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税金を滞納、店を差押えられた日本そば屋さん=大阪
民商で「納税猶予」手続き、月5万円の分納で解決
のき並み、売上が落ちているにもかかわらず、税務署などの取立ては強っています。各地の民商では「納税緩和措置」という法律の制度を活用して、多くの苦難を解決しています。そのなかの一例です。
「著しい損失」を認め、差押え解除・延滞税も割引に
不況の影響で消費税や所得税を滞納するようになり、延滞税も含めて127万円。毎月のように住吉税務署へ頭を下げ分納を続けてきました。
しかし昨年5月、税務署はいきなり店舗を差し押さえ。悩んだ末、民商の仲間に相談し、税務署に「納税の猶予」を申請。店を手放すことは、従業員を路頭に迷わすことになるのでとてもできないと、粘り強く訴えました。
ついに税務署が実態調査で店を訪ねてきましたが、仲間の立ち会いを理由に、暴言を吐いてすぐ帰ってしまいました。私はすぐに税務署へ出向き、「私の納税の猶予を認められなくて、いったいどういう人が認められるのですか」と訴え、再度実地調査に。
6カ月がたち、「著しい損失」(46条2項4号)による「納税の猶予」の通知が届きました。毎月5万円の納付で、延滞税は年4・5%、差し押さえも解除に。みんなで話し合って、かちとれたと思っています。
泣かされている業者は権利として活用できる
埼玉県商工団体連合会税金対策部長・米田務さん
払えない税金に対して納税の猶予などの納税緩和措置を活用したたたかいが全国で燎原の火のごとく広がっています。
それは全国の民商が、たとえ滞納者でもあっても「納税者として権利があること」を学び、運動で生かしたこと、また憲法25条・29条を力に法律・行政文書などを駆使し「納税者の事業の継続や生活の維持が確保されていること」を主張し、徴収当局と対峙してきたことにあると思います。
滞納した税金を、安易に分割分納で「お願い」するだけでは根本は解決しません。高い延滞税がのしかかってきます。「お願い」ではなく納税の猶予などの「権利を主張」することによって、今なぜ税金が払えないのか、生業を維持する上で税負担がいかに重いかを告発できます。それが差し押さえをちらつかせる強権的な徴収をやめさせる最大の武器になります。
一般の納税者は相変わらず生存権・財産権を無視した国税・地方税の滞納整理・差し押さえで泣かされています。この間の運動で蓄積した成果と行政文書の特集記事は大いに運動に生かせます。
憲法の「応能負担」原則は徴収面まで及ぶ
北野弘久日本大学名誉教授
憲法25条は人びとの「健康で文化的な最低生活」を保障している。この25条を含めて憲法は税制のあり方として「応能負担原則」(憲法13、14、25、29条等)を要請。この憲法の応能負担原則は、課税面のみならず、徴収面にも及ぶ。
課税面では最低生活費非課税の原則、一定の生存権的財産の非課税・軽課税(利用価格×低税率)の原則を要請する。徴収面では人びとの生存権を確保するために、差押禁止財産、条件付差押禁止財産、納税の猶予、換価の猶予、滞納処分の停止などの制度が現行税制の下でも導入されている。ここで問題になっている納税の猶予が憲法上の要請であることを銘記することが大切だ。
消費税は間接税とされているが、多くの中小業者にとっては消費税は転嫁が困難であって業者負担となっている(間接税の直接税化)。
つまり多くの中小業者にとっては消費税は税法上の納税義務者であると同時に、現実の税負担者となっている。この点に関連して消費税の滞納増大の事実に注意する必要がある。巷間いわれる「益税」ではなく、むしろ「損税」となっているわけである。
現行税制は、災害、病傷、事業の休廃止、事業の著しい損失、以上に類する事情があった場合には納税の猶予をすると規定しているが(国税通則法46条2項)、憲法25条等の要請からいって、ケースバイケースで納税者の諸事情にフレキシブル(柔軟)に対応すべきだ。
納税の猶予を承認するかどうかが課税庁の裁量に委ねられているわけではない。納税者の諸事情を総合勘案して、一時に納税することが困難と認められる場合には、課税庁はむしろ納税の猶予を積極的に承認すべき職務上の法的義務を負うている。承認しないことの方が職務怠慢、不作為の違法と言わねばならない。
差し押さえ処分を強行したところで果たして、公売で売れるのかどうか、またいくらで売れるかは不明。多くの場合、当初予想した「換価」が得られないのが通例である。
それよりも納税者の諸事情に適合した納税の猶予を行い、納税者から実際に分割で納税してもらった方が、税務行政としても効率的であり、得策である。もし、納税の猶予の承認をした後に、正当な理由により納税が困難になった場合には、さらに猶予期間を延期する配慮を行うべきだ。
国会答弁や国税庁回答を宝として生かす
浦野広明立正大学教授
日本国憲法は「租税法律主義」(第30条、第84条)を定め、国民は法律の定めるところによらなければ、租税を賦課・徴収されることはありません。
憲法41条は「国会は国権の最高機関である」と述べています。そういう点で国会での閣僚や国税庁の答弁は、税法の解釈、運用の原点ということができます。
税務現場の公務員は憲法尊重擁護義務(99条)に基づき、閣僚や国税庁の答弁を守らなければなりません。
国会答弁や国税庁交渉での回答は、国民・納税者の権利を前進させるという点で、全国の皆さんのたたかいの宝といえるものです。
憲法を生かす精神で大いに活用していこうではありませんか。
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