西日本豪雨 被災した会員を見舞い励まし
不安や要望聞き取る 全商連三役ら被災地を訪問 泥出し片づけに汗
床下の泥をかきだす全商連の藤川隆広副会長(左)と加賀茂副会長
全国商工団体連合会(全商連)の藤川隆広副会長は14、15の両日、西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山、広島両県に入り、お見舞いを手渡すとともに被害実態を調査。被災した会員を励まし、業者の不安や要望を聞き取りました。広島県内の行動には加賀茂副会長も加わり、猛暑の中、民主商工会(民商)の仲間とともに被災した会員の自宅の泥出しや災害ごみの片づけに汗を流しました。
業者ならでは 機材持ち込み
15日は、全商連の藤川、加賀両副会長、池田法仁常任理事、広島県商工団体連合会(県連)の居神友久事務局長が広島安芸民商の役員らとともに、広島市内でも大きな被害を受けた坂町を流れる総頭川の流域を訪れました。
目に飛び込んできたのは、2メートルを超える岩や折り重なった木の幹、土や砂で押しつぶされ傾いた家、砂に覆われてしまった自動車…。上流から流れてきた土砂や木々が、橋に引っ掛かり、せき止められたことで氾濫し、大きな被害を生み出しました。
周囲に土砂や流木が蓄積する総頭川
その川から700メートルほどの距離で床上浸水などの被害に遭ったのが広島安芸民商会員で整体業を営むNさん。藤川副会長らは支援に駆け付けた民商役員らとともに午前10時過ぎから午後3時過ぎまで、水に漬かった畳を上げ、災害ごみを搬出しました。
作業で使ったのこぎり、高圧洗浄機、400キロの土などを運べるクローラー運搬車は民商会員が支援のために持ち込んだもの。「業者はすごいね」の声も上がりました。
外した床板を下に挟んで重いタンスを動かしたり、床板が曲がらないように陰干ししたりしたのも業者の知恵。いったん取り除いた土も、流入した泥ではなく、元々敷き詰められていた土が水を含んだものであると、加賀副会長のアドバイスで判明しました。
入口に水がたまったままになっている美容室
この後、土砂が住居兼美容室に入り込んだ会員のSさんを激励。民商の応援やボランティアの協力で泥などをかきだしてはいるものの「入口の水をはき出してもすぐ水がたまる。ここで美容室を続けていきたいけど…。別の場所での再開も考えている」と、不安を口にしました。
実態把握し要求運動を
岡山県連の宮木寛治副会長(中央)にお見舞いを手渡す全商連の藤川副会長
堤防の決壊で大きな被害を受けた倉敷市真備町
前日の14日、藤川副会長は中山眞常任理事とともに岡山・総社民商を訪問。岡山県連の宮木寛治副会長にお見舞い(目録)を手渡しました。
訪れた倉敷市真備町は、小田川とその支流である末政川などの堤防決壊で町の3割が水没。大きな被害を受けた地域です。
一瞬にして大量の水が襲い、避難が間に合わず、天井を壊して屋根の上まで逃げた人も。商品や道具が水に漬かり全滅するなど、業者に深刻な影響を与えました。
総社民商の神社恵子副会長から、自宅、店舗、ビニールハウス、モモ畑、ブドウ畑などが水没した会員6人の被災状況を聞き取り。罹災証明書を取得するため、被災状況が分かる写真を残すことの重要性を指摘するとともに、水害に対応する県民共済などの契約内容を調べるよう呼び掛けることも大切と強調しました。
被災者からは「店舗など経営基盤をどう立て直すか」「仮店舗の確保」「資金繰り」などの不安や要望が出され、また、6日に起きた朝日アルミ産業の工場の大爆発に関して、爆風で破損した家屋や工場について「損害賠償できるか」という声も上がっています。
藤川副会長らは「同じ豪雨水害でも、地域によって被害は異なる。実態を調べるとともに、全商連が積み上げてきた支援策を力に、被災者の救済・支援に全力を挙げたい」と話していました。
県内の漁業も被害深刻 実態まとめ交渉へ
流木が大量に流れ込んだ走島港
西日本豪雨による水産関係の被害が広がる中で、漁業関係者から広島・福山民商に対し「国・県として広島県の漁業被害の実態を正確に調べ、必要な対策を取るように要望してほしい」との声が寄せられています。
訴えてきたのは、広島県福山市の鞆の浦や走島港などを拠点に漁をしている漁業者。長年の商工新聞読者でもあります。
7〜9月はチリメンジャコ漁の最盛期ですが、西日本豪雨によって、鞆の浦漁港や走島港には、泥や家財道具、ガスボンベ、流木などが流れ込み、海の色も茶色に濁った状態が続いています。流木は海一面を覆い、魚群探知機も機能せず、網が破れる危険性もあるため、船も沖に出ることさえ控えている状態です。
港内に入り込んだ流木を回収する漁業者
港に流れ込んだ流木は、漁業者で回収しているものの、費用は漁業者の自己負担。タイ、シタビラメ、マナガツオ、タチウオなどが取れる豊かな漁場だけに「漁場や魚がどうなっているのか心配」と不安の声も広がっています。
農林水産省が17日に発表した「水産関係の被害状況」では、「10府県において、漁船、定置網、養殖施設等に被害が発生」「7県において31漁港で港内への流木の流入等の被害が発生」としていますが、この中には広島県の名前すら入っていません。
民商に訴えてきた漁業者は「鞆の浦、走島でも被害は起きている。海の底がどうなっているのかを含めて、きちんと調査してほしい」と話しています。
広島・福山民商では、漁業者の声を受け止め、国・県に対する要望書をまとめ、被害の実態調査と被害補償などを含めた対応を迫ることにしています。
負担軽減制度活用を
医療や介護の利用料を減免
厚生労働省は11日、西日本豪雨の被災8府県に対し、医療費や介護サービスの一部負担金・利用料を免除する事務連絡を出しました。
対象となるのは、高知、鳥取、広島、岡山、京都、兵庫、愛媛、岐阜の8府県の災害救助法が適用された国保加入の被災者。
住宅半壊・床上浸水やこれに準じる被災をしたと申告した医療・介護の被保険者については、一部負担金(病院窓口で負担)・利用料の支払いを猶予します。
自宅半壊でも仮設に入居可
内閣府は17日、西日本豪雨で被災した11府県に対し、自宅が半壊と判定された被災者でも、流入した土砂などによって、自らの住宅に入居できない場合、仮設住宅に入居可能、とする事務連絡をしました。
自治体が民間賃貸住宅を借り上げる、いわゆる「みなし仮設住宅」については、家賃のほか、敷金、礼金、共益費、仲介手数料も補助対象とするとしています。
住宅被害認定改定し迅速化
内閣府は7月12日、罹災証明に際して必要となる被災した住家の調査方法・判定方法の改定を発表しました。
調査方法は改定したばかりですが、西日本豪雨によって、水害に係る調査を効率的、迅速に実施するため、下の図のように改めました。
実情に応じた融資を求める
中小企業庁と財務省は7月6日、西日本豪雨災害に関し、日本政策金融公庫(政策公庫)、商工組合中央金庫(商工中金)、全国信用保証協会連合会に対し、文書で「当面する貸付業務・保証業務について」と題する要請をしました。
要請は災害によって、中小企業・小規模事業者の資金繰りに重大な支障が生じないよう、「窓口における親身な対応」「適時適切な貸出・保証」「担保徴求の弾力化」「既往債務についての返済猶予等の条件変更」について、「個別企業の実情に応じて十分な対応に努めるよう」求めています。
全国商工新聞(2018年7月30日付)
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