消費増税へ 大型店が買いたたき 公取委調査
11.3%が「要請受けた」 さらなる不当行為の恐れ
消費税率引き上げを見据えた事前の値下げ要請を受けている納入業者が117社に上ることが、公正取引委員会の「緊急調査」(6月28日公表)で明らかになりました。公取委は、今後も不当な値下げ要請が多発する恐れがあることを警告しています。
公取委の「大規模小売業者による買いたたき等の行為の緊急調査の結果について」は前事業年度売上高70億円以上の大規模小売業者と大規模小売業者に継続的に商品・サービスを納入・提供している納入業者が対象。昨年9月1日から今年4月19日を回答期限として実施(調査対象期間)し、大規模小売事業者1245社、納入業者1万8971社から回答が寄せられました。
緊急調査によると、大規模小売事業者の内、39・3%が「調査対象期間内」に納入業者に対して納入価格の値下げ要請を行ったと回答しており、このうち49・3%が「さらに値下げ要請を行う予定がある」と答えています。
一方、納入業者の内1037社が「調査期間内に大規模小売業者から値下げ要請を受けた」と回答し、うち117社(11・3%)が「大規模小売業者から受けた値下げ要請が、消費税率引き上げを見据えた事前の要請であった」と答えています。具体事例として「取引先を集めた説明会で、今後消費税率が8%となっても、消費税率5%時における、またはそれ以下の売価を維持するために、仕入れ価格の低減や、リベートの要請を行うとの発言があった」などが挙げられています。
公取委は「今後、消費税率引き上げが近づくにつれ、当該引き上げを見据えたさらなる値下げ要請が増加し、納入業者に不当に不利益を与える行為が多発する恐れがある」と警告し、監視を強めるとしています。
全国商工団体連合会(全商連)の営業動向調査(2013年上期)でも、「消費税引き上げに伴う製品単価(製造業)の引き下げが始まっている」(福岡・建設)など、製造業と建設業の8割弱が取引先からの値引き強要を受けている実態が明らかになっています。
こうした不公正取引は、中小業者にとっては事実上、「消費税の納付に身銭を切らされ、利益を削られる」ことを意味します。
政府が成立させた「消費税価格転嫁特別措置法」は、消費税還元セールの禁止や増税分を価格転嫁するカルテルの容認、監視体制強化のための「消費税価格転嫁対策等対策室」を設置するとしていますが、大規模小売業者と納入業者との取引の一部を規制するだけで、もともと下請け関係などは対象にしていません。
全国商工新聞(2013年8月5日付) |