鳥取判決を力に強権的徴収とたたかう(上)
地方自治体による強権的徴収が各地で多発し、納税者の命まで奪う事例も起きています。民商の粘り強い運動により、2013年11月27日に広島高裁は、鳥取県が預金口座に振り込まれた児童手当を差し押さえて滞納していた県税に充てた処分は違法と断罪。この画期的な判決を出して以降、自治体の強権的徴収を改めさせる運動が広がりを見せています(3回連載)。
命奪う不当徴収に反撃
鳥取県が鳥取民主商工会(民商)のTさんに対して行った児童手当の差し押さえ処分は「権限を乱用した違法なもの」「正義に反する」と断罪した鳥取地裁判決(2013年3月29日)に次いで、児童手当の属性を失っておらず処分は違法とした広島高裁判決が確定。
原告弁護団に参加した高橋真一弁護士は「これまで『差押禁止債権でも預金化されれば差し押さえできる』とした最高裁判断をたてに、まかり通ってきた差押禁止財産の狙い撃ち処分を高裁として初めて『違法』と判決した」と意義を語り、これを契機に全国の徴税業務が改善されることに期待を示しました。
いま、各地の民商では、高すぎる国保や住民税に苦しむ納税者の相談が相次いでいます。
鳥取県児童手当差し押さえ事件が発生する1カ月前、熊本県宇城市では、固定資産税などの滞納処分として、市がたこ焼き移動販売車をタイヤロックし、処分された業者の6人家族が、無理心中する事件が発生。大阪市では09年、固定資産税滞納で分納していた納税者を脅し、自殺に追い込むなど、大きな社会問題になりました(図表)。
これは、小泉内閣の『三位一体改革』による個人住民税への税源移譲が進められ、自主財源としての地方税の役割が大きくなったことが背景にあります。地方自治体は徴収率の一層の向上に取り組み、自治体職員の新人事評価システムによる過大なノルマの押し付けで納税者の実情を把握しない機械的徴収が拡大しました。
鳥取児童手当差し押さえ事件は、吹き荒れる強権的税徴収のさなかで起きたものでした。(つづく)
全国商工新聞(2014年7月14日付) |