税務署が申告見直し文書 「提出義務ない」 抗議に回答=和歌山・海南民商
改悪国税通則法の実施(1月から)後、初の確定申告期を控え、税務署は「法定外文書」や「お尋ね文書」を中小業者に送付し、「取り込み」を強めています。
和歌山・海南税務署が市内の多数のミカン農家に申告内容の見直しと確認を迫る「文書」を送付した問題で、海南民商と下津町農民組合、美里農民組合の3団体は先ごろ、同税務署に「申告納税制度を踏みにじる文書を送付するな」と抗議しました。総務課長は法定外文書と認め「回答しなくても納税者に不利益はかけない」と約束しました。
申告を確認させ文書返送求める
問題の文書名は「所得税(及び消費税)の申告内容の見直し・確認について」。「(納税者が)税務署に提出している『所得税(及び消費税)の確定申告書(平成21年分から23年分)』について、確定申告書の控えや帳簿書類などにより、申告内容に誤りがないかの見直し・確認をお願いします」とした上で、「修正申告書等の提出が必要な方は、平成24年11月9日までに行うよう」求めています。
併せて、平成21〜23年分の申告内容に誤りが「有る」か「無い」かをチェックさせる欄と、「誤りの内容」を記述させる欄を設けた「見直し・確認結果表」の返送も求めています(解説参照)。
無回答を理由に不利益与えない
参加者は「申告納税制度に反する法定外文書の提出を強要するな」と抗議し、「納税者がたとえ文書を提出しない場合でも、不利益な扱いをするな」と迫りました。
応対した総務課長に、(1)税法で定められた文書ではない(2)提出義務はない(3)回答しなかったことを理由に督促の電話をしたり、税務調査の理由にするなど納税者に不利益をかけない― の3点を認めさせました。
また、海南税務署が和歌山、大阪堺の両税務署の応援を受ける広域体制で、ミカン農家の関連業者(運送業者)に事前通知無しに突然訪れ、納税者本人の留守中に家に上がり込み、私物のパソコンを開かせようとしたり、医者に行かなければいけないと言う妻を制止するなどの人権侵害的な税務調査を追及。総務課長は「そのようなことはあってはならない。たとえ広域調査でも管内で起こったことは海南税務署の責任なので指導する」と約束しました。
民商役員は「交渉の結果、運送業者への調査は是認で終了しました。運送業者は『民商は頼りになる』と入会し、知り合いの業者に民商の魅力を知らせています。機敏な税務署交渉が納税者の権利を守ることになる」と話しています。
海南税務署がミカン農家に返送を求めた問題の文書
【解説】
国税庁は改悪国税通則法の実施に伴い、税務調査の他に「行政指導」の名で、納税者から提出された申告書に計算などの「誤りがあるのではないかと思われる場合」に、「納税者に見直しを要請し、必要に応じて修正申告書の提出を要請する場合がある」としており、今後、海南税務署と同様の動きが各地で起こるかを注視する必要があります。
そもそも所得税や法人税、消費税などは、いずれも納税者自らの申告で税金が確定する申告納税制度(自主申告制度)を採用しています。申告納税制度の下で国民は納めるべき税額を自ら決める権利を持っています。
海南税務署が確定申告書をいったん提出した納税者に「申告内容の見直し・確認」文書の提出を迫ることは、申告納税制度を形骸化させるものです。法定外文書であり、提出義務はありません。
全国商工新聞(2013年1月28日付)
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