笠岡税務署署員が修正申告書でっち上げ 抗議し撤回・謝罪さす=広島・福山
通則法違反を追及
署員の不当な行為に抗議した西備、福山両民商の役員ら(笠岡税務署前)
税務署員が税務調査前に銀行への反面調査を行い、勝手に作成した修正申告書を元請け業者に渡し、下請け業者に提出させようとした「国税通則法違反事件」が発生しました。広島・福山、岡山・西備の両民主商工会(民商)は6月18日、笠岡税務署と交渉、修正申告書の撤回と謝罪を求めました。統括官は「あってはならないことをして申し訳ありません。修正申告書は無効です」と謝罪しました。
税務調査に元請け利用
修正申告書をでっち上げられたのは岡山県下の元請け業者の外注として働いていた広島・福山民商の石井宗栄さん=管工事=ら3人。石井さんは「税務署に謝罪を求めるなんて考えてもみなかった。民商に入っていなかったらあきらめていたと思う。民商に相談して良かった」と話しています。
交渉は6月11日に続くもので13人が参加。石井さんらは「事実を明らかにし、謝罪を求める」請願書の回答とともに修正申告書をでっちあげた署員の同席を求め、経過をつまびらかに説明して謝罪するように要求しました。
署員の守秘義務に違反
西備民商の三好幸治会長は「調査もせずに下請け業者の預金を調べて記録を提示し、元請けを通じて修正申告書を押し付けることは税務運営方針や国税通則法を無視したもので守秘義務に抵触している。断じて許すことはできない。国会でも追及してもらう」と強く抗議。統括官は石井さんらへの聞き取りを行い、修正申告書を作成したのが署員だったことがあらためて判明しました。
元請け業者が同税務署から「資料を持って来署するように」との連絡を受けたのは5月末。応対した署員は元請け業者に修正申告を迫るとともに石井さんら3人の家族を含めた通帳を示しました。
元請け業者はその場で押印した上で3人に対して「税務署から用紙が届くので押印して送り返してほしい。税金は自分が負担するから大丈夫」と伝えました。その後、修正申告書が元請け業者に届き、3人に手渡されました。
石井さんはそれを見てびっくり。自分の申告を無視した推計課税を行っていたのです。
元請け業者にいきさつを聞いてもはっきりしないため、石井さんは署員に電話。計算の根拠を尋ねると「元請け業者の資料を点検する中で、石井さんたちの申告が違うと思って私が修正申告書を作った」と明かしました。
石井さんはすぐに福山民商に相談。西備民商と連絡を取り合って対策を話し合いました。
11日の交渉では事前通知もせずに、しかも調査に入る前に納税者の同意も得ずに反面調査をしたことを抗議。総務課長は「税務運営方針は全署員に徹底している。事前通知は原則行うが、例外規定もある」などと答えました。「調査前に反面調査ができるのか」との追及に対し、総務課長は「時間をください」と言って退席。国税庁の問答集を手に持ち、「調査前に反面調査を行っても違法ではない」と答えため、参加者は「そういう回答をする税務署は聞いたことがない。笠岡税務署では今回のようなことを日常的に行っているのか」と追及。総務課長は回答不能に陥りました。
全国商工新聞(2015年7月6日付) |