税率10%でさらに拡大
消費税1兆円を還付

全国商工新聞 第3389号2019年12月9日付

静岡大学元教授・税理士 湖東 京至さんが試算

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 消費税10%への増税が強行されました。消費税に苦しめられている中小業者の納税額がさらに増える一方で、トヨタをはじめとする輸出大企業(製造業13社)は、年間1兆円を超える還付金を受け取っています。静岡大学元教授の湖東京至税理士が2001年から毎年、還付金額を推算して18年。その間、トヨタ自動車1社だけで還付金総額は4兆3千億円超に上ります(図)。湖東税理士は「消費税を廃止したマレーシアに学んで日本でも廃止に」と呼び掛けます。

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「悪税 廃止しかない」

 消費税は悪税で、その不公平の最たるものが輸出大企業への還付金制度です。税率10%の増税によって中小事業者の納税額はぐっと増える一方で、輸出大企業は消費税を税務署に1円も納めないばかりか、還付金が増えるだけです。

消費税収の3割が 輸出企業への還付

 わが国を代表する製造業13社の還付金額(年間)を決算書などに基づいて推計したのが表1です。

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 1位はトヨタ自動車で、2018年度の還付金額は3683億円に上ります。2位は日産、3位はホンダ、4位はマツダと続き、13社の合計還付金額は1兆1643億円に上ります。
 18年度の政府予算書説明によると、事業者の消費税納税額20兆8673億円(税率8%)のうち、還付見込み額は6兆2628億円。そのおよそ9割が輸出企業への還付金とすると、5兆6365億円です。事業者が納付する消費税額のうち27%は輸出企業に持っていかれ、国に入るのは73%しかないのです。
 表2は消費税の赤字税務署を、還付金額が大きい順に並べたものです。愛知県豊田税務署は毎年赤字税務署第1位です。理由はトヨタ自動車本社に払う還付金が多額に上るからです。

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 豊田税務署の赤字額3301億円の内訳は、還付金額3891億円から徴収税額590億円を引いたものです。トヨタへの還付金推計額は3506億円(17年度)と推算されますから、還付金全体の約9割を占めています。

法人税の穴埋めに 消費税増税を要求

 一体どうして、こんな仕組みが許されるのでしようか。政府は「外国にはその国の間接税があるため、日本の間接税は外国の消費者からもらえない。仕向地(しむけち)原則は、世界の共通認識となっている。そこで輸出売り上げに課税しないためゼロ税率を適用する」と説明します。外国の消費者から消費税をもらえないのは当たり前ですから、輸出売り上げに課税をしないのは分かりますが、還付する必要はないはずです。還付は消費税の仕組みによって生じます(表3)。

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 消費税には仕入税額控除があり、仕入れや外注費、機械購入費、光熱費、交通費、家賃、交際費などに含まれる消費税分を控除し、輸出売り上げには税率ゼロを適用します。算式で示すと還付金=<輸出売上高×0%>+<国内売上高×8%>-<仕入れなどに含まれる消費税分>。
 相手から消費税分をもらえないのは、病院や診療所の社会保険診療報酬も同じです。しかし、社会保険診療報酬はゼロ税率が適用されず、単なる非課税です。そのため、医療器具や診療機器にかかる消費税分は還付されません。輸出企業も還付のない非課税にすべきです。
 仮に、仕入れ先や下請けに消費税分を払ったとしても、実際に税務署に納めているのは仕入れ先や下請けです。税金の還付は自分が納めた税金が過誤納のときに返してもらうものです。
 輸出還付金制度がある限り、輸出大企業集団の日本経団連は、自分の懐が痛む法人税の穴埋めに消費税の税率引き上げを求めます。

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マレーシアに学び 消費税廃止しよう

 昨年5月に誕生したマレーシアのマハティール新政権は消費税(GST)を0%にし、実質的に廃止しました。消費税廃止後、代わりの財源や経済はどうなったでしょうか。
 景気は上向き、2018年後半から法人税や所得税などの直接税が前年度比11%も伸びました。中でも法人税収が好調で過去最高額になり、GDPも予想を上回り、国営石油公社からの税金や受取配当金も増え、18年途中で消費税を廃止した後の代わりの財源の心配はなくなりました。
 19年度の予算編成に取り組んだ新政権は、GDPの伸びを前年度比の6.9%増と見て、法人税や所得税の税収を前政権時代の11%増としました。法人税や所得税の最高税率の引き上げも税収増につながり、国営石油公社からの税収や受取配当金も過去最高額を見込みました。その他、不動産譲渡益への課税強化、清涼飲料水に物品税を課税、飛行機で出国する旅行者に出国税を課す、カジノのライセンス料やカジノ税を引き上げるなど税収増を図り、消費税に代わる財源を十分に確保しています。
 歳出では、高速鉄道などの大型プロジェクトの延期など、前政権時代の無駄な歳出予算を削っています。
 消費税は大企業にはありがたい税金ですが、中小企業、国民にとっては迷惑千万の悪税です。廃止する以外ありません。「日本も廃止できる」を合言葉に新たな運動を起こしましょう。

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