中小業者支援で内需拡大を=全中連が省庁交渉
1.28中小業者決起大会(東京・日比谷)に先立って行われた経済産業省・中小企業庁、金融庁、国土交通省、厚生労働省、総務省、財務省、国税庁との交渉、信用保証協会との懇談には100人以上が参加。地元選出の国会議員とも懇談し、中小業者の実態や人権を無視した税金、国保料(税)の徴収問題などを告発するとともに消費税増税や国税通則法の改悪をやめ、住宅リフォーム助成制度の創設、緊急保証の延長などを要望しました。
中企庁
緊急保証の継続を表明
景気対応緊急保証の継続などを求めた経産省・中企庁交渉
経済産業省・中小企業庁では、(1)3月末に期限切れとなる景気対応緊急保証の延長(2)下請けいじめなど不公正取引を禁止する法律改正とその厳格な運用(3)中小企業憲章に基づく小企業支援の具体化-などについて要望しました。
景気対応緊急保証の延長について、中企庁金融課は「4月以降も半年間、業種を限定したうえで全額保証を継続する」と回答。事実上、全額保証を継続させることを明らかにしました。
参加者は金融円滑化法が延長されるにもかかわらず、貸し渋りが横行していることを告発。政策公庫に創業資金10万円を申し込んだものの「高齢」などを理由に断られた神奈川県の参加者は「私の生きがいは商売を続けること。年齢が問題といわれたくない。政策公庫法の精神に基づいた融資を」と要求。東京都の参加者も「政策公庫から融資を断られたが、理由さえ示されない」と怒りをぶつけました。中企庁は「理由を説明させます」と明言しました。
また、マル経(政府の無担保無保証人融資)利用にあたって、商工会議所への加入が条件とされている実態が指摘され、中企庁は「商工会議所に加入しなくても受けられる制度なので加入強制があればおかしい」と答えました。
下請け同士の代金未払い問題などに対する「ガイドライン」(優越的地位の乱用に関する独占禁止法の考え方)の適用については「公正取引委員会と連携を図っていきたい」と答えるにとどまり、中小企業憲章に基づく新しい施策展開がないことも明らかになりました。
金融庁
金融円滑化 相談は個別に応じる
金融庁では、緊急保証制度の延長を求めるとともに金融円滑化法の延長にかかわって、金融機関が中小企業者に必要な資金を貸し出し、条件変更などにも積極的に応じるように指導することなどを要望しました。
この間の中小企業者向け貸付の条件変更実行率が97・3%という実績の上に立ち、金融円滑化法を1年間延長すると回答しました。
しかし、金融機関の報告義務は大幅に簡素化され、中小企業者への経営指導・コンサルティング機能の発揮を求めるという趣旨が強調されていることから、参加者は「金融機関への指導が緩むのではないか。円滑化法の精神は引き継がれるのか」と追及。金融庁は「具体的な事案で相談してもらえば、個別に対応します」と明言しました。
また、交渉では円滑化法延長に伴う金融機関の監督指針の改定が行われており、金融検査マニュアル「金融円滑化編」とともに、恒常的指針となるとの方向性が示されました。
中小企業者の代表を金融審議会に登用せよとの要望については、「今後の検討材料にする」と答えました。
国税庁
納税者の実情に配慮
国税庁では、滞納整理にあたり、個々の事情をよく把握し、納付意思のある納税者には納税緩和措置を適正に行使することを要求。「納税者の実情を把握し、事業継続・生活維持できるよう考慮し、法令等に基づき適正に処理するよう指導する」と回答しました。
参加者からは「調査もなく、いきなり差し押さえ処分をされた」「税務署は相談に乗るところではないと一蹴され、自殺も考えた」と、深刻な実態にさらなる指導・改善を要望しました。
また、強権的な税務調査が多発していることに対し、納税者の権利を守るよう要求。
「子ども部屋や寝室まで調べられ、店の引き出しを勝手に開けられた」「本人が重傷で入院中なのに、居間にあがりこみ、財布まで調べられた」「休日の早朝に突然調査され、家族がパニック障害になった」と、任意調査を逸脱し、人権を無視した事例や、ウソまでついて修正申告を強要しようとした事例を告発・抗議。国税庁は、「関係部署に伝える」と約束しました。
交渉には、日本共産党の佐々木憲昭衆議院議員が同席しました。
国交省
公共工事 可能なかぎり地域業者に
住宅リフォーム助成制度の創設や住宅金融支援機構が住宅ローンの金利引き下げに応じることなどを要望した国土交通省との交渉
国土交通省では、住宅リフォーム助成制度の創設や公共工事の分離・分割発注、大工など技能者の後継者育成、「公契約法」の早期制定などを要望。公共工事について「可能な限り分離・分割発注し、地域の建設業者に仕事が回るようにしたい」と回答しました。下請け業者の報酬について「ダンピング防止、元請け、下請け関係の適正化を図り、労働者にしわ寄せをしないように対策を講じる。昨年9月から検討会を立ち上げている」と答えました。
また、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が住宅ローンの金利引き下げなどに応じない問題を取り上げ、「住宅金融公庫から28年前に7・2%の金利で860万円を借り入れ、これまで1700万円を支払ったが、5・5%以下の金利引き下げに応じない」(東京)、「阪神大震災後、住宅金融公庫から4億円を借り入れ、賃貸住宅を取得した。家賃や敷金、礼金、権利金、更新料が制約されている上に、不況の影響で経営が悪化。支援機構に返済条件の変更を申し出たが、応じようとしない」(兵庫県)など実態を訴えました。
また、東京・JR赤羽駅構内のショッピングモール計画について、地元との合意が得られるような計画に見直すようにJR東日本を指導することを求めました。
総務省
地方税徴収 個々の事情を踏まえて対応
総務省には地方税徴収行政や、固定資産税の軽減、地上デジタル放送への対応について要請しました。
地方税徴収について、差押禁止財産になっている年金などが預金に振り込まれた途端、差し押さえをしている問題を訴え。「最高裁判例もあり違法ではないが、個々の事情を踏まえた対応が望ましい」との認識を示しました。
地上アナログ放送停波では、旅館業者に対して、低利の融資制度があることを知らせるとともに、生活保護世帯に加えて1月24日から住民税非課税世帯にもチューナーの無料支給を始めたことを明らかにしました。
参加者は「県滞納整理機構が“執行停止相当”と意見を付けて市に戻したにもかかわらず、金庫を壊し、タンスの中まで調べる捜索を行っている」事例などを示し、強権的な徴収をやめるよう求めました。
厚労省
工事業国保 納税猶予の運用検討中
厚生労働省では、国民健康保険(国保)や社会保険、生活福祉資金、全国建設工事業国保(工事業国保)の問題で要請しました。
国保の保険料徴収については「払えない事情を聞き、減免など現実的納付相談を個々に行う」と回答。工事業国保加入事業所を協会けんぽ(旧政管健保)に加入させる際に、さかのぼって2年間の保険料を徴収している問題については、「社会保険料の納税猶予は日本年金機構に権限がなく、国で運用方法を検討中。対策本部に相談してほしい」と答えました。「工事業国保の強制資格停止で1万人以上が医療難民になる恐れがある。また2700万円もの保険料請求が来ている例もあり払いきれない。延滞金は求めず、納付の猶予申請も受理するよう指導を」(北海道)と迫りました。
「医療機関1万カ所の実態調査で4割が受診中断を経験。医療費の窓口負担の引き下げを」(保団連)、「家族14人で70万円の国保税を負担。生活保護基準以下の所得だが、低所得でないと保険料が軽減されない」(千葉)など、実情を訴え改善を求めました。
生活福祉資金では、「申請を出したが、何度も保留になり現在返答がない。早急な対応を」(茨城)、「相談に行ったら生活保護をと言われ、受け付けはされたものの不承認。理由を開示してほしい」(香川)など、運用の問題点を指摘しました。
保証協
中小企業の援助方法考えたい
全国信用保証協会連合会との懇談では、緊急保証の保証承諾状況や金融円滑化法への対応、今後の見通しなどについて、見解を求めました。
緊急保証の承諾累計額は24兆5000億円に上り、代位弁済は3600億円と「安定化保証」(06年・承諾累計24兆6000億円)の代位弁済額4700億円を下回っていることを明らかにしました。
金融円滑化法の延長については「中小企業を支える意味であり好ましい」と回答。零細企業への公的保証を行う協会の設立趣旨に沿った対応を求めると「そのように考えている」と答えました。
また、中小企業経営へのコンサルタント機能を果たすよう要望。「ただ保証するだけでなく、どういう援助ができるか考えたい」と答えました。
個別問題では、自己破産で免責になった業者の保証申請に対し、「過去の免責分を返済しなければ審査しない」としている広島県信用保証協会の対応について改善を要望。「免責分に求償権はない。確認したい」と回答がありました。
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