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地域 まちづくり
 

郷土史研究に貢献 経営と古文書解読を両立=青森・上十三

有限会社山崎建設・山崎栄作さん

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有限会社山崎建設、青森県十和田市大字三本木字北平146の1

 「地域を知ることは地域を切り開くことにつながる」-。そんな思いで会社経営と地方史の研究を続けている民商会員がいます。青森県十和田市で有限会社山崎建設を経営する山崎栄作さん(71)。青森県商工団体連合会会長で、全国商工団体連合会常任理事も務めています。十和田市の文化財保護協会前会長でもあり、その研究は大学の学長も絶賛するほどで、出版した著作は13冊に上ります。

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 「山崎さんの研究の視野は本当に広い。十和田という郷土を切り開いてきた人ですよ」。十和田市文化財保護協会の元副会長で山崎さんとともに活動してきた川上権三郎さん(87)の言葉です。
 元小学校校長で現在、県明るい選挙推進協議会副会長を務める川上さんは、山崎さんとは25年の付き合い。「地域の歴史を調べている時に山崎さんと知り合いました。すごい人ですよ」

13冊の本を出版内閣府が購入も

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「神山茂賞」を受賞した山崎さん(右)

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(左)これまで山崎さんが著してきた本、(右)最初の著作「昔の三本木平コ」

 すごい研究─。それを実感したのは、十和田市三本木にある山崎建設を訪ねたときでした。広い敷地内に建てられた60平方bの書斎。高さ8段の書架が所狭しと並べられ、蔵書数は約2万冊。古文書や見慣れない資料がちょっと乱雑に詰め込まれています。
 著作を並べてもらうと、『昔の三本木平コ』『陸奥紀行』『木村謙次集』『東遊奇勝』…。
 いずれも自費出版ですが、本を推薦する序文には、北大名誉教授、国立公文書館長、元東大史料編纂所員、元青森大学学長、慶応大学名誉教授など、一流の研究者が名前を連ねています。
 古文書、資料などを発掘・収集・研究し、崩し字で書かれた原資料の文字を活字体などに直し一般に読める形式(翻刻)にした山崎さんの一連の著作。序文には「私も資料の探索に打ち込む方だが、山崎氏には及ばない。脱帽するばかりである」「これまで想像の域を出なかった空白部分が明らかにされた」「これだけの資料をまとめるのにどれだけ足を使い苦労したか」などの賛辞が寄せられています。
 史料探しは全国各地に及んでいます。国会図書館はじめ各地の図書館、東大史料編纂所…。関わりある人の生家なども訪ね歩き、研究者と交流し、独自のネットワークも築き上げてきました。
 その出発点は「地元のことを知ることで地域に誇りが持てる」という思いです。三本木町(現十和田市)の旧家に生まれた山崎さん。「幼いころ祖母から地域の歴史の話を聞かされてきたからでしょうか」と振り返ります。
 しかしその人生は波乱万丈でした。地元の高校に入学したものの、家庭内の問題もあって中退。大阪市内の建設専門学校(夜間)に入学します。そこで日本共産党に出会い、入党。学校を終え帰郷した後、日本共産党上十三地区委員会で9年間、専従職員として働きます。最初の著作『昔の三本木の平コ』-青森県南部地方を訪れた吉田松陰、北海道と名付けた探検家・松浦武四郎、全国を測量し正確な日本地図を作った伊能忠敬などの紀行文をまとめたもの-を出版したのは、その最中の30歳のときでした。
 結婚、長男の誕生を機に専従をやめ「山崎ブロック工業」を開業(一人親方、後の有限会社山崎建設)。以来、連続的に本を出版していきます。
 83年には郷土史の研究に貢献したとして十和田市文化奨励賞を受賞。86年に出版した『木村謙次集』は、内閣府が5冊購入を申し込むなど、政府も注目しました。それは北方探検家近藤重蔵の秘書役だった医師・木村謙次が、択捉島に初めて「日本領の碑」を立てた近藤一行の10カ月に及ぶ行動を詳細に記録したもので、北方領土問題の原資料として、大きな反響を呼びました。
 徳川幕府の奥医師であった渋江長伯による江戸から蝦夷地・厚岸までの往復181日間の調査記録を翻刻した『東遊奇勝』。215年前の北海道の様子がそのスケッチとともに克明にわかる「絵による歴史本」として高く評価され、06年度の「神山茂賞」(注)に選ばれました。
 09年には十和田市文化財保護協会会長に就任(14年4月退任)。市内で発掘された縄文晩期の「壺型土器」が、74年に国の重要文化財に指定されたのも、保護協会の委員だった山崎さんの追跡調査があったからでした。

弱さがあるから人間は発展する
 今も朝4時に起きて資料に目を通し、研究する山崎さん。「人間は弱さも強さもある。弱さもあるから、発見もあるし、発展もある。強さだけを見ると本当の教訓が引き出せない」。史実に向き合う時、一番大事にしていることです。
 それは民商の活動にも表れています。
 税金、申告のことを知りたいと87年、上十三民商に入会。90年に同民商会長に就任。退任した06年には青森県連の会長に選ばれます。
 その間、忘れられない出来事がありました。十数年前、会員2人が自殺したのです。「会議にも出席せず、訪ねる人もいなかった。こんなことは繰り返していはいけない」と、全会員訪問を提起。以来、県内各民商が全会員訪問を続けています。
 会員に心を寄せる活動とともに山崎さんは、県内のさまざまな民主的なたたかいの記録を集めてきました。
 「48年には農民を中心とした重税反対闘争で、弘前税務署前に5000人が集まったこともある。こうした記録を掘り起こすこともたたかいを励ますものなんです」
 戦争法に反対し、週1日、ハンドマイクを握り十和田市内での訴えも継続。自らの研究と経営を重ねて、こう言いました。
 「地域の歴史を学ぶと、必ずそこには地域を切り開いてきた歴史の先覚者がいる。地域を知るとは、そうした人たちの生き方を学ぶことだ。たたかってこそ、地域は切り開ける。発展する民商はたたかう民商。研究と民商の活動は深いところで結びついているのです」

全国商工新聞(2015年7月6日付)
 

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