- Q1.社会保障と税の「一体改革」ってなんですか?
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A.社会保障を口実に、際限のない消費税増税を国民に押し付け
政府の「改革」案は、「2015年度までに消費税率を10%にする」ことを前提に、「将来的に社会保障にかかる公費全体について、消費税収を主たる財源にする」と、消費税を社会保障の目的税にすることを明記しています。
肝心の改革の中身はといえば、社会保障を切り捨てるものばかりです。「社会保障をよくする」との口実で実施をもくろんでいる消費税の5%増税のうち、社会保障費として使われるのは実質1%のみ。その他の4%は財政赤字の補てんや高齢化に伴う自然増、年金財源の不足分などに充てられます。「一体改革」に関する集中検討会議の中でも「これでは国民に説明ができない」との声が上がったほどです(図1)。また将来的に消費税で社会保障を成り立たせるといいます。しかし、2015年度に必要な社会保障にかかる公費は47・4兆円(政府試算)であり、仮に消費税を10%に上げて25兆円の税収を見込んだとしても到底足りません。そうなれば、社会保障を削減するか、「消費税を17%にするしかない」(経済同友会)ことになります。
- Q2.低所得者に配慮したと言うが、改革で社会保障はよくなるの?
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A.国民への負担は重くし、国の責任を最低限の「救貧対策」だけに
国はこれまで、社会保障抑制政策を続け、02年〜08年度までの7年間で1兆6200億円を削減しました。医療や介護・福祉などで深刻な状況が広がっています。
深刻さを増す貧困・格差の実態を踏まえ、「改革」案は弱者対策などを打ち出しています。しかし、「社会保障は国民の助け合い、自助や共助だ」と強調。社会保障にかかわる国の責任を投げ捨て、国民に負担を求めています(表1)。弱者対策も予算の重点化・効率化でしぼり込み、"共助"の名で社会保障を救貧対策に変質しかねないものです。
- Q3.「改革」案は国保の財政基盤を強化すると言っていますが?
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A.国保料(税)の引き上げや、減免制度の後退が懸念
「改革」案は「財政基盤を安定化させる」という触れ込みで、国保の財政運営を都道府県単位化(広域化)するとしています。
しかし都道府県単位化の目的は、この間減らされ続けてきた国庫負担金をさらに減額し、国の社会保障への責任を放棄するというものです。
国保運営が都道府県単位になった場合、国保料(税)が高い自治体の水準に合わせた引き上げがされることや、自治体独自の優れた減免制度の廃止などが懸念されます。
東京23区では広域化を前提として、国保料の算定方式が「住民税方式」から「旧ただし書き方式」へと変更され、大幅に保険料が上昇しました。
「改革」案は、憲法の理念を否定し、「支え合い」の名で際限のない国保料(税)引き上げに道を開きかねません(グラフ1)。
- Q4.復興や経済再生のためにも増税が必要?
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A.消費税増税は景気後退を招き、復興にとってもマイナス
消費税が増税されると物の値段が上がり、消費者は買い物を控えます。97年に消費税率が5%に引き上げられた時は、当時の医療改悪などもあって国民負担増は9兆円にも。その後の景気後退を招きました。消費税10%では、さらなる景気悪化が心配されます。そして、被災地の産業復興にも悪影響を与え、何より被災者の生活再建の大きな障害にもなります(グラフ2)。
そもそも、復興や社会保障の財源を口実に消費税を増税しようとするのは日本経団連の「復興・創生マスタープラン」など財界の要請によるものです。
また、自民党は11年度までに消費税増税法案の成立を規定した「09年度税制改正法付則104条」を取り上げ、「スケジュールの変更は認められない」と政府に消費税増税の実行を迫っています。
- Q5.増税しないと財源が足りない?
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A.税金の無駄遣いを改め、応能負担で財源確保
政府は、社会保障や震災復興の財源確保として消費税増税を狙っています。しかし、消費税を増税しなくても財源はあります。
一つは大企業・大資産家の優遇税制をただすこと。これで7兆円の財源が生まれます。
例えば資本金10億円以上の大企業の法人税率を1997年の水準37・5%(現在は30%)に戻すだけで4兆円の財源が、証券優遇税制の廃止などで3兆円の財源が確保できます。
また、税金の無駄遣いをただせば5兆円の財源を確保できます。
例えば5兆円近い軍事費です。「思いやり」予算やグアム移転費など米軍支援の経費は3200億円(11年度予算)に上り、憲法9条と矛盾する海外派兵の経費削減と合わせれば1兆円になります。
不要不急の大型公共事業を中止・延期するだけで1・9兆円、原発推進補助金の見直しや政党助成金(年間320億円)の廃止などで1・5兆円の財源が生み出せます。消費税を増税する必要はありません(表2)。震災復興の財源は、300兆円を超える大企業の内部留保を活用すべきです。そのわずか4・7%で復興国債引受額の15兆円を確保できます。また、90年に湾岸戦争支援財源として設けられた「法人臨時特別税(2・5%)」のような付加税も検討すべきです。
弱者や被災者に負担が重くのしかかる消費税ではなく、差別のない応能負担原則で財源をつくるべきです。
- Q6.消費税は社会保障財源に向いている?
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A.低所得者ほど負担が重い不公平で最悪の社会保障破壊税
税の「公平」は、負担能力(収入や所得)に応じて課税されているかどうかです。それは「応能負担原則」といわれており、「生活費非課税」とともに、憲法にのっとった正しい税制のあり方です。
総務省「家計調査」(08年)では、年収300万円以下の世帯では消費税の負担率が4・1%なのに対し、1500万円以上の世帯では1・43%に過ぎません(グラフ3)。消費税は所得が低く、社会保障が必要な人ほど負担が重くなる「逆進性」があり、最悪の大衆課税です。政府や民主党も認めざるを得ず、食料品の軽減税率や手当などの給付で還付して、逆進性緩和を提案するほどです。
内閣府などは「生涯かけて得た所得」は「生涯の中ですべて消費される」から、「消費税は比例税」と、逆進性を否定する説を展開。
しかし、実際には高額所得者の利子・配当などの資本所得の大部分は、消費に回らず金融資産として投資され、その課税も優遇されています。所得の多くを消費に充てる庶民に負担が重い現実は隠せません。
- Q7.低所得者や被災者に税金を還付するために「共通番号制」は必要?
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A.「共通番号制」の導入で国民管理を強化し、社会保障給付も削減
政府は、「社会保障・税番号大綱(仮称)」の法案提出をめざしており、消費税10%を狙う2015年から導入する計画です。
菅首相が想定する還付制度は、世帯ごとの所得を正確につかまなければなりません。全国民の個人情報を国家が握る制度の導入は、国民管理・プライバシー保護という観点からも慎重な議論と検討が必要です。
「共通番号」になれば、年金、国民健康保険料(税)などの徴収に、還付金が優先的に回されることにもなります(図2)。共通番号制の発信源でもある財界は、医療・介護の給付が負担を上回った場合は、「死亡時の相続税の基礎控除を削る」ことを提言しており、番号制の真の狙いは給付削減にあります。