税理士137人「連名アピール」消費増税は中止すべき!!
税理士アピールについて記者会見する、右から永沢、佐伯、浦野、湖東、平石、青木の各氏(8月29日、衆議院第2議員会館)
安倍内閣が行う消費税増税に反対する税理士たちは8月29日、衆議院第2議員会館で記者会見を開き、国民生活と中小企業の経営に多大な苦難をもたらす消費税増税の中止を求める「税理士のアピール」(別項)を発表しました。北海道から沖縄までの36人が呼びかけ人に名を連ね、この日までに137人の税理士が賛同。これだけの人数の「税の専門家」が、政府の増税政策を批判しアピールすることは、かつてないことです。
会見では、税理士の浦野広明、湖東京至、佐伯正隆、永沢晃、平石共子、青木輝光の各氏が増税中止への思いを語りました。
中小業者は転嫁不可能
佐伯税理士は「中小企業と一番接点の多い税の専門家として、これ以上、消費税を上げさせるわけにはいかない。アピールへの賛同者をさらに広げ、増税中止を求める税理士の声を全国から上げていきたい」と決意を述べました。
浦野税理士は「アベノミクスによる物価上昇で、中小業者や労働者は大変な状況に追い込まれている。消費税増税と社会保障切り捨てが行われれば、国民生活と日本経済はさらにひどくなる。消費税法付則18条に基づき、増税を中止すべきである」と強調しました。
湖東税理士は「圧倒的多数の中小企業が消費税を転嫁できないにもかかわらず、トヨタなど輸出大企業は、莫大な還付金を受けている。税率が上がるほど、還付金が増える仕組みだ。こんな理不尽な税金はない」と訴えました。
永沢税理士は「顧問先の90%は建設業者。8%、10%になれば仕事ができないというのが大半だ。中小の建設会社はつぶされ、若い働き手がどんどん減る」と警鐘を鳴らしました。
平石税理士が「(税率引き上げで)製造業の下請けには、単価のさらなる値下げ要請がくる。赤字でも納めなければならない消費税に苦しめられる」と語るなど、中小業者の営業を破壊する問題点が指摘されました。
青木税理士は「大企業・資産家を税制で優遇し、生活に苦しむ国民に国策で負担を求めようとしている。これは国家による大収奪だ。中止させたい」と力を込めました。
会見では、政府の消費税増税「集中検討会合」には税理士の立場での参加は一人もおらず、応能負担原則に基づくあるべき税制についての専門的議論が欠如しているとの批判が上がりました。
加えて、各氏から所得税・法人税の累進課税の強化など応能負担原則にのっとった税制に改めれば、消費税を上げなくとも十分な財源が生まれることが強調されました。
消費税増税の中止を求める税理士のアピール(全文)
2013年8月29日
〈税理士の皆さん、国民の皆さんへ〉
私たちは税に関する専門家として、来年4月、再来年10月からの消費税率の8%、10%への増税は中止すべきであるとの思いからこのアピールを発表しました。
〈消費税は不公平な税制です〉
政府も「消費税率の引上げに伴う低所得者対策の検討」に言及せざるを得ないように消費税は所得の低い人には負担が重く、所得の多い人には負担が軽いという不公平な税金です。大企業や高額所得者の所得が増えている一方、働く者の給与は引下げられ、中小企業の収益が悪化しているなかでの消費税率の引上げは国民生活や中小企業の営業を破壊することになります。
消費税法の仕組みでは「消費税の納税義務者は事業者」とされ税務署に納税するのは事業者であり、また、「売上等には消費税が含まれる」ことから消費税相当額を売上高のなかに転嫁できるかどうかは個々の事業者の努力いかんとなります。
力の弱い事業者ほど消費税の転嫁ができず身銭を切って消費税を納めざるを得ないことになり、税率の引上げはこれら事業者の死活問題となります。
さらに、輸出については免税(消費税率0%)とされ、非課税とは異なり「仕入に含まれる」とされる消費税相当額が還付されるという不公平も拡大することになります。
〈能力に応じた税負担が必要です〉
「国の財政が大変だから」「社会保障のためなら増税も仕方ない」というご意見もありますが、税の集め方や使い方を変える必要があるのではないでしょうか。
消費税の導入以降、法人税率、所得税・相続税の最高税率が引下げられ、消費税収は増えたものの国の税収全体は減ってきました。消費税率を3%から5%に引上げた際には、回復しかかった経済が失速し、国全体の税収は14兆円も減少しました。
大企業への行き過ぎた減税や富裕層への優遇税制を見直すことが必要です。国民の暮しと権利を守るルールをつくり、国民の所得を増やすことも税収を増やすためには重要なことです。さらに、税の使い道を変え、ムダな支出を削減し、国民生活の向上、社会福祉の充実などに効果的に支出することで経済・財政も活性化してきます。
〈今回の増税実施は中止すべきです〉
消費税に関しては様々なご意見がありますが、格差が広がり、経済が低迷している今日、消費税の増税実施は中止すべきです。
全国商工新聞(2013年9月16日付) |