「納税の猶予」など求め税務署へ集団申請
東日本大震災の影響で、資材不足や客足が遠のくなどの被害が広がり、中小業者から悲鳴が上がっています。全国の民主商工会(民商)では、「納税の猶予」など納税緩和措置の活用を呼びかけ、励まし合いながら税務署に集団で申請しています。
資材不足の影響訴え=岐阜北
「納税の猶予」申請のいっせい提出行動を開催した岐阜北民商(今年の3.13集会での要請行動)
岐阜北民商は3月29日、消費税の確定申告書と「納税の猶予申請書」のいっせい提出行動に取り組みました。消費税の申告書は12人が、納税の猶予申請書は3人が岐阜北税務署に提出しました。
「納税の猶予」の申請では、「東日本大震災の影響で建築関連では資材が仕入れられず、仕事の見通しが立たないところが続出。中小業者の営業は一段と厳しさを増し、消費税を納めたくても納められない。厳しい実情を理解し、納税者の権利である納税の猶予を認めてほしい」と要請しました。
応対した徴収部門の統括官は、「制度の趣旨に沿って対応する」と答えました。
これまで滞納分の分割納付を続けていて、初めての消費税申告でいっせい申請に参加した会員は、「今までとは税務署の対応が違ったような気がする。震災の影響で建材の仕入れができない。売り上げ減少の見通しを訴えると毎月10万円の納付を5万円に減額できた」と喜んでいました。
学習会後20人が申請=北海道・帯広
「納税の猶予」を申請する前に、税金徴収の仕組みや申請書の書き方を学習した帯広民商
北海道・帯広民商は3月28日、消費税の集団申告と「納税の猶予」の集団申請を行い、20人が参加しました。
「納税の猶予」を申請する前に、税金徴収の仕組みや申請書の書き方を学習。「今回の震災で受けた影響もきちんと書いて実態を訴えることが重要」と、一括納付ができない理由や分納予定を自分で記入し、帯広税務署に提出しました。
帯広市を中心とした十勝地方の各業界では、東日本大震災の影響が出始めており、建築関連からは資材不足で「仕事があるのに動けない」と悲鳴が。飲食店では震災の自粛ムードに加え、先行き不安から客足が減少するなど、地域社会にとっても大きな打撃となりそうです。
民商では、納税者の権利である「納税の猶予」など納税緩和措置を活用し、「みんなで力を合わせて営業と暮らしを守ろう」と呼びかけています。
「換価の猶予」認めさす=名古屋西
消費税などの滞納を理由に売掛金を差し押さえられた愛知・名古屋西民主商工会(民商)のNさん(仮名)=家具製造関連=は3月18日、名古屋西税務署に抗議し換価の猶予を認めさせました。「これで商売が続けられる」と話しています。
Nさんは母親の病気などで医療費がかかり生活が困窮。15年前から消費税や所得税の納税が困難となり、延滞税も含めて800万円が滞納となりました。
分割して納税し、払えるときは20万円を納税したこともありましたが、滞納額を減らすことができませんでした。
税務署は、差し押さえなど強権的な処分を強行。困ったNさんは2月、税理士と一緒に民商に相談し、納税の猶予を申請しました。しかし税務署は、Nさんを何度も呼び出し、「民商は連れて来るな」「申請を取り下げないと大変なことになる」と脅迫。
不安になったNさんは3月18日、妻と前田建太民商会長ら4人で税務署に要請。特別国税徴収官が応対しました。
事前に納税緩和措置について学習したNさんは「納税者にも権利があるのに、税務署は教えてくれなかった。このままでは商売が続けられない」と毅然とした姿勢で挑みました。前田会長は「取り下げを強要するとは許せない。納税者の権利を侵害するのはやめるべきだ」と強く抗議。納税者の権利である納税緩和措置の適用を求めました。
税務署はNさんの主張を認め、換価の猶予が実現しました。
【納税の猶予(国税)・徴収猶予(地方税)】…(※税務署長・地方団体の長)は震災や風水害、盗難、家族の病気、事業の廃止または休止、事業の著しい損失などの場合に納税者の申請で、納税を猶予することができる。
【換価の猶予】…(※と同じ)は滞納者の事業継続、生活の維持を困難にするおそれがある財産の差し押さえを猶予し、または、解除することができる。
全国商工新聞(2011年4月25日付)
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