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  トップページ > 税金のページ > 消費税 > 全国商工新聞 第2940号 8月30日付
 
税金 消費税
 

消費税増税しない新しい国づくり
 = 渡辺治一橋大学名誉教授に聞く

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 菅直人首相が消費税10%引き上げを明言し、民主党は参議院選挙で大敗しました。しかし、財政再建は「どの党が政権を担当しようが避けて通れない大きな課題」と消費税増税を推進する立場は崩していません。参議院選挙の結果は何を示したのか、菅政権の本質とめざす方向について、一橋大学名誉教授の渡辺治さんに聞きました。

参院選結果どう見る
――2大政党への不信感増す
 大きくは三つの特徴があります。
 第1は財界、アメリカの圧力を受けて鳩山政権を右に引き戻そうとした菅政権と民主党が敗北し、後退したことです。構造改革の政治を止めてもらいたいという期待を受けて登場した民主党政権が国民の期待を裏切ったからです。では民主党から離れた票は自民党に戻ったかというと戻らなかった。
 その結果、第2の特徴、保守2大政党の地盤沈下が起こりました。09年まで、合わせて7割あった自民、民主両党の得票は、今回の参議院選挙で56%に落ちています。
 しかし、2大政党に対して不信感を示した票はみんなの党をはじめとした新党に行った。その結果、新党への得票を合わせた保守全体の得票率は依然76%にもなりました。自民党と民主党から離れた人たちが共産党や社民党に入れるところまでは行かなかったわけです。
 第3は、共産党や社民党の得票率と議席が後退したことです。消費税引き上げに明確に反対したのは両党、特に共産党だったのに、なぜ得票が伸びなかったのか。国民が消費税増税に賛成しているとは思えません。
 多くの国民は大きなマスコミの宣伝の中で、消費税は上げてほしくないが、上げなければギリシャのようになる、財政破たんするのではないかと真剣に悩み始めた。しかし、共産党の主張するように福祉を拡充し消費税も上げない道に、まだ確信を持てなかったのが最大の要因だと思います。

菅政権が担うものは――構造改革と軍事同盟強化
 菅首相はリベラル、市民運動をうたい文句に政治家の人生を歩んできた人物です。しかし、本質は鳩山政権が保守の枠組みから逸脱した部分をもう一度、保守の枠内に戻す、財界とアメリカの強い期待の下で構造改革と日米軍事同盟の政治を再び実現する課題を担って登場した政権です。
 菅政権が反小沢を掲げた狙いも重要です。小沢氏に代表されるのは、選挙目当てとはいえ、消費税引き上げに反対し、財政出動を進める路線でした。小沢氏を切ることで菅政権は、財界が求める消費税増税を訴えることができたのです。

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買い物客でにぎわう都内の商店街。消費税増税問題は死活問題です

菅政権の成長戦略とは
――消費税の増税に固辞
 菅政権は、自公政権の構造改革の矛盾に対しては財政出動をし、公共事業投資や若干の福祉の手当てをする。しかも、大企業の競争力を強化するために法人税も減税する。そこで、足りなくなった財源として消費税を引き上げるという路線です。参院選のマニフェストでも、法人税引き下げ、消費税引き上げを掲げたわけです。これが「新成長戦略」の第1の柱になりました。ところが、選挙で負けてしまった。菅政権は、大連立か部分連立をてこにしてあらためて消費税増税をやろうとしています。
 新成長戦略のもう一つの柱は、構造改革の新たな仕組みとしての地域主権改革です。これは、後期高齢者医療制度に見られるように、都道府県に責任を持たせて医療費削減をやらせるという仕組みです。地域に権限、財源を渡して、「自己責任」で福祉を切り捨てようというのです。
 おまけに、地域間で福祉切り捨て競争をさせる。こうした構造改革の地域づくりのモデルが、大阪の橋下徹府政です。公務員をバッサリとリストラする。福祉を切り捨てその分を大阪の開発に充てる。それをまねて、ほかの自治体も構造改革を競い合う。これが菅政権の「地域主権改革」の狙いです。

求められる国づくりとは――新しい福祉国家像示して
 自民党利益誘導型政治でも構造改革路線でもない、新しい福祉国家型政治の構想を具体化することが重要です。新しい福祉国家は、雇用と福祉を保証することを目標としますが、最も大きな問題は財源問題です。消費税を上げなくとも福祉を拡充できる対案を、税収、支出の両方で示すことが必要です。
 税収では、所得税の累進制を復活し、大企業に応能負担を求めること。大企業の法人税の引き上げも不可欠です。そんなことをしたら大企業は日本から逃げてしまうという意見がありますが、そんなことはありません。法人税が上がったからといってトヨタや日産やホンダなどの大企業が1億3000万人の市場を手放すことはできないからです。
 支出では、軍事費や大型公共事業投資の大削減が必要です。
 それから大企業本位の経済成長に対して、地場産業、中小、零細企業を中心とした経済成長を打ち出す必要があります。構造改革で、今どこでも、病院、保育所、介護施設、特養ホームが足りません。ダムや道路に代わり、こうした福祉のための公共事業を興すことが、地域の活性化、福祉の拡充のてこになります。
 民主勢力がこうした対案を具体化し国民に示すことが、構造改革政治の復活を阻止し政治をさらに前進させる大きな力になります。


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