国税通則法とは何か=税理士・関本秀治
国税の基本的、共通的事項を規定 制定時削除の義務規定など復活狙う
国税通則法は昭和37年(1962年)に、それまで各個別税法に規定されていた納税義務の確定の手続き(申告、更正、決定等)、加算税や延滞税など国税についての共通する事項を一つの法律にまとめて規定すること、国税徴収法に定められていた滞納処分などについての規定を整備することなどを目的に制定されたものです。
国税通則法の制定について当時の税制調査会の答申には、「実質課税の原則」、質問検査権についての統合的な規定、一般的な記帳義務など、課税権力の強化や納税者に新たな義務を求める規定などが含まれており、全商連をはじめとする納税者団体や学界、実務界などの強い反対運動で、問題のある5項目を除き制定されました。
その後、審査請求を審査する協議団制度が「同じ穴のムジナ」という批判に対応するため、新たに国税庁の付属機関として国税不服審判所を設け、行政不服審査法の適用をほぼ全面的に除外する「改正」が行われるなどしています。
右のような経緯から見て国税通則法は、大きな欠陥を持つものではありますが、国税についての基本的事項および共通的事項を定めた法律であるといえます。
したがって、その中には申告納税制度(16条)、更正・決定等の要件としての調査の必要性(24〜26条)、税額が過大であった場合の更正の請求(23条)、納税が困難である場合の納税の猶予(46〜48条)など、納税者にとって活用できる規定も盛り込まれています。
2011年度「税制改正大綱」は、「納税者権利憲章」を納税環境整備の一部に矮小化しているだけでなく、記帳義務の拡大、調査の事前通知の適用除外規定、帳簿書類などの提示と預かり(領置権)規定の創設、理由付記の差別的取り扱い、罰則の強化などが盛り込まれています。いずれも昭和37年の国税通則法制定の際に、納税者や学界、実務界の強い反対で立法できなかった積み残し部分です。それを「納税者権利憲章」という隠れみのを使って一挙に立法しようという財務官僚、国税当局の野望が露骨に示されたものとなっています。
|