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全中連が7省庁と交渉
業者の実態ぶつける |
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全国中小業者団体連絡会(全中連)は10月29日、07年度幹事会を開き、7省庁と交渉しました。消費税増税や後期高齢者医療制度、原材料高騰、大型店出店などの問題を取り上げ、中小企業政策の改善・充実を迫り、国土交通省では混乱を招いている建築確認申請について要望。同省は30日、建築確認審査の緩和を図る同法施行規則を改正する方針を発表しました。
国交省
建築確認の早期改善を
実態受け審査の緩和を発表
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建築基準確認の問題を取り上げた国土交通省との交渉 |
国土交通省では6月20日に施行された「改正」建築確認基準法の問題を取り上げました。提出書類が増え、建築確認が下りるまでに時間がかかるなど建築確認の現場で混乱が生じていることを指摘。
こうした実態を受け、同省は翌日、審査を緩和するため、同法施行規則の一部改正を発表しました。(1)着工後、間仕切りや開口部の変更があっても構造安全性や防火、避難性能が低下することのないものについては「軽微な変更」として扱い、計画変更の確認申請を不要とする(2)建築確認を申請するときに構造方法や材料などの大臣認定書の写しは審査機関が認定内容を確認できる書類がない場合に限って提出を求める‐‐というものです。
交渉では「改正内容を周知するための講習会が有料で開かれている」実態をただすと、「日本建築構造技術者協会(ジャスカ)などとも協力して少人数の無料講習会の開催をお願いしている」と答えました。
「4号建築物」(2階建て以下、延べ面積500平方メートル以下の木造建築物)については、建築士が設計すれば建築主事の構造審査を必要としない特例措置の廃止をやめるように強く要望。
耐震改修の推進については、来年度予算で地域要件の緩和を検討しているなどを回答しました。
経産省
原材料高騰で追求
下請2法に基づき通達出す
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原材料高の実態を訴え、「早急な対策を」と訴える代表(経産省) |
経済産業省では原材料高騰問題で追及。大阪商工団体連合会(大商連)が実施した影響アンケート結果(「収支に大きく圧迫」41・4%)を示し、「10月から1割上がった」(建築塗装)、「ここ2年半で4倍。お客に値上げは絶対飲めないといわれ、苦しい。原油が投機対象にされているのが問題」(合成樹脂フィルム加工)と、早急な対策を求めました。
省側は「価格高騰は由々しき事態」と答え、価格転嫁できないとの調査結果を踏まえ、下請2法に基づき通達を出し、買いたたきなどについても親事業者などに文書を発したこと、8月7日付けで特別窓口を拡充し、政府系金融機関でセーフティーネット貸付の対象を原材料まで拡充したと回答しました。
また、取引の適正化については、「本来下請けに入るものが入っていない。なんとかしなくてはならないと考えている」と答え、予算要求中の「下請取引相談センター」について、「駆け込み寺のように考えており、解決まで持っていきたい」と回答。
中心市街地の活性化では、「地域が主役であり、自主性を尊重し、後押ししたい」と答えました。
国税局
納税の猶予認めよ
「収支内訳書なしでも還付」
国税局交渉では、納税の猶予申請を認め、預金・給与・売掛金などの生存権的財産の差し押さえをやめよの申し入れに対して、国税庁長官官房総務課調整室の向川茂弘課長補佐が「法令に照らし、個々の実情を十分に把握して対応していく」と回答しました。
埼玉・本庄民商の代表は「本庄税務署が水道料金が払えるなら税金も払え」と生存権を否定し、納税者も妻も重い病気であることを知りながら納税の猶予を却下した事例に抗議。
交渉団は国税庁の「納税の猶予等の取扱要領」を示し、要件である「生活の維持又は事業の継続の著しい支障」には、生活費や仕入れ代金などが含まれるのではないかと追及。向川氏の「常識的には入る」との回答に「ではなぜこのような問題が起きるのか。『生活の維持又は事業の継続の著しい支障』の具体的な内容は何か」と迫ると返答できず、「後日回答する」と約束しました。
福岡市の助産院経営者は「リョーチョー方式の税務調査で、患者も反面調査された。国家賠償訴訟も検討している」など、違法事例を告発。
千葉・松戸税務署が「収支内訳書がないと消費税は還付しない」としている件で、向川氏は「対応は誤りであり、研修などで改めて周知します」と回答しました。
財務省
不公平税制是正を
証券優遇 来年度廃止も
財務省交渉では、消費税の税率を引き上げないことや、免税点を3000万円に戻すこと、大企業・大金持ち優遇の不公平税制の是正などを求めました。
省側は「消費税を含む税制の抜本改革をおこなうべく議論を始めている」「益税批判があり免税点を引き下げた。引き上げる状況にない」などと回答。
参加者は、消費税分の値引きを迫られる実態を示し、「売り上げ1000万円程度の中小業者が消費税を払えると思うか」と再三にわたって追及。さらに「消費税は預かり金ではない」とただすと、財務省として「預かり金的といっている」と認めました。
一方、不公平税制の是正については、「国際競争力強化のため法人税率の引き上げはしない」「所得税の最高税率は勤労意欲を削がないよう引き下げた」との回答に終始しました。
ただし、大金持ち優遇の証券優遇税制は「来年度の廃止に向けて検討したい」と回答。また、「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度」の廃止要求については「意見を踏まえて検討したい」と述べました。
厚労省
国保滞納者にも権利
特定健診で「保証」を明言
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高すぎる国保料など地域の実情を訴え社会保障制度の充実を求めました(厚生労働省) |
厚生労働省では、国民健康保険(国保)や年金、後期高齢者医療制度など社会保障の充実を求めました。
自治体がおこなう従来の健診に変わり、来年4月に実施される特定健診の問題で、「すべての人に健診を保証せよ」との求めに、担当者は「国保料(税)の滞納者であっても健診を受ける権利を妨げることはない」と明言しました。
国保課担当者の「国保は相互扶助」との回答に、参加者からは「国保法には社会保障制度と書いてある。法律に基づいて行政をおこなうべき」と抗議の声が上がりました。
75歳以上の医療を受ける権利を奪いかねない後期高齢者医療制度について、中止・撤回と合わせ「老人保健法で資格証明書発行を認めていない。ぜひ従来どおり発行から除外してほしい」と要望しました。
交渉には日本共産党の高橋千鶴子衆院議員も同席しました。
金融庁
融資推進を要望
その立場で対応約束
金融庁交渉では、中小企業金融の円滑化と高金利被害救済策の拡充を求めました。責任共有制度の問題では、「中小企業金融を円滑にすすめる信用補完制度の趣旨を生かし、金融機関がその立場で対応するという認識でよいか」との問いに、庁側は「その通り」と回答。
中小業者の実情に配慮しない金融機関の強引な回収、債権譲渡が横行している実態については、「金融サービス利用者相談室に電話、ファクスでありのまま伝えてほしい。担当部局に送達し、法令違反には適切に対処したい。積極的に事案をヒアリングで確認したい」と答えました。
さらに「改正」貸金業法の内容や多重債務の相談窓口などの周知徹底ついては、「あらゆるチャンネルを使っていきたい。直接、自治体には関与しないが、12月10日から1週間、多重債務相談ウイークにとりくむ(無料)」と述べました。
総務省
徴収強化改善訴え
「実状を尊重する」
総務省では、納税者の権利を無視した住民税の徴収の強化の改善を要望。実際に被害を受けた参加者の切実な訴えに、「納税者の実状を尊重して対応し、行き過ぎのないようにする」と前向きに回答。徴収担当者の教育については、「『自治学校』などを通じ研修を図っていく」と述べました。
また、住民税の増税に伴った還付について「07年度に所得が減って所得税が課せられなくなった人は、08年7月1日から31日までの間に申告をすることによって住民税の還付が受けられるが、この時期に申告ができなかった実状があれば、その後でも申告は受付、還付する」と回答しました。さらに、周知徹底を図るために、リーフを発行し、各自治体にも対応するようにしていくと答えました。
中小業者決起大会 来年2月8日開催
全中連が幹事会
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各地の活動などを報告し合った全中連の幹事会であいさつする国分稔代表幹事 |
幹事会では国分稔代表幹事が主催者あいさつし、岡崎民人全中連事務局長が議案を提案。経営や金融、社会保障など各分野で運動を前進させ、幅広い業界との交流が広がっていることなどを報告しました。
討論では保団連の住江憲勇会長が「医療をはじめ社会保障が崩壊している実態を告発しつつ、解決をめざすとりくみをすすめている。後期高齢者医療制度の導入を中止・撤回させる世論と運動をさらに強める」と発言。
各地の活動報告では、「中越沖地震からの地域再生にとって中小業者の再生が決定的。放射能漏れが心配され、風評被害が広がっている。国の対策として中小業者を支援する制度を」(新潟)、「地方自治体に住民負担増を求める集中改革プランが押しつけられる中で自治体対策交流集会を開いた。今後、自治体との交渉をどうすすめるか考える機会になった」(埼玉)、「責任共有制度への不安の声が聞かれる中で金融機関からの借り入れを断られた老舗を民商と商工会議所、県が一緒になって支援するとりくみも生まれ、民商に行けばなんとかなるの声が広がっている」(石川)など出されました。
こうした運動をさらに前進させるため、全中連主催の中小業者決起大会を来年2月8日に開くことを確認しました。 |
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