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  トップページ > 税金のページ > 不公正税制 > 全国商工新聞 第3204号2月22日付

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税金 不公正税制
 

消費税が特定企業の"補助金"に?!=税理士・湖東 京至さんが指摘

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「軽減税率」導入で新聞、大手食品会社の納税額が激減
 軽減税率で得をするのは誰か−。政府は5日、2017年4月から消費税率10%への引き上げと併せて8%の軽減税率(据置税率)の導入などを盛り込んだ「税制改正関連法案」を国会に提出しました。軽減税率によって新聞社や大手食品会社の納税額が大幅に減ることが、元静岡大学教授で税理士の湖東京至さんの試算で明らかになりました。「軽減税率は新聞社や大手食品会社への実質的な補助金」と厳しく批判しています。

選挙目当ての理念なき合意
 自民・公明の与党は2017年4月に消費税率を10%に引き上げる際、軽減税率8%を導入するとしています。軽減税率の対象物品は新聞(定期購読の日刊紙)、飲食料品(外食と酒を除く)と決まりました。  自民党が「公明党の顔を立てた」決着で、選挙目当ての理念なき合意です。軽減税率による減収額は1兆400億円といわれています。軽減税率によって消費者、とりわけ低所得層の負担が1兆400億円減ると錯覚する人がいますが、とんでもない間違いです。軽減税率の対象となったものの値段が下がる保証はありません。むしろ上がる可能性もあるのです。

商品の価格は企業側が決定
 軽減税率はヨーロッパ諸国でも広く採用されているところから、消費税の不公平性・逆進性が和らぎ、庶民・低所得者層への負担軽減になると主張する人がいます。けれど消費税はアメリカの小売売上税のように個々の商品に課税する単純な仕組みではありません。  消費税の納税義務者は事業者で、1年間の売上高に税率(現行税率は8%)をかけた金額から、仕入高等に税率をかけた金額を差し引いて納税する仕組みです。  また、日本は「公定価格制」をとっていないので、商品の価格は市場経済や競争社会の影響を受けます。とりわけ生鮮食料品などは季節や天候によって価格が変動します。スーパーの食料品売り場に行けば分かるように、朝と夕方で値段が違うものがたくさんあります。値段は企業が自由に決めるのです。  例えばキャラメル、材料の砂糖、バター、水飴、生クリームの仕入れは8%ですが、包んである銀紙、箱、印刷代、運搬費、工場の機械、水道・電気代などは10%に上がりますから、ロッテや明治、森永などの製造・販売業者はその分の値上げをしかねません。これは便乗値上げですが、消費税法はそれを禁止することができません。

消費者に無益 対象企業潤す
 軽減税率は消費者にとって無益のものですが、では誰か得をする人がいるのでしょうか。  得をするのは、軽減税率適用物品を製造・販売する企業です。  政府・自民党の試算による1兆400億円の減収分は、新聞社・飲食料品の製造販売企業の納税額が1兆400億円減ることによるものです。会社名を上げれば、朝日、読売などの新聞社、日本ハム、山崎パン、味の素、キューピー、森永、雪印、ニチレイ、日清製粉グループ、コカ・コーラ、伊藤ハム、日清食品、伊藤園、キリン、アサヒ、サントリー、サッポロなど。さらに、これらの会社の製品を売るデパート、スーパーなどの納税額が減るのです。  これらの会社が納税額が減った分を価格から引けば消費者の負担は減りますが、価格を下げるのは企業の自由ですから、企業の善意に「おすがりする」ことになります。そんな気持ちの優しい企業はありません。そのため軽減税率はこれらの企業に対する実質的な補助金になるといわれています。

表1

不公平を招き悪税の延命に
 最新の決算書に基づいて、朝日新聞社と食品大手企業の納税額がいくら減るか推計してみました(下の表を参照)。  補助金をもらう企業がある一方、軽減税率によって納税額が大きくなる悲劇の業界があります。代表的な悲劇の業界は外食産業です。外食は最終的に軽減税率対象から外されたため、ラーメン屋さんやお寿司屋さんなどは納税額が跳ね上がります。なぜなら、飲食店(外食)の納税額は年間売上高×10%−(年間材料仕入高×8%+一般の物品×10%)の算式で計算されるためです。  このように軽減税率は新たな不公平を招くばかりか、見せかけの公平により消費税の延命を図るものです。

表2

全国商工新聞(2016年2月22日付)
 

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