情報開示で不当な税務調査追及=大阪・貝塚
無予告の理由示せ 不服申立書を提出
事前通知もなく突然、税務調査を受け岸和田税務署に「事前通知を要しない調査の適否検討表」など情報開示を請求していた大阪・貝塚民主商工会(民商)副会長のNさん=中古重機販売=は1月19日、開示された文書のほとんどが黒塗りになっていたことから税務署長に不服申立書を提出しました。「なぜ、自分が無予告調査になったのか、明らかにさせたい」と話しています。
開示された「事前通知を要しない調査の適否検討表」。ほとんどが黒塗りです
岸和田税務署の署員がNさん宅を訪ねてきたのは2014年7月29日のこと。いきなり、ファイルを開いて「氏名、住所は?」と聞き取りを始めました。Nさんは「これから仕事に出るので時間がない」と話し、帰ってもらいました。
税対部会を開き
調査の連絡を受けた民商では税金対策部会を開いて対策を話し合い、「事前通知を文書で求める」ことを確認。Nさんは8月21日、他の役員とともに税務署に出向いて文書での事前通知を要望しました。署員は「口頭で説明している。不備があれば何度でも説明する」と答えました。
9月1日に再度「国税通則法では事前通知は署長等が行うことになっている」「なぜ事前通知をしないのか」と抗議すると、署員は「あなたは無予告調査に該当している。初めに伺ったときに説明した」と言い出しました。怒りが込み上げてきたNさんは「そんなことは何も聞いていない。なぜ、自分が無予告調査の対象なんだ」と抗議しました。
一方で署員は調査を進めるという姿勢を崩そうとせず、Nさんは役員の立ち会いの下で調査に応じました。しかし、署員は「立ち会いは認められない。退席しなければ調査はできない」と帰っていきました。
解説 税務署は違憲性を自認=税理士・浦野広明さん
岸和田税務署が事前通知をしない調査をした。通知無視の理由を明らかにしようと情報公開を求めると、税務署は「黒塗り」で「開示」をしてきた。
事前通知は適正手続きの要請である(憲法31条、13条)。国税通則法74条の9第1項は「調査は必要があるとき」に限ってできるとしている。調査官の願望で調査はできない。あくまで申告した内容に関する個別的・具体的な理由を納税者に明らかにし、納税者が理解した場合に調査ができるのである。
同法第74条の10は「調査の適正な遂行に支障を及ぼす」ときには事前通知なしで調査ができると定めているが、この規定は適正手続きに反し違憲無効である。
黒塗りは違憲な調査だということを自認したものである。
衆院大蔵委員会(当時)は1974年「税務行政の改善については、税務調査に当たり、事前に納税者に通知するとともに、調査の理由を開示すること」とする請願を採択している。
事前通知や理由開示を求めて税務署を追及することが重要である。
全国商工新聞(2015年2月2日付) |