滞納問題民商で解決 納税緩和措置を活用
分納で安心・延滞金免除も
国税・地方税や国民健康保険(国保)料(税)、社会保険料の厳しい徴収が中小業者に襲い掛かっています。経営悪化などでやむを得ず納付が滞ったときも、実情を把握せずに「悪質」と決めつけ、売掛金などの差し押さえも後を絶ちません。民主商工会(民商)では滞納問題の解決へ向けて相談に乗り、機敏な交渉で差し押さえなどを解除させています。
徴収機構/売掛金を差し押さえ 交渉し一部取り戻す
機構から送られてきた配当計算書(一部)
厳しい徴収
地方税の「滞納整理」を目的に、全国に先駆けて設立された 城租税債権管理機構(機構)。厳しい徴収や差し押さえを強行しています。
土浦市で電気工事業を営む林信也さんは2014年12月22日、同機構から「差押調書」が送られ、国保税や固定資産税の滞納を理由に、取引先の売掛金85万8000円が差し押さえられました。驚いた妻・八重子さんはすぐに機構に電話を入れ、「外注費や材料代が払えず、生活もできないので差し押さえを解除してほしい」と必死に訴えました。しかし、担当者は「納付以外の話は聞かない」と全く聞き入れようとせず、林さんは途方に暮れました。
年が明けてから以前、八重子さんがインターネットで探して資料請求をしていた「全商連」を思い出し、林さんは1月10日、わらをもつかむ思いで次のメールを送りました。
「税金の滞納がありまして、1月に差し押さえをするとのことで、どうすればよいか悩んでます。12月の健康診断で糖尿病で血糖値が358あり、合併症の神経障害になってます。これから、どうしたらよいか分かりません」
全商連から連絡を受けた 城県商工団体連合会(県連)の綿引悦朗事務局長はその日のうちに土浦民商の会長・高橋孝さん=行政書士=に連絡を入れ、林さん夫妻に会ってもらうことにしました。2日後、八重子さんと一緒に土浦民商の事務所を訪ねた林さんはその場で入会。高橋会長にこれまでの経過を話しました。
10年ほど前から不況や材料の高騰などの影響を受けて厳しい経営を強いられてきた林さん。住宅ローンの返済とともに国保税や固定資産税の納付が滞るようになり、同市は14年10月、本税と延滞金を合わせて560万円を機構に移管。「土浦市との話し合いで分納誓約をしたが、思うように納付できなかった」と林さんは苦しい胸の内を明かしました。
実情示して
機構の担当者との面談の約束を取り付けた後、林さん夫妻は関連資料や支払い必要経費、事業計画、返済計画書を準備し、19日に県連の事務所で高橋会長や綿引事務局長と一緒に対策を話し合いました。「外注費や材料代、生活費など事業や生活の維持に支障となる差し押さえは国税徴収法でも留意すべきとされている。今回のような問答無用の差し押さえは違法である」と確認し、その日のうちに4人で機構に足を運び、「売掛金はどうしても必要な資金。差し押さえ解除を」と強く要望しました。
その後、林さんは高橋会長からアドバイスを受けながら再度、事業計画書や返済計画、家計状況表を念入りに作成し、1月30日、機構を訪ねて差し押さえの解除を再度、申し入れました。
その資料を見た担当者は「節約している家計の状況がよく分かります」と話し、外注費の支払いと2カ月分の生活費など55万円の解除を約束。9日に差し押さえを解除することを知らせる「配当計算書」が送られてきました。
「これまで確定申告は税理士任せだった。600万円の所得で社会保険料を含めると300万円近い税金を納めていたので、これからは自主記帳を学んで納得できる申告をしたい」と話しています。
年金事務所/預金も取引先も奪う 執行停止を国に請願
まるで脅し
愛知県豊田市でメディア開発会社を経営するTさんは1月29日に都内で開かれた中小業者決起大会に参加し、厚生労働省との交渉で延滞金についての滞納処分の執行停止を求める請願書を提出しました。
「延滞金を含め、滞っている1億2000万円の社会保険料を5年間での完納を迫られている。この8年間、赤字の中で5000万円以上を納めてきたが、納付が少しでも遅れると差し押さえをすると脅され、対応はやくざよりひどい。どうか執行の停止をお願います」と懸命に訴えました。
Tさんは06年、大きな得意先の倒産をきっかけに社会保険料が期限どおりに納付できなくなりました。08年のリーマンショックが追い打ちをかけ、売り上げの落ち込みが止まらず大打撃。社会保険料の滞納額はあっという間に1億円を超えてしまいました。
資産も売却
金策に駆けずり回り、商工ローンからの借り入れや親が住んでいた家も売却して納付に充てました。
しかし、納付が少しでも遅れると豊田年金事務所から「差し押さえをする」と脅され、昨年は納付が2日遅れただけで銀行口座の預金が差し押さえられました。その上、得意先には納付能力を調査するための文書が送られ、取引が停止に。大損害を被りました。
70人いた従業員は21人にまで減り、12億円あった売り上げは大幅に減少しました。
「新しい事業に挑戦し、売り上げは4億円まで回復したが、赤字は続いているのが現状。貸してくれるのはヤミ金しかない。納めなければならないのは分かっている。でも、もう限界。こうした実態を考慮してほしい」とTさんは強く願っています。
全国商工新聞(2015年2月16日付) |