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盛岡 770万円の滞納処分停止かちとる
仙台国税局態度を一変 「差押解除通知書」も
岩手・盛岡民主商工会(民商)の山田由美さん(仮名)=食品製造・卸=は先ごろ、仙台国税局から延滞税・加算税約770万円の「滞納処分の停止通知書」などを受け取りました。10年以上も滞納した税金の支払いに悩み続けていましたが「これで安心して仕事が続けられる。商売は厳しいけれど、頑張っていきたい」と喜んでいます。
安心して仕事続けられる
山田さんは約10年前から不況や価格破壊による影響で、毎年100万円を超える消費税の支払いが困難に。その後、盛岡税務署と話し合い、本税の滞納分として毎月20万円を納めてきました。
ところが、仙台国税局の職員は昨年9月、山田さんの会社を訪れ、毎月100万円の納入を迫りました。それはできないことを伝えると、「年内に残りの本税分(430万円)を納入すれば、今後の納入については相談に乗る」と交換条件を提示。山田さんは、知り合いから借り入れをして昨年12月までに本税分をすべて納入しました。
しかし、仙台国税局は今年1月、「延滞税・加算税の分として月の売り上げの5%(約30万円)以上を納入せよ」と要求。山田さんは、民商に相談し、「納税の免除申請書」を送付するとともに、2月の全国中小業者決起集会で国税庁交渉に参加し、「これ以上の納入は無理。生きる道を与えてほしい」と訴えました。
後日、山田さんの会社を訪れた仙台国税局の担当者は態度が一変。「最近の消費税本税(48万円)を分納にし、残りの延滞税などは執行停止(注)にしたい」と話しました。
「滞納処分の停止通知書」と「差押解除通知書(不動産敷金の返還請求権の差し押さえ)」を受け取った山田さんは「民商に相談しなければ、今も税金の支払いに苦労していたと思います。感謝の気持ちでいっぱい」と話しています。
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(注)「滞納処分の執行停止」
税金滞納者に差し押さえなどの滞納処分が行える財産がない、あるいは滞納処分が納税者の生活を著しく苦しくする恐れがあるときは、税務署長は滞納処分の執行停止をすることができると「国税徴収法第153条」に定めています。滞納処分の執行停止が3年間継続したときは、納税義務が消滅します。
現状把握を十分に行い納税者の実情に即した対応図れ
<停止通知で解説>
角谷啓一税理士
徴収行政を行う側として、滞納事案にどのような方向性をもって対処するかは、基本的にはその納税者(滞納者)がおかれている現況によって判断します。納税者の事業や生活の現状、財産の状況などを調査し、納税の誠意の有無などを絡ませながら、分納制度の適用方向か、滞納処分の停止方向か、強制徴収の方向かの処理方針を選択します。ですから「滞納者の現況把握」は、滞納整理の基本中の基本になります。
盛岡民商の山田さんの場合、国税局の徴収担当官とのやり取りの段階では、十分な現況把握をしてこなかったのではないかと思います。
国税庁交渉に参加した山田さんは、庁の幹部に対して自分の置かれている実情を訴え、徴収行政側として初めて山田さんの「現況把握」が行われたのではないかと思います。「滞納処分の執行停止に関する取扱について」という国税庁通達の中に「事業継続事案」の停止の取扱規定があります。山田さんのリアルな訴えによって、通達に該当することが分かり、国税庁が現場へ「適切な処理」を指示したものと思われます。
したがって、山田さんの事例は、徴収現場である国税局の段階でもともと「適切に処理」されるべき事案だったのです。滞納者個々の実情調査・現状把握を十分行い、納税者の実情に即応した適切な滞納整理を行うという徴収行政の原理・原則を徴収現場の隅々まで徹底することが求められます。
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