「生活費まで奪うな」仲間と抗議して滞納処分を執行停止=広島
生活実態を無視した徴収で、財布に入っていた現金まで差し押さえられた広島民主商工会(民商)の渡辺明さん(仮名)=建築=は民商の仲間と抗議し、5月22日、国税徴収法第153条1項(滞納処分等をする財産がない時)が適用され、滞納処分の執行停止が決まりました。
渡辺さんは20年ほど前から所得税が払えなくなり、本税と加算税、延滞税を合わせて336万円が滞納になり長期にわたって分納していました。2年前に廃業を決意し、現在は息子に仕事を譲っています。
広島国税局の職員が突然、自宅を訪ねてきたのは昨年11月29日。「差押調書」を手渡し、財布を見せるように要求。「これは生活費に充てるお金」と説明しても聞き入れてもらえず、2万1530円全額が差し押えられました。
「何がなんだか訳が分からず、あれよあれよという間に財布を開けさせられ、お金を持っていかれてしまった」という渡辺さんはその後、体調を崩してしまいました。
年明けの1月9日、渡辺さんは夫婦で民商に相談。差し押さえをされてから、生活への不安を感じて体重が10キロも減った上に眠れない日々が続き、精神的にも追い込まれていることを話しました。
話を聞いた事務局員は、その日のうちに渡辺さん夫婦と一緒に広島国税局に向かいました。「滞納があるといっても、70歳を超え廃業した人から、生活費を根こそぎ奪うのはやりすぎだ。財産調査をした上で差し押さえをするはずだが、渡辺さんには財産はない。なぜ、差し押さえをしたのか」「納税緩和措置を適用すべき」と厳重に抗議。渡辺さんは滞納処分の執行停止と2万1530円の返還を求める請願書を提出しました。
対応した国税局徴収官は「守秘義務があるので立ち会われると話ができない」としながらも「納税緩和措置も含めて検討する」と答えました。
抗議から5カ月が経過し、渡辺さんから「国税局から滞納処分の執行を停止するという文章を送ってきた」とうれしい連絡が入りました。
全国商工新聞(2014年7月14日付) |