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国税庁「滞納整理における留意事項」角谷啓一税理士が解説
抜き打ち差し押さえ処分の禁止など支持
「滞納整理における留意事項について」という国税庁の文書が、このほど明らかになりました。税務署による強権的な滞納処分の実態を追及(本紙11月10日号)した共産党の佐々木憲昭衆院議員が国税庁から入手したもの。抜き打ちの差し押さえ処分を禁止し、事前に文書での差し押さえ予告を義務づけるなど、今後に活用できる多くの内容を含んでいます。
◇ ◇
この文書は平成13(01)年6月、国税庁徴収課長が各国税局徴収部長にあてた「通知」の形をとっていますが、「滞納処分にあたって、担当者が留意すべき事項をまとめたものであるので、周知徹底されたい」と、実質的に徴収職員を拘束する「通達」ともいえるもの。ポイントを紹介すると―
▽滞納者の実情把握が先決
「滞納整理の基本的な心構え」として、「徴収職員に大きな権限が与えられているが、その権限の行使は、滞納者の生活や事業に重大な影響を及ぼすことから、滞納者の実情等を考慮し、応接中の言動等にも十分配慮し、適正・適法に実施する」と、指示しています。
これは、担当者が「問答無用」「抜き打ち的」に差し押さえ処分を行うことを戒め、まず紳士的に滞納者の実情等を十分把握し、その上で、やむを得ない場合に限って差し押さえ処分を行うということを指示したものとして評価できます。
▽差押実施の前に「差し押さえ予告」を
その上で、差し押さえを行う前に、「倒産など緊急事案を除いて、差し押さえ予告を原則として配達証明便等により文書で行う」としています。差し押さえ予告は、法律上の文書ではないので、「事後の処理展開を速やかに図るため」と、あえてその目的を述べています。
これは(1)倒産事案や財産隠匿の恐れがあるなどの緊急事案は別にして、「問答無用」「抜き打ち的」な差し押さえはトラブルのもとになり、事後の処理が長引き、行政上も得策でない、との判断から、あえて「差し押さえ予告」を事前に送付する(2)その結果、滞納者との接触を図り、実情などを十分調査・把握するとともに、納付を促し、換価の猶予(徴151)などの分納方向の展開を図るか、差し押さえ処分に踏み切るか、その見極めを行うことを徴収現場に指示したものです。
なかでも、滞納者の生計、事業の維持に重大な影響を及ぼすような財産を差し押さえる場合には、「署長への事前相談」を含め、さらに慎重な対処を求めています。
一方、この「差し押さえ予告」は、滞納者がこの通知を見落としたり、甘く見て「来署指定日」を過ぎてしまうと、逆に「直ちに差し押さえ処分」を行う口実にされる危険性もあるので要注意です。この「差し押さえ予告」を配達証明便で送達するというのは、そのためです。
▽「無差別」の調査は違法
滞納整理における質問および検査(徴141)は、任意調査であるので滞納者の理解と協力を得て行うことを指示し、その範囲も「必要と認められる」ものに限られるとしています。徴収実務では、滞納者の預金照会などを銀行に対して「あてずっぽう」「無差別的」に行うことが多々ありますが、これを禁止するということです。
取引先や銀行など事業などに重大な影響を及ぼす調査などにも言及し、「滞納者の納付意思、営業の状況等を勘案して行う」ことを指示。例えば納税の誠意を示している場合は、調査を一時見合わせるなど、慎重に行うことを求めています。
※徴=国税徴収法
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