付できなくなりました。
3月末に事務局員と税務署に出向き、10回の分納を相談。ところが担当者は「2、3回で納付してもらわなければ駄目です」と拒みました。そこで「換価の猶予」申請を相談したところ、「申請書を出してください」と担当者に言われました。
事務局員のアドバイスを受け、家族と協力しながら「換価の猶予申請書」と併せて「財産収支状況書」(現金、今後の収入および支出の見込金額、分割納付計画、売掛金・貸付金の状況、借入金・買掛金の状況などを記載)を書き上げて4月30日に申請書を提出。不備の指摘や預金通帳を調べられることもなく、窓口の担当者は「はい、預かります」と言って書類を受理。「換価の猶予」を認める通知書が送られてきました。
解説 当該者は積極的活用を
税理士・角谷啓一さん
「換価の猶予」(国税徴収法151条)は納税について誠実な意思を有する納税者が(1)所有する財産を換価(売却)することにより、その事業の継続またその生活の維持を困難にする恐れがあるとき(2)その財産の換価を猶予することが、換価することよりも国税の徴収上有利であるときのいずれかに該当する場合に、財産の換価を猶予できるという分納制度です。換価の猶予は、滞納している多くの事業者等に該当します。
従来の換価の猶予は行政側の職権(裁量)によるものでしたが、平成26年の税制改正で国税の納付に関する「猶予制度の見直し」が行われ、この職権型換価の猶予を残しながら申請による換価の猶予制度を併設しました(徴151の2)。適用される要件は表の通りです。納付期限から6カ月を超える滞納があれば、換価の猶予申請自体ができなくなるので注意が必要です。
換価の猶予が認められると(1)既に差し押さえを受けている財産の換価(売却)が猶予され、(2)差し押さえにより事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがある財産については、差し押さえが猶予または解除される場合があり、また、(3)猶予(分納)期間中の延滞税が一部免除されます。
本紙で「換価の猶予の活用法」について5月18日号から4回に分けて連載しました。
換価猶予等の適用を受けた場合の延滞税の減免制度について、計算根拠を図解しながら解説しました(6月8日号)。
通常、延滞税の利率は平成26年1月以降大きく軽減され、平成27年の場合、「納期限から2カ月以内」は2.8%、「2カ月を超える日から」9.1%です。この延滞税を換価の猶予等で免除する場合、猶予対象税金の「納期限から2カ月以内」(2.8%)の期間については、本則では免除の対象外とされ、免除対象となるのは9.1%の部分のみとされています(国税通則法63条1項、5項など)。ところが、租税特別措置法94条の改正によって、「納期限から2カ月以内」の期間についても、ことし4月以降は「免除対象」とされ、2.8%を1.8%に減免できることになりました。
この措置によって、延滞税免除の範囲がいっそう拡大されましたので、納期限またはその直後に換価の猶予を申請(または願い出)することがメリットにつながります。
全国商工新聞(2015年7月13日付) |