庶民減税と富裕層増税は世界の流れ
世界同時不況を受けて経済危機が深まる下、各国はさまざまな景気対策をとっています。なかでも注目されるのは「中所得者など庶民に減税」「富裕層への増税」で格差を是正し、景気回復をめざす動きが、主流になってきていることです。
イギリス
消費税減税で消費を伸ばす
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消費税減税もあって売上を伸ばす英国の小売店=2009年11月30日、ロンドン |
EU(欧州連合)は08年11月、加盟国に付加価値税引き下げによる消費促進策を勧告。それを受けたイギリスは08年12月、消費税(付加価値税)を17・5%から15%に引き下げました。国内総生産がマイナス続きのなか、この減税効果により、昨年6月の小売りの売り上げが前年比で2・9%の伸びとなりました。
ロンドン在住の小玉純一さん(「しんぶん赤旗」記者)は、「小売り業の売り上げが増えたのは消費税減税の効果だと経済専門家が言っている」と強調。減税は昨年末までの期限付きとなっており、「クリスマスセール後の値札替えもあり、期間延長を求める声が強い」といいます。
さらに、今年4月から年収15万ポンド(約2200万円)以上の高額所得者の所得税率を40%から50%に引き上げる計画もあるといいます。
「バブルでいい思いをした人たちが景気回復のために負担をすべきだ」という声が多く、世論の6割の支持を得ています。
フランス
減税と引き換え雇用増加を約束
イギリスに続き、フランスは09年7月から、レストランの消費税率を19・6%から5・5%へ減税。レストラン業界は減税と引き換えに、2年間で4万人の新たな雇用をつくることを約束しています。
フィンランド
食料品税下げ公平性高める
北欧のフィンランドは09年10月、食料品にかかる消費税率(現行17%)を5%引き下げ12%にしました(10年6月に13%へ改定予定)。フィンランドの財務省担当者は「税の公平性を高めるため」と説明しています。
ドイツ
税の負担下げ経済成長促進
ドイツは09年11月、ホテルなど宿泊施設利用の消費税を19%から7%に引き下げることを約束。また、子ども1人当たりの扶養控除額拡大も決めました。今後、経済危機が本格化すると分析したメルケル首相は「税の負担を軽くして、経済成長をすることこそが危機克服につながる」と強調しています。
アメリカ
中低所得者の所得税を減税
この流れは欧州だけではありません。
アメリカは09年5月、今後10年間で72兆円の中低所得者への所得税減税を計画。11月7日に下院で可決された国民皆保険の導入の財源として、120兆円の富裕層への増税を行う税制改革案も発表しています。
韓国
富裕層増税と低所得層減税
韓国も09年8月に大企業と富裕層に増税し、低所得層への減税措置を拡大する税制改正案を発表しました。
日本
消費税減税の効果は大きい
前出の小玉さんは言います。
「イギリスでは食料品の消費税税率は以前から0%。この点で貧困層に消費税の減税効果はなかったといえます。それに対し、日本が一律5%の消費税を減税したら…。庶民への減税効果は高く、それによる景気回復への効果はイギリス以上のものが期待できる」
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