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自宅の差押さえ解除と緊急融資で営業再建
大阪・泉南民主商工会(民商)会員のKさん=食品加工=はこのほど、税務署と市による自宅の差し押さえを解除させ、緊急保証で融資を実現。「あきらめずに頑張ってよかった。これで商売が続けられる」と喜んでいます。「無益な差押の禁止(国税徴収法第48条)」などの法令違反を追及し、納税緩和措置を活用して仲間と力を合わせた成果です。
05年の売り上げが5000万円を超え、07年分の消費税申告の計算が本則課税になるなど、約200万円の国税が発生したKさん。国民健康保険料などの地方税も跳ね上がりました。
(注)国税徴収法第48条 (超過差押及び無益な差押の禁止)
国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押えることができない。
2 差し押えることができる財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先立つ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額を超える見込がないときは、その財産は、差し押えることができない。
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滞納で民商検索
しかし、06年からは売り上げが激減。滞納分を分納で払いましたが、昨年10月末までに国税約400万円、地方税75万円を滞納しました。
泉佐野税務署は昨年12月、11、12月分で約400万円の売掛金を差し押さえ。困ったKさんは、インターネットで「税金」「滞納」などの文字で検索して泉南民商を知り、すぐに相談。民商と一緒に税務署へ出向くとともに、従業員8人が嘆願書で訴えたこともあり、年末ぎりぎりに差し押さえを解除させました(本紙1月12日号で仮名にて詳報)。
無事に年を越せたKさんは今年1月、商売と生活を立て直そうと保証協会へ緊急融資の保証を申し込みに行きました。しかし、3月になって自宅が税務署に差し押さえられていることを理由に断られました。
税務署と交渉
差し押さえを解除しなければ融資が受けられないことから、Kさんと民商のFさん=喫茶店=ら3人は、税務署と交渉。換価しても住宅ローンが優先され、差し押さえが国税徴収法第48条の2項「無益な差押の禁止」(注)に違反すると指摘し、差し押さえ解除を求めました。
税務署は当初、「滞納分を全額納付しない限り解除しない」と強硬でしたが、Kさんの要望書を検討すると約束。後日、「民商が来たからではない」と前置きしつつも、「『無益な差押』に該当するので、差し押さえを解除する」と回答。Kさんの要望を認めました。
超過差押では
市に対しては、滞納税額の150倍もの資産を差し押さえることは国税徴収法第48条の1項「超過差押」に違反すると交渉。税務署よりもかたくなな態度をとっていましたが、抵当物件を提示したことや、日本共産党の中井良介市会議員の努力もあり、差し押さえを解除させることができました。
銀行の態度変化
銀行交渉では当初、「保証協会の保証があっても融資しない。他の銀行へ申し込んで」という態度。緊急保証の趣旨を守れと追及した日本共産党の仁比聡平参院議員の国会質問を示し、「これは貸し渋りになる」と迫ると銀行は態度を一変し、「融資を引き受ける」と回答しました。
常任理事会で
6月10日、民商常任理事会が開催され、Kさんの要求実現報告が行われました。
劇的にもこの日に保証協会から「信用保証決定のお知らせ」が届いたKさん。出席していた25人の常任理事らの温かい拍手を受けながら、「すべてがうまくいき、皆さんに感謝。くじけそうになった時に、いつも励ましてくれた妻にも礼をいいたい。困難な時は一人では駄目だと実感した。これからも頑張りたい」と笑顔満面でした。妻の陽子さんも「これは私たちだけの問題ではない。泉南民商の奮闘が全国の励ましになればうれしい」と胸を張りました。
「この成果は毎月行う大増税反対泉南地域連絡会の宣伝行動など、日ごろの運動の積み重ねが地域に浸透し、結びついて生まれたものだ。全会員でこの喜びを分かち合いたい」と話すFさん。民商の若きホープの誕生に目を細めました。
◆解説 「超過差押」と「無益な差押」 角谷啓一税理士
国税徴収法(以下、徴収法)第48条は1項で、滞納税金の額を必要以上に上回るような財産の差し押さえは、「超過差押」に当たるとして禁止しています。
また、2項では逆に、その財産自体に価値がない、価値があったとしてもその財産上に滞納税金に優先する権利(抵当権等)が設定されていて、その財産から滞納税金の徴収がまったく見込めないような場合には、「無益な差押」に当たるとして、これも禁止しています。
泉南民商のKさんの例は、徴収法第48条2項の「無益な差押」に当たるとし、「解除」されたものです。
おそらく自宅(土地・建物)の評価額を明らかに上回る担保権(抵当権等)付きの銀行等の借入残があり、その抵当権等が滞納税金の発生日(正確には「法定納期限等」といいます)以前に設定されたものであったのでしょう。
税務署は(1)その抵当権等は滞納税金に優先する(2)その抵当権で担保される銀行の借入残は自宅の評価額を上回っている(3)したがって、「自宅を処分(公売)しても、まったく徴収が見込めない」=と結論づけ、「無益な差押」に当たると判断したのでしょう。
「超過差押」にしても「無益な差押」にしても、行政側に滞納処分の迅速性が求められ、差し押さえ自体に違法性はないと解されていますが、後日、超過又は無益な差押であることが判明すれば「違法な差し押さえ」として速やかに「差押解除」されなければならないとされています。
超過または無益であるかの判断は「差し押さえをしようとする」時点の対象財産の価額、滞納税金の額及び担保権付きの債権額などを比較・検討します。その結果「一見して、明らかに」超過または無益な差押に該当する場合に、差押解除の対象とされます。
それは、滞納処分を執行する行政側が、財産に価値があろうがなかろうが、職権を乱用して嫌がらせ的に、むやみやたらに差し押さえを乱発することを禁止したもので、納税者やその財産上の権利者を保護するための規定といえます。
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