社会保険への加入強要 誤った建設現場排除の是正急げ
強まる社会保険の加入指導や重すぎる保険料、売掛金まで差し押さえる厳しい徴収が、小規模事業者の経営を脅かしています。
建設業界では、加入義務のない事業者に対して、「社会保険に加入しなければ、4月から現場には入れない」「一人親方の大工10人が、そのうちの一人を代表にして社会保険に加入させられた」など、元請けの誤った「指導」が混乱と新たな負担増を招いています。
その原因となっているのが、国土交通省が2012年に策定した「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」です。「平成29年度以降においては、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請け企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱とすべき」と明記し、元請け業者に指導の徹底を求めているのです。
一方で国交省は、ガイドラインに沿っていたとしても、元請け業者による指導に法的権限がないと認めました。法律で規定されていない民間事業者の「指導」によって、加入義務のない事業者が現場から排除されることは許されません。
また、未加入であっても現場入場が認められる「特段の理由」として、(1)作業員が現場入場時点で60歳以上であり、厚生年金保険に未加入の場合(2)作業員が特殊な技能を有しており、入場を認めなければ施工が困難となる場合(3)社会保険への加入手続き中など、今後確実に加入が見込まれる場合-を例示しています。この規準に当てはまると元請けが判断すれば、社会保険未加入でも現場入場が認められます。
元請けが社会保険加入に必要な法定福利費の上乗せ要求を一方的に拒否した場合、建設業法第19条の3が禁止する優越的地位の乱用に該当する可能性があります。
こうした規定を広く知らせることが重要です。
中小業者の社会保険料負担を軽減するなど、制度の改善とともに、4月以降、不当な現場排除が行われないよう、国交省地方整備局や自治体の担当課、建設業界団体による指導の強化を急ぐべきです。
全国商工新聞(2017年3月27日付) |