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  トップページ > 税金のページ > 不公正税制 > 全国商工新聞 第3258号04月03日付

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森友問題をどう見るか「政治案件」がゆがめる税の公平
 =落合 博実さん(元・朝日新聞編集委員)

 学校法人「森友学園」が、異常な安値で国有地を取得し、同学園の小学校設置認可をめぐっても異例な手続きで認可を得た問題で衆参予算委員会は3月23日、同学園の籠池泰典理事長に対する証人喚問を行いました。24日には国有地売却を担当していた近畿財務局を管轄する財務省理財局の迫田英典局長(現国税庁長官)らの参考人質疑が行われました。この問題をどう見るのか。元朝日新聞編集委員・落合博実さんに寄稿してもらいました。

国税庁長官に向けられた疑惑

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 東京・霞ケ関の財務省ビル。文科省側のエレベーターで5階に上がると、すぐ左側、赤絨毯の通路を抜けた奥に国税庁長官室がある。この部屋の今の主が迫田英典・国税庁長官である。
 迫田氏は2015年7月から翌年6月まで財務省理財局長のポストにあった。理財局は国有地の処分・管理を担当している部局。政権を揺るがす大問題になっている「森友学園」への国有地大バーゲンは、迫田氏の理財局長時代に売却交渉がまとまっている。
 国税庁長官は約5万7000人の徴税権力のトップだが、日ごろは目立つことのない地味な存在だ。その現職の国税庁長官が疑惑の「主役」と見なされ、表だって登場したことは過去に例を見ない。
 迫田氏はメディアの取材を徹底して避けている。筆者は迫田長官に「国有地売却の経緯を詳しくお聞きしたい」と取材を申し入れた。しかし、国税庁は「当庁の所管行政ではないので、取材は控えさせていただきたい」と断ってきた。

専門外の部局がゴミ撤去費算定
 問題の国有地は大阪府豊中市にある。近畿財務局は16年6月、小学校用として学校法人「森友学園」に1億3400万円で払い下げている。この土地の不動産鑑定士による評価額は9億5600万円。実に85%引きの投げ売りである。値引きの理由は地下に埋まっているとされる廃材、生活ごみの撤去・処理費だという。
 この値引き販売について、財務省の佐川宣寿・理財局長は国会で「法的瑕疵はない」と素っ気なく答えている。ところが、8億1900万円と見積もって値引きしたゴミ処理工事が実際に行われたかどうか追及されると、「確認していない」というのだから、あきれる。
 「森友学園」の籠池理事長は実際に撤去にかけたのは「1億円くらい」と説明しており、大幅な水増しだった疑いが濃い。
 また、ゴミ撤去・処理費の算定は第三者の専門業者ではなく、素人の国交省大阪航空局が算定している。これも不自然な話ではないか。

自民議員でさえ政治介入を示唆
 不可解なことはまだある。過去に別の学校が問題の土地を7億円で購入したいと希望したところ、近畿財務局は安過ぎると拒否したいう。
 言うまでもなく国有財産は国民の大切な財産だ。巨額の赤字財政を抱える財務省は少しでも高値で売って国庫収入の足しにする責任があるのに、まったく逆の事をやっている。
 何から何まで異例づくめなのだ。
 自民党の船田元・衆院議員が自身のブログなどで「特別の力学が働いたと思わざるを得ない」と、有力政治家の介入をにおわせた。
 国会では佐川理財局長が野党の矢面に立ち防戦に必死だが、売却交渉が進められた当時の理財局長に疑惑が向けられたのは当然だ。政府・自民党は迫田氏の国会への参考人招致を拒否してきたが、幕引きを急ぐ狙いからか、突然、参考人招致に応じた。
 3月24日の参議院予算委員会に姿を見せた迫田氏が何を話すか注目されたが、意表をつく肩すかし答弁が飛び出した。
 「理財局長時代、森友学園については報告を受けておりませんので、その間の事情については承知しておりません」
 近畿財務局や本省の担当部課がやったことで、自分はあずかり知らぬというのだ。
 「森友学園」の籠池理事長は3月23日の国会証人喚問で、15年11月に安倍首相夫人付きの女性政府職員から受け取ったファクスの内容を暴露している。
 「財務省国有財産審理室長に問い合わせを行い、以下の通り回答を得ました」「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」とある。
 財務省と外局の国税庁は「政治案件」に関して非常に敏感で神経質だ。首相夫人付きの職員から問い合わせを受けた段階で、「高度な政治案件」と気づいたはずだ。上層部に報告を上げないで済ますということは、およそ考えにくい。

与党のためなら官僚は手を汚す
 筆者は88年、朝日新聞社会部デスク時代に政官界を揺るがせた「リクルート事件」を担当したが、政治家や元高級官僚が未公開株を受け取りながら秘書のせいにしたことを思い出した。
 「保身に長けた官僚は危ない橋を渡らない」というイメージが世間にあるが、財務省の高級官僚は、与党の有力政治家からの無理難題で手を汚すことも時には厭わない。省内には「清濁併せのむ懐の深さ」を評価する空気が伝統的にある。
 例えば27年前、角谷正彦・国税庁長官時代、とんでもない不祥事が「守秘義務」の陰に隠されていた。渡辺美智雄・元蔵相が角谷長官に電話をかけ、知人の史上最高額の脱税査察を葬り、単なる申告漏れ・修正申告で済ませてしまったことがあった。
 税務調査への政治家の介入は数限りなくあった。追徴額を4000万円も減額した例もあった。
 日ごろ標榜する「課税の公平」など、どこ吹く風。97年、筆者はその実態を詳細につかみ朝日新聞紙上でキャンペーン記事を書いたことがあった。
 一時はなりをひそめたが、安倍1強政権になって、また増えてきているという。

巨悪を助け、弱者に襲いかかる権力
国税庁ポスター 強烈に皮肉られ
 今年3月3日、倉敷民商事件の「禰屋裁判」で岡山地裁は執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。「国税、検察の言い分を丸呑みにした不当な判決」と弁護団から怒りの声が上がった。決算数字をパソコンソフトに入力しただけの倉敷民商の女性事務局員を「脱税幇助」で逮捕し、428日間も拘留するという異様な事件だ。
 口火を切ったのが広島国税局。「脱税幇助」というが、建設会社への査察自体が強引極まるものだった。査察立件に不可欠な「たまり」もないまま査察に突っ走った。「たまり」とは、脱税で得た預貯金や隠し資産のことで、脱税の証拠である。なりふりかまわぬ強権発動だ。55年前には当時の木村秀弘・国税庁長官が「民商をつぶす」と公言し、全国規模で強権的な税務調査を展開している。
 巨悪を助け、弱い立場の人間には問答無用で襲いかかる。
 16年の国税庁の税務職員募集ポスターの標語がネットで話題になっている。
 「巨悪と戦うなんて ドラマの中だけの話。だと思っていた」とある。「巨悪と戦う国税職員」のイメージ作戦のつもりらしいが、「巨悪はおたくの長官でしょう」と痛烈に皮肉られている。

全国商工新聞(2017年04月03日付)
 

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