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  トップページ > 税金のページ > 消費税 > 全国商工新聞 第2934号 7月12日付
 
税金 消費税
 

消費税10% 家計を痛め景気も悪化
=第一生命経済研究所・主席エコノミスト 永濱利廣さん

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 参議院選挙では消費税増税が大きな争点に。税率が10%になれば、4人家族で年16・5万円の負担増で、年間支払い総額は34万6000円にもなります。試算したのは(株)第一生命経済研究所の主席エコノミスト・永浜利廣さん。「今は消費税をあげるべきではない」と警告する永浜さんにインタビューしました。

―― 第一生命経済研究所のマクロ経済分析レポートで「消費税率引き上げの影響」を発表しました。
永浜 同レポートは4月に発表したのですが、「4年間は上げない」と公約していた民主党が、「3月から消費税論議を始める」との意向を示したため、消費税増税は経済にどのような影響を与えるのかを予測する必要を感じました。レポートは、当社のお客さまに有益となる情報を提供するために作成しています。
―― 消費税率が10%になれば、4人家族で年16・5万円の負担増、年間支払い総額は34万6000円にもなるという試算方法について教えてください。
永浜 総務省がまとめた「家計調査」の中に、国民の年収別に消費支出を算出したデータがありましたので、消費税10%であれば、消費支出に110分の10を、5%であれば105分の5をかけて計算しました。
 実際には消費支出の中に非課税のものもありますので、計算としては正確ではありませんが、それは誤差の範囲だと考えています。

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逆進性が明白に
―― レポートでは、「消費税の逆進性」についても試算していますね。
永浜 消費税は収入がない人でも消費する際に課税されるため、所得が低い人ほど負担感が大きくなります。試算すると、そのことがはっきりと分かります。
 さらに、総務省「家計調査」は、税・社会保障などの公的負担額も算出してありましたので、直接税と社会保険料についても試算しました。
 直接税は、所得の低い人ほど負担が少なく、所得がある人は負担が重い累進性がはっきりと出ました。
 また、「消費税の逆進性」を緩和する方策として、諸外国で実施されている食料品などの生活必需品の消費税率を軽減する措置も紹介しています。個人的には、軽減税率は避けられないと思っており、次は生活必需品の税率はそのままにして、消費税を10%にした場合の試算を発表する予定です。

消費を冷やす
―― 消費税増税が経済に与える影響について教えて下さい。
永浜 増税によって税収が増える好影響と、モノやサービスの価格が上昇し、売れなくなる悪影響の二つがあると思います。
 そして、先の試算のとおり、家計に与える影響は甚大です。消費税率引き上げは、消費の減少や企業売り上げの減少を通して、景気の悪化を招く可能性があり、注意が必要です。レポートでも詳報していますが、89年の消費税3%創設時と97年の5%導入時とでは、景気への影響は大きく異なりました。

デフレ脱却が先
―― 消費税は増税すべきではないと?
永浜 消費税に限らず、国民の負担増は、将来に対する不安感を過度に増大させます。
 04年の年金制度改正で、13年間かけて保険料が毎年引き上げられることになり、国民の不安増大から景気に悪影響が出ました。
 不安は個人消費に悪影響を及ぼすとともに、景気低迷に伴って税収も減少し、財政再建の進展も妨げます。消費税の増税だけで財政再建をするのは難しいと考えます。
 今は、デフレ脱却が先であり、消費税を上げる時ではありません。
 消費税増税は、引き上げ時期を先に決めるのではなく、経済がここまで良くなったら消費税を上げるというターゲットを示すべきです。その方が国民の理解も得られると思います。
 実は、今年の初めごろ、内閣府の政務三役が出席するミーティングで、このことを提言しました。民主党だけでなく、消費税増税を公約する政党のすべてに私の提案を勧めています。
―― 消費税を価格に転嫁できず、身銭を切って納税している中小業者は、消費税に苦しめられています。
永浜 マクロ経済では、そのことを数値化するのは難しいのです。でも感覚的には分かります。私の父も自営業者なので。


プロフィル
永浜 利廣(ながはま としひろ)…第一生命経済研究所 主席エコノミスト 景気循環学会幹事、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、一橋大学・跡見学園女子大学非常勤講師
 著書『経済指標はこう読む』(平凡社新書)、『アメリカ経済がわかる「経済指標」の読み方(解説)』(マグロウヒル・エデュケーション)、『資源の世界地図(編)』(青春出版社)等

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