消費税の増税狙う民主党の税制「改正」
庶民・中小業者は増税 資産家・大企業は減税
「消費税増税の議論が今から必要」―鳩山政権の閣僚から消費税増税を狙う発言が相次いでいます。総選挙で「4年間は増税しない」とした民主党の公約に矛盾するとの批判を受けても、社会保障の財源として必要だと正当化。大企業優遇税制はそのままに、「事業仕分け」では教育や福祉の予算を削減しました。自民党も消費税増税で民主党を後押ししているだけに7月の参院選に向け増税ノーの世論と運動を広げることが大切です。(関連記事)
あいつぐ増税論
菅直人財務相は4日、参院決算委員会で「今年、(ムダ削減を)やれるところまでやった上で(略)しっかりとした案を掲げる」と述べ、14日には、3月にも消費税増税の議論を始める必要があることを示しました。
野田佳彦財務副大臣はNHK「日曜討論」(1月31日放送)で、自公政権時に所得税法に明記した消費税増税に向けた「付則」(注)は「生きている」と発言。仙谷由人行政刷新相は1月6日の講演で、「11年度予算はそこ(消費税を含む税制改革)に依拠しないと予算編成できない可能性がある」とさえ言っています。
自民も後押し
消費税増税の大合唱は民主党だけではありません。自民党の谷垣禎一総裁は1日、衆院本会議の代表質問で消費税増税を与野党で協議するための「社会保障円卓会議」を提案。社会保障のためと言いながら、さらなる庶民増税を押し付けようとしています。
生活費にも課税される消費税は、所得の低い層ほど思い負担を強いられます。また多くの中小業者は価格に消費税を転嫁できず、身銭を切って納税せざるを得ない状況に追い込まれています。消費税を払いきれずに滞納となる事態が急増し、不況に苦しむ中小業者からは「これ以上の増税されたら商売はやっていけない」との悲鳴が上がっています。
世界は庶民減税
世界同時不況により経済危機が深まる中、各国では、低所得者など庶民には減税し、その財源を富裕層増税に求め、景気回復をめざす動きが主流になっています(下図)。
EU(欧州連合)は08年11月、加盟国に付加価値税引き下げによる消費促進策を勧告。それを受けたイギリスは08年12月から昨年12月末まで、消費税(付加価値税)を17・5%から15%に引き下げました。小売業2万店を対象とした調査結果では、昨年11月の売り上げで増加が減少を上回り、減税効果により消費を押し上げました。さらに、今年4月から年収15万ポンド(約2200万円)以上の高額所得者の所得税率を40%から50%に引き上げます。
フランスは昨年7月から、レストランの消費税率を19・6%から5・5%へ減税。レストラン業界は減税と引き換えに、2年間で4万人の新たな雇用をつくることを約束しています。
北欧のフィンランドは昨年10月、食料品にかかる消費税率を5%引き下げ、12%に。ドイツは昨年11月、ホテルなど宿泊施設利用の消費税を19%から7%へ引き下げることを約束し、子ども1人当たりの扶養控除額拡大も決めました。
オバマ米大統領は1月25日、年収11万5000ドル(約1000万円)以下の子育て世帯を対象とした減税策など中間所得者層の支援強化策を提案。国民皆保険の導入もめざしており、財源として120兆円の富裕層増税を行う税制改革案を発表しています。
日本は大企業優遇
一方で日本は、法人税の基本税率引き下げや証券優遇税制などで大企業優遇を続けています。大企業への法人税の税率(現行30%)を90年度と同水準の37・5%に戻せば、国・地方合わせて約4兆円の財源が生まれます。
日本では、株の配当にかかる税率は10%(譲渡益同じ)。アメリカ15%(これに州・地方政府税がかかる、譲渡益同じ)、イギリス32・5%(譲渡益18%)、フランス30・1%(譲渡益同じ)と比べても優遇されています。アメリカもオバマ政権が、11年から5%分増税することを提案。イギリスも10年から10%増税(配当)するなど、証券優遇税制を見直すことも世界の流れになっています。
納税者番号制も
消費税増税を狙う民主党は、消費税の逆進性を認めています。その問題の解消と扶養控除をはじめとする所得控除を廃止・縮小する代わりに、給付付き税額控除で庶民に税金を還付することを考えています。
しかし、これと一体に国民一人ひとりを管理する「納税者番号制」や税と保険料を一体徴収する「歳入庁」創設などを狙っています。何よりこれらの税制の根本には、憲法の原則が抜け落ちていることが問題です。全商連は鳩山税制「改正」に反対する運動を広げ、政党では日本共産党が消費税増税に反対する国民的共闘を呼びかけています。
(注)消費税増税に向けた「付則」…昨年3月に改定された所得税法の104条で「消費税を含む税制の抜本的改革を行うため平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずる」と明記されています。
81億円減税の財界人
『プレジデント』誌(07年12月3日号)の自社株配当長者ランキングによれば、1年間に山内溥氏(任天堂相談役)は98億円、柳井正氏(ファーストリテイリング会長)は63億円の配当があるといいます。
仮に山内溥氏の配当益98億円を74年当時の総合課税で計算すると所得税・住民税は91億円(98億円×93%。実際には超過累進税率の適用となるので若干下がります)となります。
それが現行証券税制の下では9億8000万円(配当額の10%)ですから81億3400万円の減税となっています。(浦野広明・立正大学教授試算)
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