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  トップページ > 税金のページ > 消費税 > 全国商工新聞 第2825号 4月7日付
たたかいの歴史や増税阻止の決意を語る座談会
 
  力を合わせて大増税阻止を
たたかいの歴史に確信持とう
 
   この4月、消費税が実施されて20年目に入ります。福田首相は「社会保障国民会議」をスタートさせ、消費税増税の来年実施に向けて、野党をはじめ各界からの協力・合意を取り付けようとしています。大手新聞もいっせいに「社会保障財源は消費税増税以外にない」との論陣をはり、政府の応援団になっています。民主党も消費税を社会保障財源に当てることでは一致しているだけに、今年はたたかいの大きな正念場です。税理士の湖東京至さん、政府税調委員の岡田ヒロミさん、全商連青年部協議会議長の小林秀一さんに消費税の問題点、たたかいの歴史や増税阻止の決意を語ってもらいました。

 出席者
 税理士 湖東京至さん
 政府税調特別委員 岡田ヒロミさん
 全商連青年部協議会議長 小林秀一さん
 司会 司会谷正幸編集長

岡田 税調は消費税に固執
小林 業者は負担感が重い


  :税調ではどんなことが話し合われているのですか。

 政府税調とは:首相の諮問機関で大学教授や財界の有識者らで構成。税制改革の方向性を提言する。年度改正ごとにまとめる「年度答申」と、3年に1度の割合で中長期的な税制改革のあり方を示す「中期答申」がある。

  岡田:昨年の11月に答申を出しました。少子高齢化と経済のグローバル化に対応するための抜本的な税制改正がいわれています。議論の中では、税収が不足しているという一方で法人税率の引き下げがいわれ、税調委員の多数意見です。企業の税負担が重くなると外国企業との競争力が弱まり、企業が外国に逃げていってしまうといいます。結局、行き着くところは消費税増税です。「一番公平な税金」だとして「上げなければいけない」と言いながら、今上げれば選挙で負けると、タイミングを見計らっている感じです。
  小林:少子高齢化には確かにお金が必要だと思うのですが、何でいつもすぐ消費税増税なのかなと思うのです。中小業者にはすごい負担感です。
  岡田:払うのは消費者で、納税するのが業者じゃないんですか。
  小林:消費者は当然、全部5%を払っていると思いますよね。でも消費税の仕組みは、必ず5%を値上げして売りなさいと義務づけているわけではありません。特に小さい店とかは、ただでさえお客さんが来ないものだから、なかなか値上げはできません。それでも売り上げに対して消費税は身銭を切ってでも納めなければいけない。そういう点で消費税は消費者も業者も苦しめる悪税なのですが、何となく消費者と業者の人が対立させられています。
  岡田:そうですね。消費者から見れば、私たちが払った消費税がちゃんと納められているのかという不信、中小業者の「益税」的な見方があるような気がします。
  今の話で、値上げができず、消費者に転嫁できない仕組みが分かりました。実態がそんなに深刻とは思っていませんでした。
  知り合いのラーメン屋さんは、消費税が上がった当時値上げしないんです。今も小麦から何からみんな上がっているのに上げられない。そういう生の声を聞くと、ああ、やっぱり消費者と同じ立場なんだと思います。
  湖東:税調の中ではそういう零細な事業者の意見というのは出ませんか。
  岡田:あまり出ませんね。
  湖東:消費税が導入されて20年たち、税収に占める割合では今3位ですが、時々2位になったりするわけです。消費税導入前は所得税と法人税が税収の2本柱でした。そこに消費税が加わったということは、所得税と法人税が減税されたということです。
  財政当局はこの20年間、庶民増税しかないという方向で議論を進め、それが格差と中小業者の倒産を生んでいます。
  消費税は物価を引き上げ、家計を直撃します。しかもどんなに高額所得者でも税率は同じ。税調委員の中でもこれを公平だと言う人はいないと思います。税制のあり方としては、所得がある所から取って、ない所へ回すという応能負担原則・所得再分配機能の発揮こそが本当の公平というものです。

小林 両親らが売上税阻止
湖東 世論が増税内閣倒す


 :今、どの世論調査でも「社会保障のためにでも消費税を上げてもらっちゃ困る」というのが圧倒的多数です。そういう意味では国民の世論や粘り強いたたかいが消費税を5%に押しとどめてきたといえます。小林さんは今34歳で、物心ついたときから消費税がありましたね。
  小林:まだ中学校へ上がる前、大型間接税反対の運動があったあたりから知っています。うちは豆腐屋なので父と母がよく話し合っていたし、お客さんにも話していました。
  :岡田さんも消費税増税反対の大きな国民的な集会や運動があったことはご存じですか。
  岡田:新聞などで見ていました。
  :十何万人集まっても新聞報道では一段見出しの記事の扱いで、国民の声をほとんど報道してくれない。
  岡田:そうだと思いますね。実は税調の中でもすごく議論しているのですよ。しかし、新聞によって取り上げ方がまったく違うのです。大新聞ができないのなら、違う新聞が本当に正確に、公平に取り上げてくれればと思います。国民は何が話し合われているか知ることで監視ができるわけですから。
  湖東:消費税は大企業と国民の利害が大きくかかわっているだけに、政府の政治的な思惑がマスコミ報道にも相当働いていると思います。
  近年になって最初に大型間接税を導入しようとしたのが大平内閣(年表参照)です。日本中が大騒ぎになり、大平総理が選挙中に亡くなったこともあり、一般消費税というのはつぶれてしまった。その時、衆参両院で消費税によらない財政再建をするという決議をしたのです。しかしその反省もなく、中曽根内閣の時に売上税を言い出しました。「これは大型間接税じゃない」「私はウソをつきません」と言って強引に出したのだけれども、やはりどこからとって、誰に使うかということが反対を受け、つぶれてしまった。
  それで消費税を強行した竹下内閣でさえ、税率を5%じゃなくて3%にしたわけです。1%でもいいからとにかく入れたかった。入れてしまえば必ず上げられる、そういう魂胆が見え見えでしたね。
  岡田:私も何で3%だろうと思いました。
  湖東:竹下さんは89年の4月1日から消費税を導入しましたが、4月26日に内閣を総辞職します。つまり評判が悪くて続かなかった。
  その後、当時の野党が連合して細川内閣ができました。突如7%ぐらいの国民福祉税を打ち出しましたが、一晩で撤回して内閣は崩壊。結局、社会党が自民党と一緒になった村山内閣が消費税を3%から5%にする法律をつくりました。
  しかし国民の反撃にあった村山内閣は退陣。社会党も崩壊状態になりました。
  要するに税率を上げた内閣は続かないということは歴史が証明しているんです。それだけ消費税は国民にとって悪い税制で、受け入れられないということです。

湖東 増税で滞納が増える
岡田 小さなお店なくなる


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毎週の署名行動も14年目に入った埼玉・本庄民商婦人部。写真は02年6月(本庄・佐藤良子通信員)
 湖東:消費税には二つの顔があります。一つは消費者からみた不公平の顔、もう一つは先ほど小林さんも言われた消費税を納める事業者間の不公平という顔です。
  事業者間には弱肉強食の論理が働きます。トヨタみたいに完全に消費税を価格へ転嫁できる大企業もあれば、親会社から下請け単価をたたかれるなど転嫁できない事業者もいる。でも課税業者である以上、消費税を納めなければならない。これが消費税の持つもう一つの顔なのです。
  極めつけは、輸出をする企業とそうではない企業間の不公平です。消費税の仕組みから輸出大企業には税金が戻るけれども、その下請けには戻らないという、いわゆる「輸出戻し税」(表1参照)の問題です。
  消費税の転嫁の問題がはっきり出ているのが消費税の滞納です(図3参照)。国税の中でずっと滞納税額と滞納率がトップです。消費者から見ると「事業者が私たちの負担した税金を納めないのはずるい」と簡単に片づけられますけれども、事業者から見るとそんなに生易しいものじゃない。5%を預かったとして、毎日貯金する事業者は1人もいません。最低1カ月ごとに計算して、その分を貯金しなければならないけれど、それは大変なことです。ヨーロッパでは高い税率ですから、貯金できない業者は倒産しちゃうわけです。消費税の滞納がたくさん発生してるということは、消費税がいかに中小事業者を苦しめるかを物語っていると思うのです。
  滞納の問題について税調で議論したことがありますか。
  岡田:ないですね。今のお話をうかがうと、消費税が上がればもっと滞納が増えるということですね。
  湖東:そうなります。04年に免税点が3000万円から1000万円に引き下げられました。それからの滞納額と件数がすごいのです。零細な業者はわずかな税額でも納められず、滞納がますます増えるという、非常に厳しい税金です。
  岡田:今回いただいた商工新聞の中で、消費税が納められなくて税務署に差し押さえられて倒産したとか、生活が困っているというのを知りました。私が住んでいるのは五反田ですが、小さなお店はなくなってしまった。本当にそういう実態があるんですね。消費者は買い物をしなければ税金を負担しなくていいわけですが、事業者はそうはいかないですよね。
  湖東:消費者が買わないと事業者の売り上げが下がる。ここでも対立関係が起こっちゃうわけです。ですから本当に不景気になるのです。
  小林:豆腐は特に安いものの代表です。本当はもう値上げしないとやっていけないのですが、両親がけっこう値上げに反対するのです。
  岡田:それはもう市場原理ですよね。これでは地域の活性化なんか全然できない。逆のことをやっているということですよね。

小林 中小業者に活力必要
岡田 生活者も元気になる


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大型間接税導入・マル優廃止に反対と2万人が結集(全中連主催、東京・明治公園。1986年10月26日)
   岡田:ヨーロッパでは消費税が高いが社会福祉は充実していて、国民は納得していると聞いているのですが、実際はどうなんでしょうか。
  湖東:ヨーロッパには所得税も法人税もないのかというと、日本に比べて遜色がないしっかりとした所得税・法人税があるのです。その上、消費税、ヨーロッパでいう付加価値税の税率は高い。しかし消費税収は、一般財源として社会保障費などに使っています。つまり取ったものを国民に返すことによって景気のバランスを保っていることは事実です。
  一方、アメリカは所得税、法人税が中心で大型間接税を導入していません。なぜ導入しなかったかといえば、経済が疲弊するということが大きな理由です。
  ヨーロッパで付加価値税の割合が一番高いのはフランスだけ。ドイツ、イタリア、イギリスも2番目なんです。ということは、付加価値税の課税ベースが日本よりずっと狭いことを意味しています。豆腐は基礎的食料品だから免税や低い税率で課税しています。そのため税率が高いのに税収が上がらない。日本は全部同じ5%ですから税率が上がるとドイツやイギリスなどと同じか、あるいはそれ以上の税収になります。
  岡田:やはり国情に合ったものを模索しなくてはいけないということなんですね。
  湖東:福祉の話が出ましたが、日本で消費税の税率をヨーロッパ並みにしたから福祉もヨーロッパ並みになるという保証は全くないと思います。政府税調が最初から言っているように赤字財政を立て直すのが最優先ですから、もし消費税を社会保障目的税にしたとしても他の税収は赤字の補填に回ってしまう。とにかく税収を上げたいということなんです。
  岡田:今は、企業の景気が良くても働く人の給料が上がりませんよね。そうなると暮らしが絶対に良くならないですね。
  小林:大企業は国民にまともな給料を払わないで、税制まで自分たちに都合よく変えて税金を減らして、国民には増税してますよね(図1参照)。ところがマスコミは大企業が単に利益が上がって「景気が良い」という。何かおかしいと思うんです。中小業者の競争力が落ちて、僕らの活力がなければしょうがないですよね。
  岡田:中小企業が活力を得て、地域が活力を得て、そして生活者が活力を得て元気になる、そういう仕組みにしないと。
  湖東:大企業は法人税を払いたくない。もっと内部留保したい。それを税制に反映させているのが今の法人税制です(図2参照)。少なくとも特別な減税をしている部分は元に戻すべきです。そうすれば税収も上がってくるし、庶民増税をしなくてもいいのです。トヨタを筆頭に財界は一生懸命、法人税減税のために動いているわけですから、われわれもそれに対抗して庶民増税をさせないようにしていかなければいけません。

湖東 来年は大変な状況に
小林 みんなで手を結ぶ時


  :最後に今後の展望や決意をお話しください。
  岡田:大変勉強になりました。消費税の増税だけでは問題は片づかないですね。税調では減税にすると、あっちで増税というだけで、互いにどういう関係にあるのかは全然見えてきません。
  税調の議論はそれだけ分かりづらい。国民が理解し、そこで初めて合意があり、信頼が生まれるのです。
  税調にそれができないのであれば、皆さんのような外部の人たちにそういう整理をぜひしていただきたいなと思います。
  湖東:消費税の増税論議は、来年の今ごろはもう大変な状況になっている可能性があります。その前に庶民、消費者と中小事業者がお互いに敵対するのではなくて、一緒になって消費税が抱えている問題点を明らかにして、運動を広げていけば私は税率の引き上げは必ずやめさせることができると思います。
  消費税増税をした政府は必ず倒れるのです。福田内閣はもう末期状態ですが、増税を置き土産されたのではたまりません。
  小林:これ以上消費税が上がったら生活できない、商売できないというところにきています。今、みんなで手を結ぶ時だと思います。
  岡田:そうですね。大きな声を出していただかないと。
  :長い時間ありがとうございました。

 
 
     
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