消費税増税への布石 社会保障・税「共通番号」
野田首相は2日、記者会見で2010年代半ばまでに消費税を10%に引き上げる増税法案を来年3月までに国会へ提出すると明言。社会保障改悪と庶民増税シフトを鮮明にした税と社会保障の一体「改革」を進めるための露払いとして、この秋、国民一人ひとりに番号を割りふり、所得や年金、医療などの個人情報を管理する「共通番号」を導入する構えです。徴税強化などを狙う共通番号制の危険な内容を考えます。
政府は今秋以降の早い時期に社会保障と税の共通番号制の法案提出をめざしており、消費税10%をめざす2015年から導入する計画です(下の表)。
この制度では、氏名・住所・生年月日・性別と「マイナンバー」と称する共通番号が記入された顔写真つきICカードが、国民全員に配布されることになります。
共通番号は、税務と医療、年金、介護保険など社会保障の分野で使うとされていますが、言葉を変えれば「国民総背番号」で国民を管理するものです。
しかも、番号は「可視化(見えるものとなる)」され、一般に公開しながら使わざるを得なくなります。そのため、番号を悪用する「成りすまし犯罪」につながる危険性が増すと指摘されています。
この点は、秘匿性が高く、民間利用が禁じられている住民基本台帳の「住民票コード」とは、大きく異なります。
全国民の個人情報を国家が握る制度は、プライバシーの観点からも慎重な議論と検討が必要です。
給付削減狙う
しかも、所得など家計と社会保障給付のすべてが一つの番号で管理されるため、国民生活の実態を無視し行政が一方的に給付を削減するなどの可能性もあります。高額医療費や税金などの還付金が、年金、国民健康保険料(税)などの徴収に優先的に回されることにもなりかねません。
さらに政府は、消費税増税後に負担が重くなる低所得者対策として、給付付き税額控除で還付するために必要だとしています。しかし、共通番号がなくても給付付き税額控除は実施できます。
政府に求められるのは早急に「所得再分配機能」を強化することです。
共通番号制導入で、行政の効率化や利便性が強調されますが、真の狙いは国民を番号で一元管理し消費税率引き上げによる庶民への徴税強化、社会保障給付の削減だと言われています。
共通番号制の発信源である財界は、医療・介護の給付が負担を上回った場合は「死亡時の相続税の基礎控除を削る」ことさえ提言しています。
導入阻止へ運動
プライバシー保護問題、国民監視による人権侵害など多くの問題を含むこの危険な制度導入を阻止する運動が求められています。
大企業優遇の是正こそ必要
税理士 湖東京至さん
民主党政権は、消費税増税後の低所得者対策と称して、「給付付き税額控除」の導入をめざしています。そのためには低所得者の所得把握が必要となり、共通番号の導入が避けられないとしていますが、それは口実です。
政府は、世界各国で納税者番号を導入していると主張しますが、消費税増税時の「給付付き税額控除」を実施しているのは私の知る限りでは、カナダだけ。しかも、カナダは世帯ごとに所得を把握し、低所得世帯に給付が支払われています。
政府は、確定申告をしていないサラリーマンや派遣労働者などに還付するには、共通番号で収入を把握する必要があるとしていますが、番号がなくても市町村が把握している所得情報を使えば、給付はできます。それは麻生内閣の給付金で実証済みです。
つまり、共通番号がなくても給付付き税額控除は実現可能なのです。
消費税はどのようにしても、その不公平性をなくすことはできませんが、どうしても低所得者対策が必要だというのであれば、まず輸出大企業に年間3兆円も還付している消費税の不公平をなくすべきです。
全国商工新聞(2011年9月19日付)
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